情報過多時代に必要な知識の整理を始めよう

情報収集しているのに自分の知識になっているような気がしないのは、自分がもつ情報をつなぎ合わせて知識に変えるプロセスを経ていないからだと思います。

情報過多時代に必要な知識の整理を始めよう

情報をもつことに意味はない

20 年くらい前だと情報を手に入れることすら敷居がありましたし、「情報を持っている」だけでも価値がありました。Web が広く使われるようになる前の時代に生きていた方であれば、情報を見つけることの苦労は分かると思います。

今はどうでしょうか。
もはや RSS リーダーとかを使って情報が集まる場所を作る手間すら必要ありません。 Twitter や Facebook を立ち上げるだけで波のように情報が押し寄せてきます。毎分 570 web サイトが公開されるくらいのスピードで情報が増えているわけですから、「情報を持っている」ことに大きな価値がある時代ではありません。今持っていなかったとしても、検索すればたくさん出てきます。

もちろん、web で流れている情報がすべて質の良いものではないですが、それでも良い情報はたくさん見つけることができます。Web から離れて書籍を読もうといった論調がありますが、その書籍ですら一生かけても読みきれない量があります。

情報過多による疲れも問題ですが、個人的にもっと問題だと思っているのが情報過多によるインプットの勘違いです。流れてくる情報があまりにも多いので、Like 、ブックマーク、流し読みをして処理してしまいがちです。ただ、それだけだと情報を消費しているだけであて、自分の知識になるインプットにはなりません。

情報を手に入れることだけでも価値があった時代に生きていた人にとっては情報に出会っただけでインプットを思ってしまうかもしれません。今の時代だとそうしなければ情報に流されてしまう。無視しても良いかもしれないけど、見逃してしまうのが怖い人(FOMO)もいると思います。

情報をもつことに大きな意味を失った今だからこそ、情報を自分の知識に変える必要があります。

情報のインプットから知識のインプットへ

gapingvoid で公開されている知識の視覚化を目にしたことがある人はいると思います。データに意味をもたせたものが情報。その情報をつなぎ合わせることによって知識になることを分かりやすい図で表現しています。

情報をつなぎ合わせることの重要性は、テスラ CEO であるイーロン・マスクも 第一原理(First Principles Thinking)を通して説明しています

知識とは意味のある情報を繋げること

情報収集しているのに自分の知識になっているような気がしないのは、自分がもつ情報をつなぎ合わせて知識に変えるプロセスを経ていないからだと思います。gapinvoid の図は非常に分かりやすいですが、自分なりに解釈したのが下図になります。

知識の発見からアウトプットするまでのプロセス

  • Discovery : 情報を見つける(記事、書籍、動画などを発見する)
  • Capture : ブックマークしたり、あとで読むサービスに保存する
  • Consume : 情報を見たり読んだりするだけでなく、ハイライトなどもする
  • Process : 自分の言葉で解釈したり、過去の情報とつなぎ合わせる
  • Output : 育てた知識を仕事に活かす

このなかで特に難しいと感じているのが「Process」の部分。メモにタグ付けしたり、独自のルールで整理したフォルダに情報を保管していましたが、うまく運用ができませんでした。運用・整理に時間をかけ過ぎて、肝心の知識がたまっていかなかったと言えます。情報の関係性はフォルダのように綺麗な階層にならないですし、タグは注意して使わないと運用が追いつかなくなります。

いろいろ悩んだ末、自分の知識管理として使っているのが Roam Research です。

Roam Research

知識を整理するアプリの出現

Roam Research は、一見どこにでもあるノートアプリですが、Wiki のようにキーワードを繋いで情報を自由に整理できるのが特徴です。単にリンクで繋げるだけでなく、どの部分でどのようにリンクされているか視覚的に確認できるのも利点です。情報と情報が繋がって知識になる様子が手にとるように分かります。

Roam Research をはじめ、知識を整理するためのノートアプリは昨年から幾つか出てきています。Roam Research 以外にも似たようなコンセプトで知識を整理することができるツールが幾つかあります。無料から使えるものから、ローカル環境で使えるものまでいろいろあります。

無料で使えるサービスがあるなか、有料の Roam Research を使っている理由が 4 つあります。だから Roam Research を使ったほうがが良いと言えるほど強力な理由にはなりませんが、迷ったときのポイントになるかもしれません。

  • ページとページがどのようにリンクされているかすぐ分かる
  • ページを構成する個々のブロックにもリンクできる
  • ページとブロックの組み合わせ次第でいかにも情報が整理できる
  • Query など少しマニアックだけど使える機能がある

Roam Research の Graph View

知識の整理を続けていると次第に脳回路のような視覚化がされていきます
※ こうした視覚化は上記した類似サービスにもあります。どれも似たり寄ったりで今のところ実用性は高くないですが、眺めるには面白いです。

今まで気づかなかった情報の繋がりが見つけやすくなりましたし、「これはどういう意味だろう」「この辺を深掘りするのはどうだろうか」といった探索型のメモがしやすくなりました。フォルダに縛られることなく情報整理できますし、「どういうフォルダ構造にしようか」といったところに悩まなくて済むのも助かります。

Roam Research を使い初めて 3 ヶ月経ちますが、ココに行けば整理された自分の知識があると言える状態になってきましたし、記事執筆のような個人活動から、調査やプランニングといった仕事にも活かしています。そして何よりも情報を集めるだけといった状態が減ったのが嬉しいところです。

最近出てきたツールを使わなくても Evernote などを使って情報整理することはできます。ただ、最近出てきているツールは「知識」にフォーカスしているところが特徴的です。どのツールも真っ新な状態から始まるのでとっつき難いですが、情報を自分の知識に変えるにはどうすれば良いか考える機会を与えてくれるはずです。

今回紹介したツール以外で試してみたい方は、手軽に始められる知識整理ツールいろいろを参照してください。

Yasuhisa Hasegawa

Yasuhisa Hasegawa

Web やアプリのデザインを専門しているデザイナー。現在は組織でより良いデザインができるようプロセスや仕組の改善に力を入れています。ブログやポッドキャストなどのコンテンツ配信や講師業もしています。