データ解析で終わらない提案型分析のコツ
文脈で変わるデータの素顔
効果測定が必須の時代だからこそ、様々なデータをみて検証をする必要がでてきました。アクセス解析で難しいのは、データの切り口や、評価できる数値を見つけることではなく、次のアクションへ繋げることができる提案をすることだと思います。「脱PVで見えてくるコンテンツの質」という記事で、ページビュー(PV)だけでコンテンツの善し悪しを評価してはいけないという指摘をしました。PV だけでは、サイト訪問者の『質』を判断するのが難しいだけでなく、企業が求めている(ロイアリティの高い)顧客と接点を持てているのかも判断できません。分かりやすいからという理由で PV を評価指標の主軸にしていると、「ページビューを獲得する」という短期的かつ具体性のない目標を立ててしまうことになります。
意味のあるデータを見つけだすヒントは、アクセス解析から導き出された数字の外にあります。コンテンツの評価は、アクセスしている利用者の文脈によって大きく変わるからです。
例えば、中小企業で働く30代の管理職の方々に向けた Web サービスのランディングページを作ったとします。「ページビューはどうだったか」「滞在時間はどうか」「直帰率は低いか」といった質問も、誰がどのような目的でサイトにアクセスしているのかという文脈が加わることで評価が変わります。ターゲットを絞っている分、ページビューが低かったとしても失敗とは言えませんし、サービス申し込み数や、FAQへの遷移といった別の指標も組み合わせる必要がでてきます。また、滞在時間が異様に長いとしたら、コンテンツが明確に示されていない可能性も考えられます。
直帰率が高いのは良くないとか、訪問者のページ観覧数が低いのは問題だという声がありますが、これも一概にはいえません。例えばヘルプページの直帰率が高いのであれば、それは効果的なページであると判断することができます。利用者が必要な情報を即時に見つけて、作業に戻るための十分なコンテンツがあったと仮説することができます(実際は別のデータとも照らし合わせて判断しますが、ここでは簡略化しています)。
適切な疑問をもつ
サイトの評価において、コンテンツと利用者は切っても切り離すことができません。データを見ていたとしても、その先にいる利用者が何を思い、何をしようとしているのかを考えなくてはいけません。利用者の文脈に関する以下のような疑問とデータを照らし合わせることによって、数字の評価が大きく変わることがあります。
- 利用者はそもそも何をしようとしているのか
- どのようなアクションが利用者の満足に繋がるのか
- アクションを助長するような情報が用意されているか
- 必要な情報が見つけやすく、明確に提示されているか
利用者の文脈を理解することで、膨大な量のデータから何を集めるべきなのかを判断しやすくなりますし、独自の評価指標をつくるときのヒントにもなります。データがたくさんとれるわけですから、深く掘り下げようと思えばいくらでもできます。アクセス解析を通してサイトの利用状況が分かったとしても、次にすることが何か分からなければ意味がありません。
どのような種類のコンテンツのデータを見ているのか。そして、利用者はどのような文脈で訪れているのか。この 2 つをみることで、コンテンツの評価を的確に行えるようになるだけでなく、次へのアクションを早く出すことができるようになるでしょう。