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考え方

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考え方

ベストプラクティスを実践しても成功しない理由

私たちはベストプラクティス好き セミナーの質疑応答で「ベストプラクティスは何か?」と聞かれることがあります。 文脈によって正しさや評価が変わることがあるデザインですから、成功率が高い手法が知りたくなる気持ちは理解できます。 Web 上でも人気になる情報には、必ずといって良いほど『定番』『10選』『抑えておきたい』といったフレーズを添えてベストプラクティスと呼べる手段が紹介されています。 有名企業が実践しているから。RT や Like がたくさんあって人気だからという理由で「ベストプラクティスだから上手くいく」と考えがちです。模索・失敗を繰り返さなければ良いデザインは生まれないと語られるものの、「失敗したくない」「成功の近道を知りたい」と思ってしまうのが本心なのかもしれません。 1966年に「Hofling Hospital Experiment [https://www.simplypsychology.org/hofling-obedience.html] 」という社会実験が行われました。この実験は、私たちが簡単に権威や大多数に同調してしまうことを示しています。医師(実験

仕事

優しくいこうよ、どこまでも

ネガティブは伝染する 仕事現場にしても、業界にしても、今足りないのは「優しさ」じゃないかなと感じることがあります。 100% 間違ったことを言っている人はマレです。けど、5%、10% 違うというところを広げて相手を評価してしまうということがあります。自分がもっている物差しで測るしかないものの、サバ読み・軽率な判断になっていないでしょうか。それがネガティブなリアクションになることが多いですし、そのリアクションがさらにネガティブを引き起こすという危うい現象もあります。デザインという小さな分野しか見ていない私ですが、そういう傾向が見られます。 自分と違うことが「分かってもらえない」という対立姿勢になり、余計コミュニケーションがギクシャクすることもあります。少し優しくなれば状況が変わると分かっていても「どうせ無駄」「なぜ自分だけ」と思ってしまって踏み切れない。けど、実は皆そう考えているかもしれません。 「自分だけ」という視点が周りに優しくなれなくなる原因のひとつでしょうし、それが周りにも伝染している可能性があります。 見えにくいところを見ようとする デザインの仕事は様々な解決方

Webデザイン

Webデザインにおける『正直』とは

素材に正直であれ Webサイトの品質 [http://www.yasuhisa.com/could/article/what-is-website-quality/] には、高い技術と表現を盛り込むという『上を目指す品質』と、どのような状況でも必要最低限の見た目と操作性を保証する『地を固める品質』の 2 つがあると説明しました。しかし、これだけではなくデザインにおける普遍的な考え方も品質に大きく関わっています。 ドイツのインダストリアルデザイナー Dieter Rams(ディーター・ラムス) [http://bit.ly/2iY9meS] が提案する良いデザインの十ヶ条 [http://www.yasuhisa.com/could/article/braun-apple/]の中には、良いデザインは正直である という項目があります。製品を必要以上に大げさに見せるのではなく、ありのままを伝えること。素材や形状を生かし、機能を明確に伝えることをラムス氏は『正直』と捉えています。 Web デザインに限ったことではありませんが、素材に正直であることは良いデザインには欠かせないことです。こ

プロセス

プロセスなんて下手でも我流でも気にしない

デザインプロセスの儀式化 随分昔の話になりますが、茶道(表千家)をしばらく学んでいた頃があります。日本伝統をひとつでも知っておきたかったというのもありますし、茶道にある特有の礼儀に興味があったのが理由です。茶道は、使う道具はもちろん、たてかた、飲み方にも決まったルール・プロセスがあります。できあがった茶の味だけでなく、茶がたてられる過程も楽しむのが茶道の魅力であり奥深さです。 完成品だけでなく、過程を重んじるのは茶道だけの話ではありません。日本に昔からある芸道だけでなく、「寿司を食べる」といった食の世界にもあります。美味しく寿司をいただくには、決まった順序がありますし、正しいとされる礼儀もあります。プロセスというより、一種の『儀式』と呼ぶことができるでしょう。 過程(プロセス)を重んじ、儀式のように進めるという行為は日本文化だけでなく、他国でもあります。プロセスには言葉として表現するのが難しい魅力があるものの、無心で信じるのは良くありません。今日のデザインにおいて、どの環境、どのプロジェクトでも適応できる完全無欠のプロセスは存在しません。しかし、それでも私たちは確実性や安心を求

デザイン

ごめんなさい、すぐに結果は出せません

手法や道具にある幻想 手法や道具はやっかいな存在だなと思うことがあります。それを導入すれば組織の文化が変わって物事がうまくいくのではないかという期待が寄せられることがあるからです。ここ数年のデザインの世界では UX [http://www.yasuhisa.com/could/tag/ux/] に似たような期待をしてしまっているところがあります。この摑みどころがあるようでない UX を『導入する』ことで製品やサービスが改善されると考える方も少なくありません。 この記事の冒頭に掲載してあるイラストのような概念図を見たことがあると思います。インフォグラフィックと言い表しても良いような図でデザインプロセスが紹介されているのを見て、「なるほど、この通りにやれば良いのか」と感じる方もいるでしょう。そうした図を作って紹介しているデザイナーや組織は、実際そのとおりやっていると思います。しかしそれは単にプロセスを導入したというより、そうしたプロセスが動かせるような文化を作り出した結果だと考えています。 UX を導入するということ自体ありえないと 3 年前の講演で話したことがあります [ht

