透明かつ自動化するUIデザイン
上図は、Facebook, Instagram, Snapchat をはじめとしたサービスが提供している「ストーリー」でよく見かける動きです。ストーリーはここ 1, 2 年で一気に広まりましたし、毎日観覧している人もいると思います。
UIデザインも成熟期に入ってきて、ベストプラクティスと呼ばれるものが出揃ってきました。タイムラインのUI、ナビゲーションのUI、ギャラリーのUI など、様々なコンポーネントがどのアプリを見ても大して変わらなくなりましたし、そこから大きく外れたものは「使いにくい」と言われる場合もあります。
ストーリー式 UI も他のコンポーネントと同様、似たり寄ったりになってきていますが今までの UI になかった特徴的なところがあります。
- 操作のための UI が極めて少ない: 従来であればスキップしたり次の動画を見るための操作 UI があったところが、ストーリー式 UI にはそれらがほとんどない。スワイプのようなジェスチャーを使うことを大前提としている。
- 自動的に次のコンテンツへ移動する: 従来であれば次のコンテンツを見るか見ないか決めることができる UI があったが、ユーザーの意思に関係なく次の動画が再生される。ジェスチャー操作はできるものの、何もしなくてもコンテンツを見続けることができる。
Pinterest をはじめとしたサービスが実装している無限スクロールも、ストーリー UI と少し似ているところがあります。従来であればページネーション UI を設けて、ユーザーに次に何を見たいか操作させていたわけですが、無限スクロールは「次のページを見たい」「4ページ目が見たい」という考えさせる部分をなくしました。ストーリー UI も似たようなところがありますが、何も操作しなくても自動的にコンテンツが見れるという点で少し違います。
特に動画の自動再生は 3, 4 年前であれば「バッドプラクティス」と呼ばれていました。YouTube が自動再生を実装したときも反対の声は多くありました。次を再生するかどうかはユーザーに委ねた方が良いと考えられていましたが、ストーリー UI はそれを覆すものです。
もちろん、ストーリー UI や無限スクロールがすべてのアプリで適応できるものではありません。ユーザーエンゲージメントを高めたいソーシャルメディアに適した UI ですし、コマースでは逆効果の可能性もあります。しかし、あらゆる操作をユーザーの判断に委ねて UI を提供するべきなのか考えなければいけない時期に入ってきたと思います。いちいち操作するのが面倒というユーザーも少なくありません。
操作をさせるとしても、それをわざわざ GUI を用意する必要があるかも考慮しておきたいところ。ジェスチャー操作が多い iPhone X も最初は難儀しましたが、今は iPhone X のジェスチャーによるアプリスイッチのほうが楽だと感じています。ストーリー UI もマルチタッチデバイスが広く普及した今だから楽に使えるのでしょうし、それに合わせて GUI の扱い方も変えていくべきでしょう。積極的に GUI をなくすのは良くないですが、ジェスチャーを『オプション操作』に留める必要もなくなってきています。
自動的にコンテンツを観覧させたり操作を完了させるのは、ユーザーにとって楽かもしれませんが、よりユーザーの理解が必要になるアプローチです。作り手による『こう遷移してほしい』という考えの押し付けになる可能性もありますし、操作を奪い過ぎて身動きがとれない状態を作り出してしまうこともあります。今まではそうだったからという考えに囚われず、改めて今のユーザーの使い勝手を観察した上での『透明化・自動化』を考えていきたいです。