オトナがwebを殺さないために

私と同じように、web の可能性から説得しなければならなかった人たちが、「分からない」「今までと同じで良い」と言っていた上の世代と同じ態度になってきているのを見かけることがあります。

「分からない」が将来を潰す

「インターネットってどうせ流行りでしょ?」
「FAXのほうが良いじゃないですか」
「今までのやり方で上手くいっているから必要ない」

小さな頃から web を当たり前のように使っていた人には信じられないですが、昔はそんなことを言っていた人がいました。企画提案をするにしても、過ぎ去っていく流行ではないことを説得するところからスタートすることもありました。

若い頃は昔の価値観にしがみついている人たちにどう伝えれば良いか分からなくて苦労しましたし、自分が『オジサン世代』になったら絶対こうなりたくないと思っていました。自分には分からないから、周りにはさせないみたいな態度が成長を遅れせてしまうのではないでしょうか。

『オジサン世代』になってしまった今でもそう考えながら仕事していますが、周りが次第に閉鎖的になっているのを見ると「ヤバいな」と感じることがあります。

「TikTok を使っている人がまったく理解できない」
「昔のほうがいろいろ面白かった」
「今まで通りホームページありきで考えるべきだ」

私と同じように、web の可能性から説得しなければならなかった人たちが、「分からない」「今までと同じで良い」と言っていた上の世代と同じ態度になってきているのを見かけることがあります。

スマートフォンが普及し始めた 2010 年前後にしても、デスクトップ向けの web サイトやアプリを作って成功した人たちが足を引っ張っていたところがあると思います。スマートフォン出荷台数が減り始めている今頃になって「モバイルだ!」と叫んでいるオトナもいるわけです。若い世代は IoT, AR, VR など、スマートフォンを超えた場所に興味を示しているのにも関わらずです。

では、自分は常に最先端ことを実践しているのかというとそんなことはありません。時には自分の「分からない」が可能性を潰しているかもしれません。経験を積んでいるから的確な判断を下すことができる場合があるものの、それが『成功体験』によって鈍ってしまうことがあると思います。

大人になりきれていない世代

Web は 2019 年で 30 歳になります(25周年記念の特設サイトはこちら)。人間で言えばもう立派な大人です。

私が web の仕事に携わったのは web が 10 歳くらいのときなので、子供のようなものです。当時の web は何でもアリでしたし、面白いからやるという子供のような楽しみ方をしていたと思います。Web らしさというアイデンティティもなかったので、雑誌やテレビなどあらゆる媒体の真似をしながら成長した時期です。Web が子供のような存在だったのと同じように、作っている私たちも子供のような振る舞いができた頃だと思います。

今は web も立派な大人なので、ビジネスのことを意識していますし、人や社会への影響も考慮しなければならなくなりました。面白いからやるみたいなノリが許されることもありますが、何かしらの成果を求められる機会が増えてきています。「webがつまらなくなった」という言葉を耳にしたことがありますが、ただ大人になっただけなのかなと私は思っています。

Web は大人になったけど、企画・制作などに携わっている私たちが大人になりきれていないことがあると思います。今でも web は楽しいところですし、ポテンシャルを十分に引き出していないので、やることは山ほどあります。ただ、今の『楽しさ』は子供の頃に味わった『楽しさ』とは違うものです。

大人になった web で仕事をしていくには、子供の頃の感覚だけでは不十分です。しかし、次の世代へ教えていく先輩たちが、作るのが楽しい!という気持ちが先行していた子供の頃の web の感覚そのままで教えていたらどうなるでしょう。ツールを使ってじっくりモノ作りしたいと思って大人の世界に放り出されるわけです。もちろん今はそういう感覚だけでデザイナーの仕事は務まりません。結果的に自分のデザインを感覚でしか伝えれないデザイナーを増やしてしまったのではないかと感じることがあります。

上の世代として何ができるか

2000 年前後から web で活躍していた人たちは、先輩と呼べる人たちがいません。今までなかったことを始めることが多かったですし、走りながらルールを作っていくのが日常茶飯事でした。文化や感覚など「分かっているコト」が多くて自分たちも当事者として活動していた世代が、今は「分からないコト」が増えてきて距離を置くこともあります。

しかし、分からないと遮断することは同じではありません。データをみたり、人の行動や反応を観察することで、当事者でなくても理解できるところは見つかります。手段は大きく変わり続けますが、人の根本的な心理や行動はそう大きく変わっていないので共感できるところは少なくありません。良くも悪くも年をとって知識・経験を積んでいるので、俯瞰的に物事を分析できるのはメリットだと思っています。

どうしても分からなければ、若い世代と話したりソーシャルメディアなどで交流をすることができます。Web は性別・年齢・学歴などから生まれる偏見を取っ払ってくれるのでコミュニケーションがしやすいです。そもそも私はそういうオープンな web が好きで始めました。Web にしても携わる私たちにしても、その感覚は忘れないでほしいと願っています。

筆者について

Photo of Yasuhisa Hasegawa

組織の一員となるスタイルで一緒にデザインに関わる課題を解決するといった仕事をするなど、チームでデザインに取り組むためのお手伝いをしています。各地でデザインに関わる様々なトピックで講師をしています。