ゲームが作る新たなクリエイティブとコミュニティ

有名なゲーム会社が作った超大作ゲームも魅力ですが、個人がつくった小さなゲームも今や無視できない存在。Nintendo Wii や Facebook で多くの方にゲームが楽しまれるようになったひとつの要因として、ゲームがカジュアル化してきたところにあります。大作ゲームは高いスキルと時間を必要とされていましたが、カジュアルゲームの敷居は低く、10分くらい遊んでもそれなりに楽しめるものが少なくありません。

利用者の視点からいえば気軽に遊べるのがカジュアルゲームの魅力ですが、作り手にもメリットがあります。小さなアイデアをゲーム化して販売するための土壌が固まってきていますし、始めるためのコストも低くなってきました。もしウケが良くなかったら別のゲームを開発することは大作ゲームでは難しいですが、小さなゲームであれば可能です。

Humble BundleHumble Indie Bundleのようにインディゲームをお得な価格でセットで購入出来るサイトがあります。こうした企画が立ち上がるくらい今インディゲームは注目されています。

カジュアルゲームはチープなのしかないんでしょ?と思う方もいるかもしれませんが、そんなことはありません。特にここ数年インディゲームは質が高いおもしろいゲームが数々出てきています。And Yet Moves はお気に入りです。

Webテクノロジーのおかげで様々なコンテンツ配信やビジネス参入のための敷居が低くなりましたが、ゲームも例外ではありません。アイデアさえあれば小学生でもゲームが作れるようになりましたし、収入を得ることも不可能ではなくなりました。また、XBOX LiveWii ウェア のような大手コンソールを通すだけが配信経路ではありません。

今回は手軽にゲームを作って配信するためのツールを幾つか紹介します。利用するかしないかは別にして、誰でもクリエイティブをゲームに向けるための環境がこれだけ揃ってきたということを知るだけでも参考になると思います。

Scratch
誰でも簡単にインタラクティブなゲームや絵本をつくることが出来る視覚的なプログラミング言語。MIT Media Lab が開発したもので、無料配布されてる専用のソフトウェアで制作が可能。自分がつくったゲームをワンクリックで公開できるだけでなく、他の人が作ったゲームファイルを開いてリミックスしたゲームを再配布することが出来ます。現在、200万近くのファイルが公開されています。
Stencyl
Flash をもっていなくても、Flash ゲームを開発することが出来るソフトウェア。ActionScript 3 を記述することは出来ますが、プログラミングの知識がなくても Scratch のように視覚的に動きを加える機能があります。開発したゲームはどこにでも公開することが出来ますが、ソフトウェアにバンドルされている独自のマーケットプレイスがあり、そこで公開・販売することが出来ます。
Kongregate
ユーザーが自作の Flash ゲームを公開出来るホスティングサービス。広告収入の50%を開発者が得ることができるシステムを早期から導入しており、このテのゲームホスティングサービスの中では老舗であり人気もあります。独自の API を公開しており、スコアやバッジをコミュニティで公開・共有出来るような仕組みを導入出来るようになっています。
Storybricks
Star Trek OnlineCity of Heroes といったMMOG は利用者が自分でクエストをつくって共有できるようなシステムを導入していますが、Storybricksはそれをさらに進化させたツールです。キャラクターの動作から、環境の変化までゲームの世界で自分のシナリオを作れるのが Storybricks の最大の魅力。Storybricks をコードベースにしている MMOG である必要がありますが、「もっとこんなのがあると良いのに!」という思いを自分で実現することが出来るという意味で画期的です。

Storybrick自分でゲームを作るだけでなく、Storybricks のようにひとつのゲームをプラットフォームと見立てて、その上で自分のゲームを作るためのツールが登場してきました。Second Life のような砂場ではなく、世界観が確立されている上でストーリーを組み立てていくという意味では今までとは少し違いますね。Minecraft も少し似ているところがありますが、ゲーム上のゲームというのは人のクリエイティブを刺激しやすいのかもしれませんね。Minecraft だけでなく、多くの PC ゲーム(特に戦略系)はカスタムマップやハッキングの共有によってコミュニティが成り立っているところも少なくありません。

こうしたゲーム上でのクリエイティブの発展や、ゲーム開発の敷居が低くなっている現状は今の Web 利用とリンクするところは少なくありません。今後ソーシャルゲームがどのように発展していくのか、それがソーシャルメディア上でのコミュニケーションにどう影響するのかを考える上で、今のインディゲームシーンは意外な参考になるのではないでしょうか。

【参考】
インディゲームをテーマにしたドキュメンタリー映画「Indie Game: The Movie」が今秋に公開されるそうです。

Yasuhisa Hasegawa

Yasuhisa Hasegawa

Web やアプリのデザインを専門しているデザイナー。現在は組織でより良いデザインができるようプロセスや仕組の改善に力を入れています。ブログやポッドキャストなどのコンテンツ配信や講師業もしています。