今後はさらに測れない領域が増える

今のところウェアラブルデバイスの通知は賢いとは言えないものの、今後利用者の文脈に応じて柔軟かつタイミングよく送られてくる可能性があります。また、Google の App Indexing や、Apple の App Search など、アプリとデバイスとの間、アプリとアプリとの間、アプリと Web との間があやふやになっていきます。ウェアラブルやスマートフォンでは、その瞬間に欲しいコンテンツへ直接アクセスするという行動が増えていくでしょう。今までのようにアプリアイコンをタップするだけが接点ではなくなりますし、アプリのトップ画面から見ていく必要もないわけです。

通知が賢くなり、そのとき欲しいコンテンツが届くことは利用者へのメリットは大きいです。しかし、『アプリの成功』を評価するという意味では大きな課題があると思います。通知が賢くなればなるほど、エンゲージメント(利用時間)や、アプリの起動回数が減る可能性があります。また、アプリを起動するという行動に移らなかったとしても、利用者へは良い体験を提供できている可能性もあります。グッドタイミングで的確な情報が通知されれば、それで満足ということもあり得るわけです。

通知が利用者に届くことで、下図のように様々なリアクションが考えられます。中には測定が難しいものがあります。

ウェアラブルに通知が届いたときの利用者のリアクション

ウェアラブルへのアクション
ウェアラブルデバイスに表示される通知 UI をタップして詳細を確認したり、操作をする場合。デバイスにインストールされているアプリへの直接的なインタラクションであることから計測がしやすい。
スマートフォンへのアクション
通知がキッカケでスマートフォンを開いて何か操作をする場合。ウェアラブルへは目を向けずに、スマートフォンへ操作を移るといった行動が考えられることから、複数台を跨いだ『ジャーニー』としてアプリの評価が必要になる。
環境へのアクション
通知をみて近くのお店へ入ったり、駅に向かって少し早歩きを始めるといった、オフラインでの行動の変化を促す場合。クロスチャンネルでのデータ分析でオフラインの行動影響を確かめることができるかもしれないが、すべては判断できない。
ノーアクション
具体的なアクションにならない場合。通知の内容に満足することもあれば、期待はずれだったり、今は必要としてないこともある。利用者の頭の中で考えていることなので、インタビューをはじめとした調査をしなければ理解が難しい。

ミクロとマクロ、数値と質

ダウンロード数、起動回数、利用頻度、滞在時間、ゴール達成率だけでアプリの成功を測ることがますます難しくなります。様々なデータポイントをみて評価しなければならないものの、数字にすら表すことができないものが増えてくる可能性があります。ひとつのアプリ、ひとつの製品としてではなく、サービスという大きなスコープで評価する必要があります。

How many connected devices do people use?

今はマルチデバイスが当たり前の世界です。Google が提供する Consumer Barometer によると、インターネットに繋がるデバイスを 2 台以上もっている日本人は 67%いるといわれています。複数のデバイス、オフラインも絡んだ 利用者による同時体験は未来の話とは言えなくなりましたし、IoTの普及により無視できなくなるでしょう。ひとつのアプリの評価は難しくなるかもしれませんが、サービスとしての体験の設計と評価という考え方がしやすくなってきたといえます。アプリの利用時間が横ばいだったとしても、カスタマーサービスやヘルプへのアクセスの低下していたり、生産性(利用者のゴールの達成)が向上しているのであれば、サービス全体の体験は良くなっていると見なすことができるはずです。

様々なデバイスや環境を見据えたマクロの視点のカスタマージャーニーマップが必要と同時に、タッチポイントにフォーカスしたミクロな視点の瞬間の理解と共有も必要になります。

スクリーンという小さな四角い世界に留まらない、利用者が環境とどのように関わっているのかを理解することが課題になります。設計している製品ひとつでの評価がますます難しくなりますし、すべて数値化することもできません(少なくとも今のところは)。『質』は無形で捉えいにくい存在ですが、そこを評価対象として含めることがマルチデバイスの世界では不可欠になるでしょう。