共創のためのビジネスモデル
前回の共創に必要な価値観という記事で、幾つかある共創のタイプ、そしてその特徴について紹介しました。市場に新たな価値を生み出す鍵といわれていますが、IDEOの Tim Brown も共創が今後の経済に必要だと考えている方のひとりです。Ideas Project のインタビューシリーズに彼が出演しているのですが、そこで様々な興味深いアイデアを提案しています。
よいサービスとは、消費者/利用者が何もしなくて済むものではなく、消費者が参加したくなるようなものを指すと Brown 氏は説明しています。
参加型の経済メカニズムを専門用語でいうと参与型経済 (Participatory Economy)と言います。労働者と消費者が共創するモデルで、資本主義経済とは異なりますし、すべてを中央化して平等に分け与える社会主義モデルとも異なります。80年代〜90年代にうまれた用語ではありますが、それ以前から参与型経済を基にしたビジネスは幾つか存在します。
例えば South End Press という出版社では、会員が企画や編集など出版プロセスに参加することを促進するモデルを 70 年代から行っています。カナダのインディーミュージックレーベル G7 Welcoming Committee は、Propagandhi というバンドメンバーによって設立されており、参与型経済のサポーターであり実践もしているそうです(詳細がよく分からないですが)。
音楽を例にして Brown 氏は語っていますが、お金の動きだけを『経済』として捉えると下降しているのかもしれませんが、音楽が聞かれる機会や作る人の数はここ10年で大幅に増えています。音楽が作られ、そして配信されるモデルも、従来の直線上のプロセスからネットワーク型に変わりつつあります。従来のモデルに沿った測定方法でお金の動きを把握するのが困難なので、新たな測定方法が必要になります。ネットワークやそれぞれの関係、そして信頼性や趣旨をどう数値化して『貨幣』にするのかが今後の課題になりますし、それにはネットワークやコミュニケーションを理解することが鍵になるでしょう。その答えを見つけるのに参与型経済は不可欠になるのではないかというのが Brown 氏の考えです。
彼のインタビューを聞いて感じるのは、デザインはひとつのソリューションを提案するだけでなく、利用者を補助したり助力するための何かが必要だということ。ウェブサービスでは当たり前のように公開後も徐々に改善プロセスがありますが、利用者へ助力するにはウェブサービスのような柔軟かつ早急な動きは他のシーンでも不可欠だと思います。