すべてがUIになるVRの世界
先日、報道を VR で楽しむ NYT VR を試してみました。VR はゲームをはじめとしたエンターテイメント性の高い分野で注目されていましたが、 NYT VR はジャーナリズムからのアプローチだったので新鮮でした。これは仮想空間だと分かっていても、次第に世界に没頭してしまい、現実と仮想の境目が曖昧になる感覚は VR 体験ならではです。
スマートウォッチをはじめとしたウェアラブルや IoT の登場によって、従来のような GUI を前提としたインタラクションデザインではなく、No GUI のデザインが注目され始めています。すべてをボタンのような操作 UI で表現するのではなく、音声、触感、行動でインプット・アウトプットすることがありえます。しかし、VR を体験していると、No GUI とは別に、Everything UI という世界もありえると思い始めてきました。Everything UI は以下の 4 点が従来と大きく異なります。
- 日用品や建築など、すべてが UI になりえる
- スクリーンという領域や形状が制約でなくなる
- 固定位置にあるものではなく、私たちと一緒に動き出す
- ジェスチャーだけでなく、視線や脳波もインプットになる
Microsoft の HoloLens は、Everything UI を理解する上で良いショーケースだと思います。
では、どのように VR のデザインを考えれば良いのでしょうか。Google I/O 2015 のプレゼンテーション「Designing for virtual reality」や、Designing for Google Cardboardが参考になります。以下はその中で紹介されている VR デザインの考え方の要約です。
- オブジェクトとの距離
どれくらいだとフォーカスしやすいのか。どれくらい近づくと圧迫感を感じるかを考慮する。人間の心理も『世界』をどう捉えるかに大きく影響します。 - 奥行きや大きさで変わるリアリティ
左右の瞳孔の距離(瞳孔間隔 / Interpupillary distance)は奥行きや物体の大きさを知覚するときに多大な影響を及ぼします。ソファで座っていても物体を大きく又は小さく見せるときに考慮が必要です。 - 頭の動きに合わせる
聴覚神経へ送られる刺激と、目からの受ける視覚的な刺激が同時かつ同調していなければ空間として認知できなくなります。頭の動きに合わせて情報を遅れなく表示する必要があります。 - 一定速度であるかどうか
速度が上がったり下がったりすることは気付きやすいですが、一定の速度であると、高速度でも気付かないことがあります。心地良く利用するための速度や動きはどれくらいでしょうか。 - 心地よい環境を提供する
どのような物体を置くのかを考える前に、どのような空間が心地よいかを考える。高所や閉所だと気分が悪くなる方もいます。環境に配置されている物体ににしても同じことが言えます。巨大な UI が目の前にあるとどうでしょう。
まとめ
VR デザインにおいて、人間の心理や身体について深く学ぶことが重要になります。人はどのように身体を動かしているのか、どのように物事を受け止めているのかを理解することが、仮想世界にどのように情報を表示するのかに多大な影響を及ぼします。VR はまったく別の分野に見えますが、人について学ぶという点は、従来のデザインと変わりありません。
VR は、まず体験するのが手っ取り早いですし、体験することでの学びもたくさんあります。例えば Cardboard Design Lab をつかって VR デザインについて VR で学ぶというのもひとつ。まずは、Google Cardboard でも良いので、VR を体験してみてはいかがでしょうか。