プロセス

評価と効果で見えなくなりがちなデザインの価値

先週末、大人向けワークショップ deCAFE [http://decafe.in] に参加してきました。昨年にも一度参加したことがあって、今回で 2 回目。今回はワークショップではなく過去を振り返りながらお喋りをする会でしたが、運営メンバーにイベントの意図や裏話を聞くことができて大変楽しかったです。 運営チームの方々は Web や IT 業界働くデザイナーがメインですが、ワークショップの内容はそこからかけ離れたテーマを扱っています。テーマの抽象度が高いことから、具体的に「◯◯を学んだ」とは言い表せないものの、他のイベントでは得ることができない何かを掴むことができます。 最近は数十分話すセミナーよりワークショップが多くなってきています [http://www.yasuhisa.com/could/article/behind-scene-workshop/] が、自分のワークショップにも何か取り入れるものがあるかもしれないという好奇心が参加のキッカケでした。前回と今回の参加を通して、漠然としていた deCAFE で得れた「何か」を鮮明にすることができました。それは、今 Web や

考え方

クリエイティビティとコピーについて

複製、変形、結合。 これらは生物の進化において欠かせない現象です。細胞分裂という原始的な活動だけでなく、私たちのクリエイティビティにもいえることです。活版印刷から World Wide Web まで、私たち人類が作り出してきたものは「複製、変形、結合」を繰り返した結果といえるでしょう。私たちが無から突然生まれたものではないのと同様、クリエイティビティも進化の過程のなかから生まれています。 2011年に「Everything is a Remix(すべてはリミックスである)」というドキュメンタリー映画が公開されました。音楽や映画の歴史を振り返りながらアイデアはリミックスされ続けていることを分かりやすく解説しています。また、知的財産権の課題や、人がもつアイデアを自分のものにしたい欲についても触れています。 このドキュメンタリー映画は、他人のアイデアを好き勝手にコピーしても構わないといっているわけではありません。しかし、極端な知的財産権の行使や、アイデアに対する過剰な所有欲が人のクリエイティビティに良くない影響を及ぼすだろうと指摘しています。 クリエイティビティという言葉に、ど

プロセス

データ中心になると忘れがちな直感の重要性

データだけでは答えは導き出せない チームで工程を進めていく上で、何か根拠のようなものが求められます。そこで、デザイン [http://www.yasuhisa.com/could/article/how-we-talk-about-design/]やコンテンツ [http://www.yasuhisa.com/could/article/creating-content-magic-sheet/] の定量・定性調査は欠かすことができません。「これは本当に使いやすいのか」「集客できるのか」「儲かるのか」といった様々な声に対して応えなければならない状況があります。 最近は解析ツールの発展や A/B テストのような模索がしやすくなったことで、データ収集の敷居が下がりました。そして、データを基に実践するための『プロセス』や『フレームワーク』も幾つかあります。しかし、周りが納得するための十分なデータと、確立した手法を用いてプロジェクトを進めれば成功が約束されるのかといえばそうではありません。 以前、ポッドキャストのリスナーから「UXデザインプロセスを実践しても失敗することはあるのか? [

仕事

制作者であれば書けたほうが良い理由と実践のコツ

経験をスキルとして活かす 何かメディアをはじめることで、ひとつのコンテンツを作ること、そして作り続けることの難しさを体感することができます。セルフブランディングに役立つのはもちろんですが、クライアントに提案する際にも自分でメディア運営しているかどうかで違いがあります。 読者はどのようなコンテンツを求めているのか、彼らがどのように読んでいるのかを意識するのようになりますし、的確な伝え方ができるような文章構造やデザインを意識できるようになります。また、制作者である私たちの手元から離れたあとのことを考えてデザインできるようになるのも、自ら様々な形状のコンテンツを出し続けることで考えられるようになります。 頭で分かっているだけで提案するのと、体感・経験をして提案するのでは内容も説得力も変わるはずです。 しかし「書こう!」と思ってもなかなか書けないことがあります。また、今はブログを立ち上げなくても様々なソーシャルメディアで簡単なリアクションが出せるようになりました。日々の生活模様を残すのであればブログである必要もありません。ブログの形状に拘ることはありませんが、自分の考えを文字にして書

仕事

営業から学べる、ニーズを聞き出すためのノウハウ

GitHub には早い時期から営業チームがいた [https://github.com/blog/1230-optimizing-sales-for-happiness] ことで知られています。開発者向けの製品やサービスであれば、良いものであれば口コミでどんどん広がるイメージがあります。GitHubもそういったサービスのひとつのように見えますが、より多くの方に使ってもらうために営業チームを作ったそうです。チームで使わないと GitHub のようなサービスは機能しません。また、有料サービス申し込みも PayPal で支払って準備完了!といった簡単作業ではありません。支払い権限をもっている方は GitHub を見たことも聞いたこともない方もいるはず。そういった場合、営業チームが出向いてお客様の特異なニーズを調査するそうです。 「営業」という言葉に良いイメージをもっていない方もいると思います。ハリウッド映画などで描かれている、売るためなら手段を選ばない営業像が先行しているのかもしれません。しかし、優秀な営業は製品やサービスの改善ための重要な役割を果たしています。彼らは顧客の要求、願望、

