bingのデザインアプローチについて
6月に公開された Microsoft の新しい検索サービスbing。先日 comScore が発表した検索エンジン市場の調査報告書によると、7月が公開月に比べてシェアが 5% 増だったそうです。公開されたばかりということもあり、試しに使っているという方も少なくないでしょう。今後どうなるか分かりませんし、吸収する形になるであろう様々な Yahoo! 検索の技術がどのように bing に影響を及ぼすかが注目です。特に自分の検索エンジンが作れるプラットフォーム BOSS や、セマンティック検索を可能にする SearchMonkey は何かしらの形で bing で移植してほしいところです。
技術的な面で今後の動向が気になる bing ですが、Google やYahoo! Search といった今までの検索サイトと異なるデザインアプローチをとっている点で私は注目しています。トップページを見るとわかりますが、他の検索サイトに比べて非常にグラフィカルです。検索結果はシンプルですが、ページ上位にはグラデーションがかかっています。他の検索サイトはサイトの色を極力削いで、検索結果をインターフェイスとして扱っている印象がありますが、bing はサイトそのものにも性格があると思います。マイクロソフト的なデザインにしているのではなく、bing としてのブランドを作ろうとしている姿勢がみられます。
提案する検索
常に能動的なアクションを要する検索サイトですが、bing では少し違う捉え方をしています。もちろん、能動的なキーワード検索が主軸にあるものの、bing 側からの提案をする能力もあります。例えば「New York City」と検索すると、関連キーワードの提案だけでなく、「天気」「職」「ホテル」など利用者が探している可能性があるキーワードと結びつけて結果に反映してくれます。さらに、ホテルと絞り込んでいくとホテルのリストに適したインターフェイスに切り替わり、さらにそこから値段やレーティングの絞り込みが出来るようになっています。こうした一連の流れがシンプルなキーワードからどんどん繋がって行くのはおもしろいです。
bing のトップページに大きなインパクトを与えている写真も実は毎日変更されており、マウスオーバーすると写真に関係した気になるキーワードが表示され、検索へ繋がるようになっています。英語サイトと同じ場合がありますが、日本独自の写真のときが多く、旬な話題を取り上げていることもあります。キーワードをあらかじめ提示して、そこからいろいろ探してみるというこのアプローチ。他の検索サイトでも「人気キーワード」をリストしているところがありますが、写真というコンテンツから繋げるというやり方はあまり見られないですね。
検索「サイト」のこれから
Google の検索結果に比べると、精度が劣る印象がありますが、それでも興味深い検索サイトであることには変わりない bing。1,2回使っているだけでは「使える」「使えない」というのは判断出来ないので 1週間くらいずっと bing を使っていましたが、便利だなと感じるシーンは何度かありましたし、スピードは申し分ないのでストレスなく使えました。とはいうものの、今はまた Google に戻っています。
理由は bing の検索結果に満足いかなかったというより、今までの習慣から抜け出せなかったからです。Google をもう数年ディフォルトとして利用しているので、Google 的な感覚が身に付いてしまっているのでしょう。いざ他のを試してもちょっとした違和感があったり、考えてもないのに「google.com」と記入してしまうこともあります。他のサイトやツールにもいえますが、利用者がもつこうした『ディフォルトの行動』を変えるのは難しい課題です。1,2度使ってもらうだけでなく、持続して使ってもらいつつ、高い満足度を維持しないと、すぐまたディフォルトに戻ってしまいます。
利用者のディフォルトの行動が固定してしまう理由のひとつに、検索はすでに「サイト」ではない点にあります。恐らくあなたも検索サイトに訪れて検索しているのではなく、ブラウザの右上にある検索バーから検索していると思います。ここを変えない限りはディフォルトの行動の変化も起こらないでしょうし、新しいサービスの習慣化もありません。他のタイプの Web サイトにもいえますが、素晴らしいサイトを作り上げて利用者が訪れるのを待ち構えているのではなく、利用者に近づくためには何が出来るのかを考えていく必要がありますね。
今後、(開発者も含めた)利用者に近づくために bing はどのような手法やサービスを展開していくのか楽しみです。