今回から4回にわたって 2010 年のキーワードを事例と共に紹介します。まず最初は「Empower」です。エンパワーメントというカタカナ表現はよくマネージメントでも使われている表現。英和辞書でこの言葉を調べると「能力を高める」「権限を移譲する」といった少々堅苦しい言葉になりますが、言い換えれば「元気づける」「活躍の場を設ける」といった表現になります。

Webの魅力は幾つかありますが、そのなかに「共有」があります。YouTube は毎分 13 時間以上のビデオがアップロードされていますし、Flickr には既に 30 億枚もの画像がアップロードされています。それらをはじめとした Web コンテンツは猛烈な勢いで共有され多くの方がコンテンツを消費しています。私たちが何気に利用しているソフトウェアもオープンソースという共有・共働の原動力があるからです。たくさんのコンテンツが無料に存在し、いつでも何処でもそれを手にすることが出来るようになったのは Web 利用者の共有するという姿勢があるからといっても過言ではありません。

コカコーラが提供している ColaLifeは、物資を発展途上国に贈る活動を一般の方と一緒にやっており、活動内容も頻繁にレポートされています。

では、なぜ人々は共有するのでしょうか。無料でさくたんのコンテンツやサービスを提供する方もいますが、その理由はなぜでしょう。その理由のひとつとして「何かを贈る」という行為がひとつの社会ステータスとして確立されているからでしょう。Business Week が The 50 Most Generous Philanthropists という積極的に社会奉仕にお金をつかっている方をリストアップしています。こうしたランキングがビジネスサイトに普通に掲載されているのも、贈るという行為が社会位置やブランド価値に関係してくるからでしょう(ちなみに企業ランキングもあります)。YouTubeで高品質の映像作品を無料で公開したり、オープンソースウェアの開発のために多くの時間を費やすのも、ひとつの社会的地位の確立のためといえます。彼等は自分のクリエイティブを利用して社会を「Empower」しているといえます。

人々に知ってもらう、気付いてもらう、認めてもらうにはまず「贈る」という行為が今後欠かせません。

Take ばかりしていないか?

様々な情報が無料で手に入りやすい環境なので、様々な情報やサービスを食いつぶすだけの状態になりがちです。情報をインプットしたり、使えるものは徹底的に使い倒すことは良いことですが、それ以上に アウトプットが重要です。アウトプットするときに誰かに何かを贈るような思いが含まれているでしょうか。自分用にメモするだけでなく、自分が生活・仕事でなんとなく繋がっているコミュニティに対して何か贈るという気持ちでアウトプットしてみてください。つまり、あなた自身があなたの世界を「Empower」するわけです。

ブログを長く続けている方は気付いていると思いますが、贈るという行為は以下のような効果があります。

  • 贈ることが新たなインプットに繋がる
  • コミュニティがよりポジティブな方向へあたらく
  • 新たなネットワーク (出会い) やチャンスへ導く

贈る行為は長文の記事を書いて自分の意見を発信するだけではありません。自分が興味をもったサイトへのリンクを皆に教えるという行為も「贈る」に繋がります。それだけでも自分という存在に気付いてもらえるキッカケになりますし、それが新たなコミュニケーションに繋がります。そこから徐々に自分ができる「贈る」の表現の幅を広げていけば自然と上記に書いたような効果を得れるはずです。

自分が発信することはない、消費者に徹するという考え方も出来なくはありません。しかし、ちょっとしたことの共有を皆で行えば大きな動きに繋がることがあります。Webはそれを何度も証明し続けていますね。

力になってくれる企業の存在感

共有がこれだけ盛んになっているということは、情報発信の力は企業だけのものではないということが分かります。何かを贈り続けている個人のほうが企業より影響力がある場合も Web では考えられるわけです。こうした中、社会貢献の寄付だけでなく企業ができる「Empower」を通してブランド価値を高めていくでしょう。

Likeボタンがいかにして顧客を Empower したのかが分かる Justin Osofsky のプレゼン資料「Working Together to Build Social News

ソーシャルメディアを通して情報発信をすることが注目されがちですが、顧客の声が以前より聞き取りやすくなったのも重要な特徴です。ネガティブなのも当然あるわけですが、ポジティブな声も少なくありません。彼等の声を見つけ出し、彼等がもっとブランドについて語りたくなるような手助けをするという意味での Empower が今後より多く増えるでしょう。Empower できる素材は、Web 上でのプロモーションをはじめ、製品・サービスそのものやカスタマーサービスなどビジネスすべてです。

共有しやすくするための仕掛けを用意するのも Empower の第一歩です。米マクドナルドをはじめ、多くの企業サイトがトップページに Twitter や Like ボタンを設置しているのは Empower の一環といえます。ここ数年、企業内にコミュニティマネージャという役職が生まれ、彼等が顧客と積極的に対話しているのも企業自ら情報発信するだけでなく、顧客と共に情報発信することの効果があるからでしょう。こうした企業が顧客 (ユーザ) を Empower して成長していくというプロセスは、Webサービスを運営されている企業は得意かもしれません。

コミュニティマネージャをひとりおくことが出来る企業は多くないでしょう。しかし、小さな企業でも出来ることはたくさんありますし、まずは出来ることは何かを探すことが重要でしょう。個人から企業という様々な規模でお互いの「Empower」が多発する1年になるでしょう。