Webデザイン

15年前の記事が教えてくれるWebの本質

[http://www.yasuhisa.com/could/content/images/wordpress/2015/04/dao.png] 2000年4月7日「A Dao of Web Design [http://alistapart.com/article/dao]」という記事が A List Apart で公開されました(日本語訳 [http://all-web.org/ala/dao/])。今年は公開から 15 年経ったということで、Web 開発・設計の著名人がコメントを寄せた記念記事 [http://alistapart.com/blog/post/15-years-of-dao] も配信されています。道教の教えを基に Web デザインの本質を説いたこの記事は、

デザイン

デザインにおける公平とは

公平と平等はイコールの意味ではない ひとりでデザインするということは、そうはありません。クライアントだけでなく、様々な技能や背景をもった人たちと一緒にデザインを進めることになります。 作業をするのがデザイナーひとりだったとしても、彼等はデザインに対して意見を出してきます。新しい視点を学ぶ機会になるので意見を出し合うことは重要ですが、すべての意見を実践しようとすると、 らくだをデザインする [http://www.yasuhisa.com/could/article/we-just-made-a-camel/] ということになります。デザイン批評 [http://www.yasuhisa.com/could/article/design-talk-feedback/] をする機会がもてない場だと、デザインという行為が少しずつ本来するべきこととは離れたところへ進むことがあります。 誰かと一緒に考えて進める工程はデザイン批評だけに留まらず、プロダクト開発のすべてに言えることです。私は常に公平であること を意識して会話をするようにしています。『公平』という言葉を聞くと、誰もの意見に耳を

デザイン

Webのスーパーヒーローになる方法

撮影:飯田昌之 今年で Web は 25 歳 [http://www.webat25.org/]になりました。 Web は人類に大きな変化をもたらした革命的な技術です。誰でも情報発信ができるようになったのも、膨大な量の知識や考え方を共有できるのようになったのも、すべて Web があってこそです。そして、Web のもつ可能性をひとりでも多くの方に体感してもらうのが、私たちの仕事です。 これは、デザイナーはとてつもない力を持っていることを意味しています。人々を幸せにするのも、ストレスを与えるのもデザイナーの作り方で決まりますし、時には人の考え方を変えることもできます。この記事の題名にもなっている「スーパーヒーロー」とは、デザイナーひとりひとりを指しています。 とてつもない力を持っているからこそ、私たちは責任をもって力を使わなければいけません。また、クライアントやプロジェクトメンバーに向けて、その力をどのようにすれば正しく使えるのかを伝えなければいけません。 > 大いなる力には大いなる責任が伴う “With great power comes great responsibility

デザイン

重要視されるためのデザイナーの条件

内輪受けは止めにしようではないか LSD LAB で公開されている UIデザイナー不要説 [http://lambda-structure-design.jp/lab/is-ui-designer-really-needed/] は、テクノロジーと付き合うデザイナーであれば一読しておきたい記事のひとつです。私が記事を読んで感じた課題は、 UI デザインが重要視されているかどうかということではなく、果たしてデザイナーは デザインを営業できているか [http://www.yasuhisa.com/could/article/design-talk-feedback/]どうかというところです。 たとえビジネスゴールが共有されていたとしても、デザイナーが考える UI デザインの価値と、それ以外の方が考える UI デザインの価値が異なることがあります。特にデザイナーが考える価値は、内輪受けになりやすいことが多々あるように思えます。デザイナーが「すごく良いよね」「イケてるね」というものは、ほとんどの場合デザイナー以外には理解されません。内輪で分かりやすい言葉や感覚で語りかけても、聞き手は「

デザイン

疲れない情報収集と何を知るべきかを知るためのヒント

何を知るべきなのか分からない 昨年「情報だけでは価値がない時代の学びの姿 [http://www.yasuhisa.com/could/article/learning-in-network/] 」という記事で、流れの速い今の時代における学習との向き合い方について執筆しました。当時、変化し続けるプロセスに自ら身を投じることで学習しやすくなるのではと提案しました。 まずはアウトプットする、そして失敗を恐れず模索できる場を築くことで、体験しながら学習することができます。私の場合、このサイトやポッドキャスト [http://automagic.fm/] は良い実験場になっていますし、仕事にも役立っています。情報をインプットするためのコストが限りなくゼロになった現在。アウトプット(消化 )をすることで情報を知識/スキルに変えていかなければ身にならないどころか、膨大なインプット(情報)によって圧殺されてしまう恐れがあります。 インプットとアウトプットのバランスを保つのが難しい現在。鳥のように食い、象のように糞をしよう [http://www.yasuhisa.com/could/arti