デザイン組織の成熟度に合わせたデザインシステム提案
組織の成熟レベルに応じて『デザインシステムの解像度』を分類することができます。
難易度が高過ぎな海外事例
Web で公開されているデザインシステムは、インスピレーションにはなりますが、最初に目指すものとして相応しくない場合があります。好例として紹介される Salesforce の Lightning Design System が最初に GItHub にデプロイされたのが 2015年の9月。プロジェクトが始まったのはもっと前だと思うので 4 年くらい続けているはずです。Salesforce で働くデザイナーの数は分かりませんが、 LinkedIn で調べると 300 名以上のデザイナーが検索結果に表示されます。
少なくとも 300 名のデザイナーが働いている組織が 4 年くらいかけて作っているものと同等なものは作れません。欧米の事例は「自分たちでツールを作ることもあります」と言うような大規模組織が多いことから、参考にならない場合があります。
ひとまず原則や色から始めるのはどうかと提案をしたことがありますが、進め方は他にもあります。特に日本のデザイン組織形態もバラエティに富んでいるので、あらゆる状況で使えるワークフローは存在しないと思っています。
成熟度で始め方を分類する
では、どうしたら良いかを考える上で inVision が 2019 年 2 月に公開された Design Maturity Model が参考になります。世界 2,200 を超える企業で働くデザイナーがどういう立場で仕事をしているかを調査したもので、デザイン組織の成熟度を 5 つのレベルに分類したものです。ビジネスとの関わり方と距離感を表していると言い換えることができます。
デザインシステムも直接的・間接的にビジネスへ影響を及ぼすものなので、組織の成熟レベルに応じて『デザインシステムの解像度』を考えることができるのではないかと仮説しました。 inVision が提示しているレベルに綺麗にはめ込むことは難しいと思いますが、始め方を見極めるときの参考になるはずです。
Level 1 : Producers
ビジュアルを作るのが主な仕事。他部署からのオーダーを受けてデザインする場合が多い組織。実装との連携まで考えるのは困難なので、自分たちの仕事効率化にフォーカスして作ります。
- デザイン原則(部内での約束事で狭義な意味のデザイン)
- 簡易ブランドガイドライン
Level 2 : Connectors
コラボレーションを意識し始めている組織。様々な役職の方と積極的な情報共有を始めたり、直接話してその場で決めるといった協働をしているレベルです。自分たちの感覚・コトバだけでは通用しないので、周りにどう理解してもらうかが成功の鍵になります。
- デザイン原則(プロダクトを視野に入れた広義なデザイン)
- UI インベントリ
- ブランドガイドライン(他部署が使うことを想定)
- デザインファイルのガイドライン
Level 3 : Architects
プロダクトを成長させるには、属人性を減らして効率的なワークフローと評価システムが不可欠になります。作るためのデザインだけでなく、より早く大きく動くための組織デザインを意識しているレベルです。このレベルあたりからデザインシステムを本格的に意識し始めると丁度良さそう。
- デザインから実装までのワークフローを小さく実現
- デザインドキュメンテーション
- デザインファイル上でスタイルガイド
Level 4 : Scientists
データを活用してデザインができる体制とプロセスが整った状態。A/B テストはもちろんユーザー調査もプロダクト開発プロセスの一部として取り入れているレベルです。デザインシステムを中長期プロジェクトと見なしてリソースが割り当てられている状態です。
- デザインシステムを専門としたチームを作る
- デザインシステムを「プロダクト」と捉えて戦略を練る
- デザインから実装までのオートメーションを実験的に開始
- デザインシステムを活用してプロダクトデザインを模索
Level 5 : Visionaries
ビジネス戦略から関わるデザイン組織。プロダクトの改善だけでなく組織の生産性をどう上げていくかまで考慮・関与しているレベル。現実的な課題解決を繰り返しながら、未来を見据えたビジョンを提示するほどの影響力をもっています。このレベルだとトップダウンでデザインシステムを始めることも可能。
- デザインシステムの測定・評価システムを設ける
- デザインから実装までのオートメーションの可能性を広げる
- より包括的なデザインシステムへ成長させていく