デザインを決める5つの要素

誰もが『自分の正しさ』『良さ』といった価値観を抱きながら、目指すゴールに向かって働いています。私にしても「こうありたい」というミッションがあり、それを達成するための活動をしています。

それぞれが良かれと思って活動していたとしても、チームメンバー全員が同じ価値感をもっているとは限りませんし、優先順位も異なります。私たちデザイナーが抱える価値の重さを、他人が同じように感じているわけではありません。私はそれを「デザインの理解が足りない」ではなく、「価値観の重きの置き方が異なっている」と捉えるようにしています。

デザインフィードバックが難しい理由のひとつは、どう考えても正しいと言い切れる成果物が作れない(説明できない)ところ。ひとりが「良い」と評価したデザインが、他の人に尋ねると「そうでもない」と言う場合があります。人によって意見が変わる場合もあれば、タイミングやコンテキストで評価が変わることもあります。

デザインフィードバックするためのコツはありますが、デザインの何を重要視しているかがズレたままだと会話が成り立たない場合があります。そこで、デザイナーはデザインをするときに何を考慮しているのか自分なりに整理してみました。

感覚

よく「言語化 / 明文化しましょう」と言っていますが、感覚は欠かせない要素です。「なんか良いよね」という直感的な繋がりは感覚によって生み出される場合がありますし、それができるのはデザインの魅力だと思います。

セオリー

デザイン4原則や UI ガイドラインなど、先人が培った良いデザインを作り出すためのセオリーがあります。もちろん、それらに従って作れば良いデザインになるとは限りませんが、ある一定水準以上の質を担保できます。

ユーザー

デザインに触れる人たちがどのように成果物と向き合うのか。彼らはどのような課題をもっていて、デザインによってどのような結果 / 成果を導き出すことができるのか。ユーザーの文脈によって提案が変わる場合があります。

ビジネス / 市場

携わっているプロジェクトのビジネスはどのように収益を得ているのか。ビジネスにおいて成果物はどのようなポジションにあるのか。市場と見合わせてアプローチを工夫することもあります。

ステークホルダー / 協働者

プロジェクトを推進するステークホルダーやエンジニアをはじめとしたチームメンバーの課題解決に繋がることは何か。どのような施策であれば彼らの理解を得やすいか考えると伝わりやすくなります。

対話の基盤を整える

上記したデザインを決める 5 つの要素に対して明確な優先順位をつけるのは難しいですし、「〇〇を 40% 考慮して作っている」と説明できるものではありません。ただ、デザインを作る側、評価する側で要素の重み付けが大きく異なるとお互いが納得いく着地点を見つけるのが困難になります。

要素の重み付けが違うと対話もズレてくる

個々の重み付けを合わせるのは困難だったとしても、デザインの対話を通じてどういう共通認識をもちたいかゴール設定は欠かせません。そのためにアウトカムの定義は欠かせませんし、それと KPI を結びつけて話ができると課題解決のためのデザインの対話がしやすくなります。

理想は上記したようにビジネスやユーザー課題にデザイナーが取り組むことです。しかし、デザインの役割はプロジェクトによって異なりますし、重きにおきたい要素も変わります。重要なのは、ゴールに対して共通の理解をもつことです。

極端な例かもしれませんが、感覚に 100% 寄せてデザインを評価するシーンがあっても良いと思っています。理由も根拠もないかもしれませんが、ステークホルダーが「良い感じ」と思えるかどうかを判断基準にするのもアリなわけです。もしそうであれば、デザイナーもムードボードや事例をたくさん出してステークホルダーの感覚を確かめることができます。

不幸なのは、ユーザー課題の解決を前提として始めたプロジェクトが、途中から誰かの感覚によって決まっていくというシーンです。プロジェクト当初に理解していたつもりのゴールが、実はそうではないという建前と本音が入り混じったかのような状況でプロジェクトが進んでしまうパターン。こうした状況を避けるために、ゴールに対して共通の(かつ正直な)理解が欠かせないですし、ドキュメントをきちんと残す必要があるわけです。

また、デザインする上で忘れがちなのがステークホルダー / 協働者への配慮。それぞれが抱えている仕事の課題への理解がないままデザインを提案してもデザイナー視点のあるべき論を語っているだけに見えてしまいます。提案内容によっては彼らのリスクになる場合があるので、それでもやるべきことが理解できるように彼等が使う言葉で伝える必要があります。

要素分解して価値観を振り返る

今回紹介した 5 つの要素は、あるひとつの視点だと思います。デザイナーによって要素は異なりますが、要素分解を通して我々は何を考慮してデザインを決めているか振り返る機会になります。

デザインの会話の中で生まれるズレは、分解した要素の捉え方が違ったり重み付けが異なっていたり、対策が抜け落ちている場合に起きます。自分自身だけでなく周りが何を重要視してデザインを評価しているか理解することで、作り方だけでなくプレゼンテーションの仕方も変わるはずです。