私たちは人に何かを伝えたいときに、言葉・絵・音・映像などを駆使して表現します。標識のようにひとつの形式でユニバーサルに伝わることもありますが、そうはいかないことがしばしばあります。このサイトでよく取り上げている「デザイン」「マーケティング」といった言葉は、広く使われている言葉ですが、人によって解釈や使い方が違うことがあります。そこで、切り口や伝え方を変えることで少しでも多くの方に興味をもっていただくよう工夫しています。

文章のペースや表現を変える技法を「修辞 (Rhetoric)」 と呼びます。この言葉にピンと来ない方はいらっしゃると思いますが。Wikipediaに書かれている技法の例をみると、耳にしたことがある言葉がたくさん出てきます。擬人法、反語、省略法、直喩法・・・これらをまとめて「修辞」といいます。

情報は大事ですが、その情報をどのように伝えたら効果があるのかを意識しなければ伝わるはずのものも伝わりません。「この情報は正確かどうか」という基準だけで情報を掲載しても読まれないことがあります。私たちは「読者は情報をどのように受け取るのか」を想像できるかどうかです。読者を想像しながら書くことを努力するのであれば修辞技法を用いるのは自然なのかもしれません。ブログや記事を書いている方であれば、こうしたことは感覚的に身に付けているのではないでしょうか。

修辞技法という難しい用語を使いましたが、私たち Web デザイナー、開発者は毎日のように修辞技法のようなことを行っています。時には「UX」「アクセシビリティ」「インタラクションデザイン」といった別の言葉をつかって同じようなことを実践しています。UX にいえることですが、私たちはよくページのフローや使い勝手といったサイト全体 (マクロ) を見渡して利用者によい体験を提供しているかどうかを考えることがあります。修辞技法が光る部分はマクロではなく、ページの中にある文章 (マイクロ) の体験です。

文章は大事だと分かっていても、いきなり表現力が豊かになることはありません。文章を書き続けなければ身に付きませんし、書くだけでなく多くの文章を読む必要もあります。しかしライティングの技法以外にも、読者の情報の受け止め方を意識した情報掲載は可能でです。

エディトリアルデザインの例 (by Abel Sanchez)

人は文章を読む前に、情報をつかみ取っている場合があります。ポスターデザインや雑誌のレイアウトが良い例ですが、じっくり読む前にタイポグラフィやレイアウトが目に飛び込んできます。そのパッと見の印象で、そこでどのような情報を手に入れることが出来るのか、感覚的な期待が生まれます。ビジュアルデザインや文字の視覚的な流れを工夫するだけでも情報の伝わり方が大きく変わるわけです。紙媒体からいわれていることと、Webならではの要素をまとめると以下のとおりです。

タイポグラフィ
文章にアクセントがあるとペースが掴みやすくなるだけでなく、視覚的に情報の雰囲気が掴みやすくなります
色彩
情報にふさわしい色を使っているかどうかでも、伝わり方が変わります
レイアウト
レイアウトで情報の重み付けをしたり、第一印象のインパクトを作り出すことも可能です
構造
情報を階層式にしたりグループ分けするとで可読性と即時性が増します
空間
情報にフォーカスしやすくなるだけでなく、時には緊張感を与える効果もあります
UI
メインになる情報以外のインターフェイスがどのように関わっているかで情報の強度が変わります

文章をひとつひとつチェックして読者と想定している方に対して最適化できたら素晴らしいですが、上記に書かれている要素を調整するだけでも、情報が伝わりやすくなることがあります。自分が読者に感じてもらいたい感情・反応を得てもらうには、読者に合わせてチューンナップしなければならないということでしょう。

コンテンツのデザインもビジュアルのデザインも似たところがあって、少しアプローチを変えるだけでも随分印象が変わることがあります。自分の立場で自分が「当たり前」と感じていることをそのまま伝えるのではなく、読者を意識して彼等に最適な表現はなんだろうと考えることで伝わるコンテンツになります。

Image is by Stefan Rimm