探索的検索という違う時間の流れ
検索とひとことで言ってもいろいろな形があります。私たちが Google などでキーワード検索するときは、答えを導き出すためのキーワードが分かっている場合がありますが、いつもゴールへの辿り着き方が分かるとは限りません。ゴールが何か明確でない場合もありますし、辿り着くためにまずは関連情報を学ぶ必要があるかもしれません。閲覧 (Browse) と検索 (Search) が合わさったような利用者の行動を Exploratory Search (探索的検索) と呼んでおり、ここ数年様々な研究・調査がされています。概要が知りたい方は Wikipedia の記事が参考になります。
今すぐ欲しい情報を探すのであればキーワード検索でも十分ですが、調査、仕事のプロジェクト、ライフプランなど中・長期に渡って探し続ける情報をいかに補助するかが課題です。今でもブックマークを使ったりメモソフトを組み合わせることで管理が出来ているものの、別の解も考えられます。探索的検索を理解することが出来れば、キーワードから導き出されるサイトを提示するのではなく、利用者にとって意味がある情報が上位になるようなパーソナライズ化がさらに進むと思います。
もし何か調査をしているのであれば、ひとつ前に検索したキーワードが今検索しているキーワードの結果に影響しても良いと思いでしょう。今検索しているキーワードが数日前に検索した別のキーワードの関連しているのであれば、そこから答えや経路を提案しても良いでしょう。ユーザーがコミュニティに属しているのであれば、他のメンバーが検索で導いた答えやメモを参考にすることが出来かもしれません。
探索的検索ワークショップ
昨年、 National Science Foundation が Information Seeking Support Systems Workshop という探索的検索に特化したワークショップを行いました。探索的検索を実現するためには3つの課題があるとワークショップで挙げられています。
- より強固な人と情報のインタラクションモデルの形成
- 様々な形の情報探索を補助する新しいツールやサービス
- 情報探索の評価するためのテクニックやメソッド
ワークショップでは答えが導き出されたというより、今後の研究・調査への糸口が見えたところで完結しています。参加者は大学で研究している方だけでなく、Yahoo, IBM, Google, Microsoft といった企業も参加していたので、今後何かしらの形で反映されるのかもしれません。アカデミックと企業が共同でワークショップは以前「IntelとNokiaが学生と一緒に考えたデザイン案」で紹介しましたが、羨ましいですね。憧れます。
今後の情報の見せ方
Webサイトのデザインはこうした探索的検索に対してどのように応えることが出来るでしょうか。利用者が頭の中で描いている「答え」と、目の前にある Web サイトのラベリングは一概にマッチしているとはいえず、彼等は頭の中でそのギャップを埋めたり関連付けする作業を行っています。ギャップによる混乱を避けるために、検索という頭の中にある答えをすぐに書き込める機能があるわけですが、今回のような探索的検索には検索ボックスの追加だけでは十分ではありません。
探している情報に辿り着きやすくするために邪魔になるものは排除しなければいけませんし、辿り着くための道筋も作らなければいけません。1ページ1コンテンツにしてサイトを整理する意味がより出てくるでしょうし、1コンテンツを構成しているマイクロコンテンツ(専門用語・タグ・ハイパーリンクなど)が他のコンテンツとの関わりも示すと便利かもしれません。CMSによりコンテンツをデータベース管理が出来るようになりましたが、今後はその中にあるコンテンツをいかにインテリジェントかつダイナミックな情報としてページに表示させるかが課題だと思います。
先月のセミナーでも話しましたが、人は Web サイトを探しているのではなく、情報を探しています。情報を探すという最初のステップは検索エンジンに任せても良いかもしれませんが、その後のケアを提供出来るかがサイトの価値のひとつになります。利用者のその瞬間のニーズにどう応えるかに注目していましたが、中・長期という別の時間軸が加わることでデザインに別の価値が加えれるのではないかと探索的検索を調べて思いました。