今だから出来る新しい紙媒体向けサービス
電子書籍が注目を集める今日ですが、印刷もここ数年間変わり続けています。例えば名刺印刷をみてみるとどうでしょう。年々印刷の質が上がっているのはもちろんですが、値段も下がり続けています。PDF や Illustrator ファイルを Web サイトでアップロードするだけで作業が終わるなんて数年前では想像しにくかったですが、今や当たり前です。
紙媒体は Web に比べるとスケーリングに乏しいです。ユーザー (読者) が増えるとその分印刷コストがかかります。初版でたくさん印刷出来ればコストを落とすことが出来ますが、なかなかそうはいきませんし、印刷の回数が増えればその分コストが嵩みます。しかし、ニッチな市場ではどうでしょうか。ある程度、読者数が想定出来るのであればコストを抑えつつ利益を上げることが出来るかもしれません。一昔であれば、紙媒体をもつにはそれなりに資金と印刷ボリュームを必要としましたが、近年の印刷コストの低下に伴い、ニッチな市場に向けた新しいビジネスも生まれています。
自己出版・制作サービスの老舗といえば Lulu というサービスがあります。2002年から運営されているこのサービスは今でも成長を続けており、年間50万タイトルの書籍が出版されています。書籍(というより最初は冊子みたいでした)からスタートした Lulu は、現在カレンダー、フォトアルバム、電子書籍の販売もサポートしており、Stanza や Sony Reader のような eBook デバイスに向けた配信も可能。自己出版の印刷の質は低いと考えるのは昔の話で、ご覧のとおり自分が実現したい本の形をオンラインから手軽に出来ます。高い品質を追い求めたらキリがないですが、ちょうど良い(満足出来る)質の書籍を作れるようになっています。
雑誌を自己出版したいという方向けに MagCloud というサービスがあります。印刷からオンラインショップ経由の雑誌の郵送まで MagCloud が引き受けてくれます(もちろん、発行者にも必要な分だけ郵送してくれます)。1ページの印刷につき20セントを MagCloud は収益として得ています。地方誌からファッション誌まで様々な雑誌を購入することが出来ます。リサイクル紙を使って印刷されているという点も良いですね。
書籍、雑誌とくれば、当然新聞もあります。Newspaper Club は発行部数が少ない新聞印刷を行うサービス。わずか 4 部から 5000 部まで選択範囲を豊富に揃っています。新聞といっても Folksy のようなカラフルでデザイン性の高いものも少なくありません。ちょっとしたイベント向けに黒白の新聞 (12ページ) を 300 部作って 4万7千円。お手頃価格です。
いろいろ Web でコンテンツを出したほうが効率が良い点がありますが、読者層を定めれば紙のほうが効果がある場合があると思います。例えば、案内広告が良い例でしょう。もちろん、検索出来る便利な案内広告は Web にたくさんありますが、立ち寄ったカフェに置いてある新聞に自分が身近に感じる案内広告があるほうが効果があるでしょう。コンテンツを誰に伝えたいのか定まってさえいれば、Web だけでなく紙媒体で配布する手段が個人にもあるというのは素晴らしいと思います。
印刷コストが下がっているからこそ、従来のビジネスモデルに固辞することなく、低価格化を利用して新たな顧客層にリーチしているサービスが増えているのが今の印刷業界の姿といえるでしょう。紙媒体で何かコンテンツを配信したい方も少ない部数から始めれるので配信チャンネルとして考慮出来るのも嬉しい点です。印刷の世界はこれから縮小するというよりかは今また新たな進化を遂げるための絶好の機会を迎えたといえるでしょう。
The photo is taken by Wonderlane