脱PVで見えてくるコンテンツの質

PVが人気を証明しているとはいえない

ページビュー(PV)は、とても気持ちいい数値です。自分が作ったコンテンツの反応を分かりやすい数値で示してくれます。また、多くの広告モデルが PV を基に価格が設定されているので、ビジネスに直結している数値といえると思います。しかし、PV が高いから、訪問者が満足しているとは限らないですし、顧客ロイアリティに繋がっていないかもしれません。そこで、ソーシャルメディア … という意見もありますが、そこの評価指標も RT 数、Like 数といった PV と似たような数字に留まっている場合があります。

特にブログのようなメディア配信をしていると、PV 至上主義になりがちです。PV を稼ぐために釣りタイトルを付けたり、手軽なお菓子コンテンツで、人を集めようとしてしまいます。もちろん、それをひとつの『戦略』といってしまえば、そうかもしれません。しかし、それで欲しい読者が獲得できるのかというと、疑問を感じることがあります。

Pew Journalism Research Project より抜粋

1度訪問するだけの『一見さん』をたくさん獲得できたとしても、「この人が書いている、このサイトが良い」「こういうコンテンツがあるから、好き」とまで思ってくれる人は少ないかもしれません。2014 年 3 月に発表された Pew Journalism Research Project の調査によると、ソーシャルメディアや検索から流れてきた読者の滞在時間は、サイトを直接訪れた人より格段に短いそうです(レポート PDF )。ソーシャルメディアでたくさん反応があったとしても、読んでいるかどうか、次のアクションに繋がっているとは限らないというのが分かります。

便利屋で終わるか、クラスの人気者みたいなステータスで終わるか、少し地味でも信頼・信用というブランドを獲得するか。これらのギャップは小さいようで、とても大きいと考えています。

昔は PV を見る以外どうしようもなかったところがありますが、今は様々なデータを取得できるようになりました。これにより、PV に頼らずコンテンツの評価ができるようになってきています。Unworthy のようなニュースサイトは、独自の指標を確立して PV を見て評価をしなくなりました。

Unworthy のように、独自の指標を作り出すということは難しいかもしれませんが、PV が高いコンテンツが顧客ロイアリティに繋がっているとは限らないということを体感しておく必要があると思います。PV が高い『人気コンテンツ』が、自分が繋がりたいと思っている人たちに届いていないということが分かると、どのようなコンテンツを出して、評価すれば良いのかも次第にみえてくるはずです。

データを重ねるとみえてくる課題

ページビューを見ないようにするのではなく、他の指標を重ねることで、コンテンツの『質』が次第に見えてくるようになります。例えば滞在時間や直帰率は、ブログを運営しているのであれば見ておきたい数値ですし、Google Analytics のイベントなどをつかって利用者の行動を観察するのも手段です。私のサイトでは、読者が最後までスクロールしたかどうかをみています。

こうした指標を、過去 3 ヶ月のトップ記事に割り当ててみると、PV が高いだけでが人気に繋がるわけではないということ見えてきます。

PVトップ10記事と、読書傾向
記事滞在時間直帰率スクロールソーシャルグループ
1. なぜ緊急時になるとデザインが崩れるのか 13:3625.77%78.80% 30
2. ポストPC時代のWebで注目している2014年のキーワードか 40:0322.50%71.61% 11
3. 今CMSで本当に必要とされているもの 03:5377.27%39.79% 17
4. カードUIとコンテンツのパッケージング 09:3427.58%69.45% 10
5. ところでコンテンツは誰がする仕事なの? 07:3238.66%58.12% 17
6. 嫌われないスマホサイトを作るための第一歩 03:0283.48%45.64% 7
7. メッセージとカードとUIの行方 06:0031.70%65.12% 6
8. 作れることは正義である 15:3545.17%51.04% 21
9. OmniGraffleを便利に使うあれこれ 05:5424.53%66.20%
10. CMS導入前にしておきたい質問 04:2322.51%53.41% 20
  • ソーシャルは、右から , , です。
  • グループは、Facebook で運営している非公開グループでの Like 数です。
  • ソーシャルメディアで反応が高ければ滞在時間が高くなるわけではない。
  • はてブと滞在時間は直結しない。高いと低くなることもある。
  • セミナーのレポートは以前からタイトルを工夫するなどしているが、直帰されやすい。
  • グループで評価が高ければ、滞在時間も比較的高い人気記事になる。
  • 昔の記事でも Tips であればアクセスが高いが、スクロールをあまりしない、一見さんになる。
  • 記事の長さとスクロールされる割合に関連性はない

トップ記事では見え難いですが、トピックをニッチな方向へもっていったり、明確な読者像を描いている場合に、PV だけでは判断できない読者の反応を見つけることができます。毎回、反応が薄くて泣きそうになる映画レビュー。12月に配信したゼロ・グラビティは、アクセス数は非常に少ないですし、ソーシャルメディアでもあまり反応がありませんでしたが、滞在時間は 06:49 と比較的高く 7 割の方が下までスクロールして読んでいる『人気コンテンツ』です。

4 月上旬に配信したばかりの Webらしいニュース配信UIとは は、Web デザイナーという広い読者設定ではなく、ニュースアプリを開発している人たち、ニュースの今後に感心がある人たちという、読者像を狭めて執筆しました。結果、09:47 という高い滞在時間になり、Facebook のような半分閉じた環境で、知っている人たち同士が共有するという情報の広がりを見せました(結果、はてブの数と大きな開きがあります)。

滞在時間が PV の代わりになる指標になるとは言い難いですし、実際のところ、PV も含めた他の指標を重ねて評価しなければいけなくなると思います。ただ、滞在時間は顧客ロイアリティと密接な繋がりがあると仮説することができます。

新規と再訪問者では滞在時間が 4 倍違う

例えば私のサイトでは、新規訪問の方の滞在時間が 01:53 なのに対し、再訪問者は 08:08 と、4 倍の差があります。記事ページから次の記事をみた割合も集計していますが、それも 2 倍の差があります。2 回以上訪問している読者にとって、「ここには何かある」というイメージが生まれてきている結果ではないでしょうか。長くいるから、サイトのことを思い出すでしょうし、書いた人のことも(少しばかり)思い出してくれるのだと思います。

今回、個人ブログの集計結果を紹介しましたが、企業にも同じことがいえます。面白いコンテンツをつくっても、配信した企業は忘れ去られ、コンテンツだけ一人歩きすることがあります。それではもったいないので、まず滞在時間や直帰率をみて、評価されているコンテンツは何かを PV 以外でみるという習慣をつけると良いでしょう。そこから、サイトに合った評価指標が見えてくるかもしれません。

Yasuhisa Hasegawa

Yasuhisa Hasegawa

Web やアプリのデザインを専門しているデザイナー。現在は組織でより良いデザインができるようプロセスや仕組の改善に力を入れています。ブログやポッドキャストなどのコンテンツ配信や講師業もしています。