コンテンツ視点で考えるレスポンシブ戦略

SEOならレスポンシブに

PC版の Facebook でオススメのリンクをみたら、モバイル版だった。
スマホで Twitter を見ていたら、PC版のサイトに誘導されて操作が面倒だった。

モバイルサイトのアドレスに注目すると、「m」「mobile」「i」など、のサブドメインが最初に付いている場合があります。これは、PC版の『本家』Webサイトとは別のバージョンを表示していることを意味しています。スマホやタブレットなど、デバイスに応じて最適化されたサイトを表示しています。

利用者のために最適な環境を提供するという意味では、専用サイトは適した対策です。しかし、SEOの視点で見ると専用サイトを作って、URLを細分化してしまうのは良くない傾向です。モバイルユーザーであれば、モバイルで見たサイトをそのまま共有するでしょうし、デスクトップユーザーにしても同様です。10のリンクが付いたかのように見えても URL を見ると 2 つ 3 つに分散しています。

URL をひとつにして、サーバー側で変換するという方法もありますが、サイト全体にかかる負荷を無視するいことは出来ません。デザインの決断を SEO だけで決めるわけにはいきませんが、より多くの方にシームレスな Web 体験を提供するには URL を統一したいですし、レスポンシブ Web デザインは採用に値するでしょう。

スマホ版Yahoo Japan中間案として、特定なデバイスに特化しないなど、極度な最適化を行わないのも手段。

いきなり専用サイトを排除しなくても、徐々にレスポンシブな対応をするのも手段です。例えば Yahoo! Japan は、今まで Android 用と iPhone 用を別々に用意していましたが、スマートフォン向けとして統一しています。iPhone に特化していた頃は iOS アプリのような多彩な動きはしていたのに対して、現行サイトはシンプルな作りになっています。ビジュアルの物足りなさを感じる方もいるかもしれませんが、ひとつのサイトでより多くのデバイス/ユーザーに対応しているという意味では、現行サイトは大きな改善です。レスポンシブ Web デザインではないですが、より多くのデバイスに対応しているレスポンシブなアプローチです。

ひとつの URL で必要なコンテンツへアクセス出来る・・・ユニバーサルなアクセスを可能にするアプローチとしてレスポンシブ Web デザインは有効な手段です。

コンテンツの最適化

レスポンシブ Web デザインを採用するかしないかのひとつの基準として、どのようなコンテンツを提供するかで決まります。インタラクティブ性が高い製品のデモを小さなスクリーンで操作するのは難しいですし、ハードウェアに高いパフォーマンスと帯域を要求するものであれば、別々のサイトを構築したほうが良いでしょう。

ファイルサイズが大きいから別々のサイトを作るしかない・・・というわけではありません。例えば、Infinite Scrollのような UI を採用することで、一度に読み込ませるファイル容量を減らすことは可能です。最初に低画質の画像を読み込ませて、利用者が画像を拡大したときに高画質のものを読み込ませるのも手段です(大きなスクリーンサイズでは最初から高画質の画像を読ませることもできます)。

こうした技術の側面から検討した最適化だけでなく、コンテンツそのものに注目することで可能な最適化もあります。どのデバイスからでもアクセス出来なくてはならないコアコンテンツとは?コンテンツの種類は?表現の手法は?別の形式にしても目的を達成することができるのか?こうした疑問にひとつひとつ応えていくことで、その Web サイトで可能なレスポンシブデザインの領域が見えてくるでしょう。

レスポンシブ Web デザインを採用するかしないか関係なく、マルチスクリーンを意識した Web コンテンツ戦略には以下のような課題を話し合わなければ構築も難しくなるでしょう。

  • ユニバーサルにアクセスできるコンテンツはなにか
  • マウスやキーボード以外での操作でコンテンツにアクセスできるか
  • デバイスの制約を考慮したコンテンツの最適化
  • コンテンツの配信方法や表現の手法を再検討
  • 重要になる体験を洗い出し、そのコンテンツの最適化に注力

「レスポンシブ Web デザインをしよう」という目的で始めると、クライアントも制作者も不幸せな結果になります。Yahoo! Japan のような中間案も含めて、自分たちがもっているコンテンツをマルチデバイスに対応するにはどうしたら良いかを議論することで、よりスムーズに対応ができるようになるでしょう。

Yasuhisa Hasegawa

Yasuhisa Hasegawa

Web やアプリのデザインを専門しているデザイナー。現在は組織でより良いデザインができるようプロセスや仕組の改善に力を入れています。ブログやポッドキャストなどのコンテンツ配信や講師業もしています。