なぜ公開されているスキルをそのまま使わないのか

なぜ公開されているスキルをそのまま使わないのか

公開されているスキルやハーネスは、そのままダウンロードして使うのではなく、まず中身を読んで、自分の環境に合わせて作り直してほしいです。

お盆休みのまとまった時間を、スキルとCLAUDE.md の手直しに使っていました。使っているうちに見つかった不具合を見直したり、今の仕事の仕事の進め方が合わなくなっとろころを調整していました。

自分に合わせて道具を整える

Web には design skills のようなスキルやハーネスが数多く公開されていて、優れたものがたくさんあります。ただ、私の場合ダウンロードしてそのまま使うことは、ほぼありません。作者の身元が不明だとコードインジェクションのリスクがあり、警戒しているのも事実です。ただ、理由はそれだけではありません。

公開されているスキルは、誰が使っても破綻しないように整理されていて出来は素晴らしいものが多いです。しかし、実際使ってみると「なんとなく違う」と感じることがあります。一見すると同じ仕事(タスク)でも、働き方は人によって異なります。その違いは、使うツールや手段だけではありません。物事の捉え方や言葉の選び方にも、その人らしさが表れてきます。そうした小さな違いの積み重ねが、結果として「なんとなく違う」という感覚につながっていくのだと思います。

だからといって、他の方が作ったスキルを全く見ていないというわけではありません。 代わりに AI にダウンロードしたスキルを共有して「自分はこのような使い方を想定していますが、スキルの中で活用できる部分はありますか?」と尋ねることがあります。また、「自分が使うなら、このような状況や手順を想定しています。ほかに考慮すべき点はありますか?」といった質問もしています。他の方のスキルを自分のメンタルモデルや言葉遣いに合わせてカスタマイズしている感覚に近いです。

昔は、自分自身のツールや環境を作るのは非常に手間がかかりました。例えば、Illustrator はスクリプトで標準機能にはない処理を自分で作ることができます。スクリプトが書けない人は、公開されているスクリプトは探して利用できますが、「少し手を加えたい」と思ったときに、自分で調整できる人はごくわずかでした。知識のある方が作ったスクリプトをそのまま使うしかなく、スクリプトの挙動に自分の働き方を合わせるしかありませんでした。

しかし、今はそんなことはありません。
自分の働き方に合わせて、必要な道具を自分で作れるようになりました。「ああでもない」「こうでもない」と AI と対話しているうちに、いつの間にか道具が出来上がることもあります。だからこそ、評判の良いスキルを見つけても、そのまま使わず、自分の環境に合わせて書き直すか、それを土台にして別のものを作っています。

AIによって広がる素材に触れるデザイン
AIを、自分の仕事の成果物を代わりに作ってもらうツールと考えるのではなく、自分の仕事の幅を広げるための道具として捉えてみるとどうでしょうか。

文脈も変わり続けるからこそ

スキルに限ったことではないですが、作れるようになったことで「手入れを続ける」という別の課題が浮上しています。

庭と同じで、手を入れるのをやめた途端に荒れ始めます。しばらくメンテナンスをしていなかったスキルは、前提している状況が古くなって、使っても望んでいる出力にならないことがあります。世話はAIに任せればよい、という考え方もあります。しかし、すべてをAIに丸投げすると、いつの間にか不要な情報によって汚染され、役に立たない道具へと変わっていきます。

まるで庭の手入れをするように書き換えや整理をしていたのがお盆でした。今は、この仕組みの手入れに十分な時間をかけないと、すぐに品質が落ちてしまうように感じます。自分の働き方を変えたときだけでなく、AIモデルが入れ替わっただけでも、出力品質が大きく低下することがあります。もちろん、ツールやワークフローに異なる要素が加われば、SKILL.md の見直しも必要です。チームメンバーが加わると、さらに複雑化します。

正直、手入れは面倒です。
それでも、私は自分でスキルを作って手入れをすることをオススメします。スキルやハーネスの作り方が学べるだけでなく、AI一緒に働くときの手触りを知ることができるからです。どこから任せ、どこから自分で確認するのか。どう書けば、より伝わりやすいのか。いろいろテクニックとして紹介されていますが、実際に自分の言葉で伝えてみなければ、分からないこともたくさんあります。

CLAUDE.mdAgent.md のような設定ファイルがどれくらい更新されているのかという研究もあって、初期はおよそ1日に1回は更新されるそうです。現段階では自分で手入れをするのは当たり前の行動とも言えます。

Agent READMEs: An Empirical Study of Context Files for Agentic Coding

公開されているスキルやハーネスは、そのままダウンロードして使うのではなく、まず中身を読んで、自分の環境に合わせて作り直してほしいです。少し手を加えるだけでも構いませんし、それを土台に、まったく新しいスキルを作るのもよいでしょう。また、一度作って「完成」とするのではなく、変わり続ける状況に合わせて、少しずつ手入れしながら育てていくことも大切です。手間はかかりますが、その過程で身につく感覚は、長く役立つものになります。

Yasuhisa Hasegawa

Yasuhisa Hasegawa

Web やアプリのデザインを専門しているデザイナー。現在は組織でより良いデザインができるようプロセスや仕組の改善に力を入れています。ブログやポッドキャストなどのコンテンツ配信や講師業もしています。