健全なデザインの会話に必要なコト
デザイナーにある2つの仕事
デザイナーの仕事は情報を整理したり何か成果物を作ることであることに異論を出す人はいないと思います。何か形にできるのはデザイナーの特殊能力だと思いますが、それだけがデザイナーの仕事ではありません。デザインの見方や伝え方を周りに教えるのもデザイナーの役割です。
デザイナーの間では「デザインは課題解決すること」という認識が広まっていますが、周りからは「デザインは見た目を整えること」と思われています。デザイン思考、UX といった言葉をデザイナー以外が発することはありますが、それでもデザインは見た目の話に止まることがあります。
こうした状況に対して「デザインのことを分かっていない」と言うのはナンセンスです。私たちデザイナーと同じように情報収集と実践を繰り返しているわけではないのに、デザイナーと同じ認識と姿勢でデザインに取り組むことを期待するのは現実的ではありません。結局、見た目以上の話から発展しない理由として以下の 4 つが考えられます。
- 相手が分かる言語でデザインを伝えていない
- 感覚的な言葉が多すぎて個人的な意見に聞こえてしまう
- 課題解決と言うけど、デザインレビューは終始見た目の話
- ファシリテーションがないので、自分の『デザイン観』で話が平行する
デザインという言葉に対する理解も違う。デザイナーの仕事への期待も違う。非デザイナーになるとデザインの見方すら分からないので、見えるものについてしか話ができません。こうした状態で「これはどうですか?」「ちょっとみてください」という軽い言葉でデザインを見せるのはとても危険です。
「これはどうですか?」という言葉の中には様々なデザインの要素が凝縮されています
戦略的にデザインを見せる
デザインの見方や伝え方を周りに教えるのデザイナーの仕事と書きましたが、具体的に何ができるでしょうか。
ひとつはデザインの話をあえて課題解決の話に完全にシフトさせること。見た目はデザインにおいて重要な要素なので本来は無視すべきではありません。しかし、見た目の話を含めてしまうことで本来すべき課題解決の話まで及ばないことがありますし、デザイン、デザイナーへの期待も「見た目を整える」ところから進展しません。
ユーザー(もしくはビジネス)が抱えている課題を解決する手段として、この見た目を作りました … という会話から始めることで、議論を見た目から遠ざけます。成果物のメリット・デメリットが書かれたデザインドキュメンテーションを残すのも手段です。
もうひとつはフィードバックを得たいところを明確にした上で共有する手段を変えること。「デザインをみてもらう」ではあまりにも範囲が広過ぎますし、自分が求めていないフィードバックをもらって工程を遅らせてしまう場合があります。
Slack や Chatwork をはじめとしたチャットツールは大変便利ですが、ステークホルダーの意向を聞いたり、デザインの方向性を定める場として不向きです。そういう場合は、主要メンバーを集めて会議をしたほうが先へ進めやすいです。会議へ持っていく成果物もワイヤーフレームのような工数がかからないものが良いでしょうし、会議室にあるホワイトボードに描くでも良いでしょう。
- 何のフィードバックを受けたい?
- 誰に見てもらうと先へ進む?
- 決めるために効果的な成果物の精度は ?
これらを基にデザインの途中成果物と共有する場所を決めると、求めているフィードバックが得やすくなります。ただ見てもらうのではなく、戦略的に見せ方を工夫することもデザインの理解を深める近道です。
まとめ
2018年12月15日に開催された WCAN 2018 Winter では、ユーザーとビジネスの課題解決になっているか『売り込み』をするためのヒントを話しました。当日はイベントを主催をしている 有限会社アップルップルが開発する a-blog cms の web サイト を使ってどういうフィードバックとヒアリングをしたら良いか実演を交えて解説しました。
デザインについて話すことはデザイナーの仕事に含まれていなかったり、「できたらやる」という優先順位になることがあります。しかし、本来は作るのと同じくらい重要な仕事ですし、伝えることで不本意な制作作業を減らすこともできます。言い換えると、作る時間を増やすために伝えているわけです。
ツールを覚えるのと同じくらい伝えることもデザイナーの基礎体力だと思ってここ数年活動していますが、今後も続けていこうと思います。
デザイン批評を通して伝える能力を磨くことで、言われたことを作るという受け身のデザイナーから抜け出す第一歩になるかも。一生懸命作ったから認められるとか、そういうわけでもないので。 #wcan
— Yasuhisa🥴 (@yhassy) 2018年12月15日