Twitterから学ぶアプリ設計・運用のススメ
作り方ではなく進め方が知りたい
スマートフォンをはじめとしたモバイル機器向けのアプリ設計・開発がはじまって数年。検索をすれば世界中の開発者、デザイナーの知見をたくさん見つけることができますが、「実際どうやって進めるの?」という部分が見えにくいことがあります。仕様書や Tips を読むだけでは分からない、プロセス特有の課題をどのように取り組めばいいのでしょうか。そんなとき、Twitter が公開している Mobile App Playbook: Lessons Learned が参考になります。
Twitter アプリはもちろん、Cannonball や Furni のような社内プロジェクトを通して学んだこと10 項目が紹介されています。開発で躓いたこと、課題に挙がったこと、解決につながったことが経験に基づいて書かれているので説得力があります。ステップバイステップのハウツー情報が欲しいという方には向いていませんが、課題を洗い出して次へ進むためのヒントが欲しいという方には一読の価値があります。
設計から公開後の運用まで網羅的に書かれていますが、主に開発者向けの内容になっています。しかし、デザイナーやプロダクトマネージャーも学べることが多々あるはずです。 Playbook を一通り読んで、デザイナーにも関わる内容を改めて 4 つに構成し直してみました。
早く見せて直せるツールを選ぶ
文字だけでイメージを共有することはできません。複雑な画面遷移と操作があるアプリでは、文章だけの共有は誤解を生むことになります。そこで早い段階から絵で表現することで、チーム全体で同じイメージを共有するようにします。
Playbook ではホワイトボードを勧めていますが、早く描けるもの、必要であれば即時に修正できるものであれば別ツールでも良いと思います。アイデアをデザイナーが持ち帰って後で見せるのでなく、デザインプロセスを見せていくことが重要です。
少しでも早く実機で操作する
グラフィックツールで綺麗な『絵』をつくっても、実際そのような見た目になるとは限りません。また、InVision のようなツールを使えば操作感を手軽に再現できますが、ネイティブアプリでの使い心地とはまったく違うものです。
画面ひとつひとつのデザインではなく、操作によってどのように画面が動いていくのかまでデザインしていかなければいけません。見た目が多少悪くても、可能な限りネイティブ環境でテスト。それができなくても、実機で動く何かが早急に必要になるでしょう。キーアクション(主要操作、目的までの繊維)に絞れば、少しでも早く共有できるはずです。
まずは『当たり前』を選ぶ
万人にとって使い易いアプリをデザインすることは難しいです。しかし、使う人の文脈に合わせて最適化することはできます。そもそもアプリを使って何を達成したいのかという使う目的を明らかにし、どのようにすれば摩擦を抑えて達成してもらえるかを考えなければいけません。
使う目的という文脈だけではなく、どのデバイスを使っているのかも文脈のひとつとして捉えることができます。例えば、Android デバイスを持っている人であれば、『Android らしい使い勝手』を期待しますし、Android アプリに見慣れない iOS のような動作があれば違和感(使いにくい)を感じるでしょう。まったく新しいアイデアを盛り込む前に、Android であれば Material Design、iOS であれば ヒューマンインタフェイスガイドラインを熟読して、それぞれの『当たり前』を学んでおきましょう。
データと上手に付き合ってデザイン
平日はほぼ毎日 Analytics のデータを眺めていますが、見ているだけでは意味ないと言うとそんなことはありません。日々数字を見ていると、傾向がなんとなく浮かび上がってくるので、ちょっとした変化に気付きやすくなります。 Playbook でも数分で良いので、MAU、DAU、クラッシュフリー率に目を向けることを勧めています。
数値の分析・調査はデザイナーの仕事ではないかもしれませんが、数字を常に意識することでデザインへのアプローチが大きく変わります。数値も重要なユーザーフィードバックのなので、そこから人の姿や行動を描くことで課題がより明確になることがあります。答えはきっとデータをクリエイティブの間にあります。
まとめ
他の資料に比べて Mobile App Playbook: Lessons Learned の興味深いのは、設計・開発をしている方に向けた内容ではあるものの、プロダクトの運用まで扱っている点です。運用後のアプリ利用者のデータ解析はもちろん、マーケティングや広告についても触れています。どのように広告を見せていくのかといったビジネスに関係したところは開発者も知っておきたい重要な課題です。
デザイナーも「自分の仕事領域はココ」と線を引いていられない状態です。アプリ開発プロセスという全体像を見た上で、要所要所で自分の力を発揮するためのアウトプットが必要になります。どういった課題があって、何がデザイナーに求められているのかを知る上で、良い参考資料になるはずです。