ピクサーから学ぶクリエイティビティの秘密

Early on, all of our movies suck.

Early on, all of our movies suck.
我々の映画は最初はすべてヒドイものである。

これは「 ピクサー流 創造するちから原書 Creativity Inc.)からの一節。ピクサーといえば、最初の長編映画「トイ・ストーリー」以来、ずっとヒットを飛ばし続けている映像製作会社。CGのクオリティもさることながら、彼らが作り出すユニークな物語が人気の秘密だと思います。そんなピクサーが「最初はすべてヒドイ」と本中では断言していますし、「ヒドイ状態からヒドくない状態にすることが仕事」とまで言い切っています。映画を見ている立場からすると信じられない言葉ですが、デザインを含めたクリエイティブな仕事に共通していると思います。

Webデザインにおけるデザインカンプが良い例ですが、最初からほぼ完璧なものを求められることがあります。これはクリエイティビティとは雷が頭に落ちてきたかのようなヒラメキによって生まれるという勘違いからきているように思えます。クリエイティブな人に頼めば良いアイデアがひらめいて、素晴らしい作品を出してくれるという期待からでしょう。こうした考えがある人には「調査が必要です」「模索するためのプロセスが必要です」という言葉は外国語のように響くかもしれません。

クリエイティビティとは、ヒラメキでもなんでもなく、模索を繰り返しながら出せる状態まで進めるプロセスのことを指していると思うことがあります。ピクサーでは独自のピアレビューを設けたり、チームで話し合える環境作りに力を入れているそうです。これもひとつのアイデアに固持することでプロジェクト全体を犠牲にすることを避けるためであったり、早く失敗することで模索や実験をしやすくするためです。

最初から良いものは作れません。私も最初のデザイン案はヒドイものばかりです(1週間前に作ったものでも振り返るとため息が出るものもあります)。最初から良いものが作れないから「3案出してください」とか「やっぱり直してください」といった言葉が出てくるわけです。

前回、早く作るだけでなく、途中で良いので早く見せることも重要と書いたのも、それがクリエイティブな仕事には必須だと考えているからです。もし模索や実験を許さないプロセスであれば、それは少しずつ変えていかなければ、仕事の価値、デザインの価値というのは上がることはないのかもしれません。


あとがき
ピクサー本は、ピクサーの歴史を時系列で順に振り返りたいという人にはオススメしませんが、クリエイティブをどのように管理し、成長していくのかという部分に興味がある人にとっては良書ですよ。

Creativity Inc ピクサー流 創造するちから

Yasuhisa Hasegawa

Yasuhisa Hasegawa

Web やアプリのデザインを専門しているデザイナー。現在は組織でより良いデザインができるようプロセスや仕組の改善に力を入れています。ブログやポッドキャストなどのコンテンツ配信や講師業もしています。