誰でも価値観をもっていると思います。
デザイナーも何か自分なりの価値をもちながら仕事をしています。ここでいう『価値観』とはデザイナーがもつ独自の美的センスや技能力を示しているのではなく、彼(彼女)がどのような姿勢で仕事をしているかという意味を指しています。

しかし、自分の価値を仕事に反映させることは、簡単そうでとても難ことがあります。
お金のこと、同僚のこと、上司のこと、クライアントとのやりとりの結果、自分の価値とは合わない出来事があるかもしれません。自分の価値を曲げて仕事をしなければならないと感じることもあるでしょう。また、そこまですることが『仕事』と感じる方もいるかもしれません。

実のところ、自分の価値観をもちつづけることは、何よりも大事なことです。価値を失うということは、仕事においてあなたしか提供できない価値をつくりあげる能力を失うことに等しいことです。給料や報酬は、あなたが作ったモノという結果だけではなく、あなたの価値に対して支払われています。つまり、あなたが価値観を失うということは、モノを作る機械と競争しているのと変わらなくなるわけです。いずれあなたへわざわざ依頼する必要もなくなっていきます。

価値観に対して誠実であるべきです。
「いつもこうだけど、今回は特別だから変えても良い」といって、自分の価値を都合の良いように変えるわけにはいきません。もちろん、価値観というのは時代によって少しずつ変化/進化するものなので普遍的な法律のように見立てる必要はありません。時代と共に変化しようとも、変わらない芯のようなものが地続きとして連なっている場合が多いです。突き通っている芯に対して誠実であるかどうかが重要になってきます。自己矛盾は避けよう・・・ということですね。

では、その貫くべき価値観とは何でしょうか。
もちろん人それぞれ異なりますし、「善 vs. 悪」という対立になるような物事を指しているわけでもありません。デザインにもあるマニフェストのように、社会性を訴えるのもひとつの価値ですし、理想を視覚化していくことが価値と考える人もいるでしょう。社会、日本、世界にとって正しいことを実践しようと考えるのではなく、自分がデザイナーとしてどのような価値を提供することが可能なのか?という部分に注目することで自分の価値観が少しずつ見えてくるでしょう。それが仕事の動機にもなるだけでなく、自分が仕事を選ぶときの基準にもなります。

フリーランスをしていると、次の仕事が来ないかもしれないという不安が常にあるので、価値観を隅に追いやって仕事をしなければならないのでは?と考えるかもしれません。実際のところ、自分の価値観を失わない限り、仕事がまったく来なくなるということはありません。価値を失って値札だけになってしまうことのほうが一時期仕事が来ないことよりずっと恐ろしいことです。

自分の価値観は頑固に突き通すエゴというより、迷ったときに立ち返るひとつの場所と捉えるべきでしょう。価値観をもつことは大事なことではありますが、落とし穴も幾つかあります。

  • 自分の期待と結果が異なるリスクを避けるために、こと細かくあなたの価値に合うかどうかを見極めている場合
  • 自分には厳格な価値とプライオリティがあると信じてはいるものの、行動はまったく違う考えに基づいている場合

自分の価値観を仕事に反映させ続けることがひとつの目的ですが、あなたの価値をひとりでも多くの方に知ってもらう必要があります。自分がつくった作品が価値を伝えている・・・と考えることが出来ますが、作品に秘められている価値は抽象的で捉え難い場合があります。また、作品は長いプロセスの中で生まれたひとつの結果であり、デザインの価値はそのプロセスに多く存在することがあります。つまり、自分の価値観を伝えるには作品以外の方法が適しています。

例えば、文章にしてまとめるのは最も手軽な方法です。人によっては会話を通して表現することに長けているかもしれません。どのような形でも良いので、自分の価値を視覚化 / 言語化する方法を見つけてください。幸い、今の Web には様々な表現方法に応えるプラットフォームが数多く用意されています。価値観を伝えることで、自分に共鳴してくれる人・企業を見つけ出すことが出来ますし、次の仕事でより高い価値を提供できるようになるでしょう。

キャリアのことを考えると、どうしてもスキルセットや職種に注目してしまいがちです。スキルは後からでも学ぶことができます(ほとんどは仕事しながら覚えていくものです)。しかし価値観を見つけ出すことは、書籍やブログ記事を読めば出てくるわけではありません。価値観とはあなたの心の奥底に既にあるものですが、それを分かる形に組み立てるには時間が必要です。スキルの前に焦らずあなたの価値観を作り上げてほしいですし、それを曲げない誠実さが仕事において重要になるはずです。

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