アクセス解析から見つけだすコンテンツ設計のヒント
コンテンツの整備と Web サイト/アプリの設計提案をする際、必ずといっていいほどふたつのことを行います。
ひとつは、コンテンツの現状把握をする際に便利なコンテンツインベントリー。もうひとつは、アクセス解析です。私は、アクセス解析のプロフェッショナルではありませんが、コンテンツを主軸にして幾つかの数値をみるようにしています。良いモノを作ったからといって、結果に繋がらなければ、自己満足で終わってしまいますし、運営も続かなくなります。また、アクセス解析はコンテンツの質をチェックする際も使えます。
膨大な数値をみることには、クリエイティブはないように思えますが、そんなことはありません。アクセス解析は様々な角度で数値をチェックすることが重要ではなく、表層的なデータからどのようにイマジネーションを広げるかが重要だと考えています。データが人間像を描く土台になることがありますし、彼等がどのような文脈でサイトを訪れているのかを想像することも可能になります。データとゴール達成のためのプロセスには溝があり、その溝を埋めるのがクリエイティブの役割です。
データをそのまま鵜呑みしたり、間違った目標値を立てることが、悪いコンテンツ配信に繋がることがあります。例えば、ページビュー(PV)だけを目標値にしてしまうと、自社ブランドには合わない内容でも、受ければ良いという考えになりがちです。高い PV を叩き出すと気持ちよくなりますが、コンバージョン / エンゲージメントに繋がるとは限りません。また、直帰率もその数値だけで善し悪しを決めることはできません。お気に入り、後で読むといった具体的な行動をとった場合も直帰率として換算されることがあるからです。
コンテンツの質のチェックと、戦略の基礎をつくるための分析ポイントが 4 つあります。
- 企業のビジョンや価値を表すデータは何かを見つけ出す
- そもそも企業ビジョンとはなにか。何よりも重要にしていることは何かを知る必要があります。企業ビジョンがチェックする項目を絞り込む際のヒントになります。
- ロイアリティが高い訪問者を重点に置く
- 再訪問、滞在時間、観覧ページ数など、ロイアリティが高い訪問者を見つけ出す要素がデータに隠れています。彼等がどのようにサイトを見ているのでしょうか。全体数では見えない改善のヒントがあるはずです。
- タッチポイントではなく道筋(パス)でみる
- メールキャンペーンやソーシャルメディアをキッカケにサイトに訪れる方は少なくありません。彼等が何処から来たかというタッチポイントだけでなく、彼等がどのような経路を辿っているのかも忘れてはならないポイント。コンバージョン経路もヒントになる数値です。
- エンゲージメントの『深さ』を見極める
- 数ページ観覧したからエンゲージメントが高いと決めつけることができませんし、クリックがないから良くなかったと判断するのも安直です。コンバージョンの道のりやランディングページの設計が、そのサイトのエンゲージメントの定義に深く関わりがあります。
これらを分析するだけでも、以下のことが見えてきます。
- 利用者に行動させるコンテンツと、そうでないコンテンツの特徴
- 訪問者の利用シーン(コンテンツへアクセスする経路)の具現化
- 必要とされていないコンテンツと、必要とされているけど見られていないコンテンツ
- 自社で設定したペルソナと、データを基に生まれたペルソナとのズレはどこにあるか
見えてきた課題をブランドメッセージと合わせてどのように伝えると良いのでしょうか。アクセスを上げましょうという大雑把な目標ではなく、課題に対して、このようなアプローチで挑戦してみようというアクションプランも作りやすくなります。また、デザインも「なぜこうしたのか」という説明がしやすくなりますし、作り方もフォーカスされます。
何も教えてくれない数値から、生きた数字にするための苦労はありますが、そこが楽しいところでもあります。