Bandcampが提案する今時の音楽販売

photo taken by auggie tolosa

もう1年半くらい前からありますが、Bandcampは音楽系のサイトではトップレベルのサイトです。デジタルミュージックを販売するサイトはたくさんありますが、ここは幾つか工夫がなされています。

  • 音楽配信に最適化されたカスタムページ
  • 非圧縮ファイルをアップロードすれば、複数フォーマットに自動変換される
  • ミュージシャンは無料から有料まで自由に設定できる
  • 音楽に反応して動くビジュアライザ付き
  • リスナーが値段を決める形式にも対応
  • 低音質は無料で高音質は有料という分類が可能
  • 豊富な共有オプション
  • どの音楽を最後まで聴いて、どれをスキップしたのか分かるアクセス解析
  • 自分の音楽が何処で話題になっているか分かるリファラ表

ソーシャルメディアを利用するユーザーを意識したデジタルミュージック販売のひとつの形を Bandcamp は提案しているわけですが、デジタルだけでなく CD/レコード販売でもおもしろい試みを始めました。BCWaxは、Bandcamp と連動したレコードレーベル。今この時代に CD やレコードを手にする理由は音楽が聴けるからというより、それが CD やレコードという触感があるメディアだからといえるでしょう。そこに注目して紙質から徹底的にこだわったパッケージングで限定販売するのがコンセプト。

BCWax から発売される Love. Life. Ukulele. のカバーを見れば分かる通りかなり高品質です(もちろん音楽も負けていませんが)。限定品である点。そして、イラストや印刷の質が高いので、物欲をそそる方もいるのではないでしょうか。特にファンであればぜひ欲しい一品です。

以下が BCWax の主な特徴になります。

  • Bandcampがもつ豊富なアクセスデータを基に売れ筋のバンドと共同販売契約
  • 製造コストと利益の一部は Bandcamp へ
  • 音楽の著作権はアーティストのまま
  • 購入したレコードにはデジタルファイルも含む

従来のレコードレーベルの定義とは異なるわけですが、これもひとつの形ではないでしょうか。もちろん、今回のようなアプローチはインディミュージシャンを対象にしているから可能なのかもしれません。音楽業界だけではないですが、今誰もが「このままでは駄目だ」と感じていると思います。何か変化が必要な時期であるからこそ、今までのビジネスモデルや「こうあるべき」という考え方に固辞せず、様々な試みをするべきだと思います。

Web をたくさん利用している方は分かると思いますが、成功モデルなんてないわけです。やらないと分からないことがあまりにも多いのが今だと思います。デジタルミュージック配信の可能性を示しているだけでなく、モノを所有する喜びを提供するために何が出来るかを考え、実行しているという意味で Bandcamp / BCWax は良いインスピレーションになりそうです。

Yasuhisa Hasegawa

Yasuhisa Hasegawa

Web やアプリのデザインを専門しているデザイナー。現在は組織でより良いデザインができるようプロセスや仕組の改善に力を入れています。ブログやポッドキャストなどのコンテンツ配信や講師業もしています。