ワークショップで気をつけている5つのコト
講演が難しいのは、限られた時間で自分の想いを伝えなければならないこと。誰でも共感できるように視野の広い話をする傾向がありますが、具体性に欠けたり、自分の仕事に関連付けさせるのに苦労する方も出てきます。しかし、だからといってノウハウを伝えるだけであれば、浅い Tips になったり、その場でなんとなく満足して終わりという危険性もあります。
そこで、最近はワークショップにも力を入れるようになりました。講演で伝えている想いの真意を、追体験を基にじっくり学んでもらうことが出来るのが魅力です。昨年から続けているコンテンツ三部作、そしてデジタルハリウッド大学院で行ったプロトタイプの講座を通して学んで、実践しているワークショップを開催する際の注意点をまとめました。
アジェンダがすべて
ワークショップなのでアジェンダがないというのはありえないですが、アジェンダを詳細まで詰めおくのと、詰めておかないとでは大きな差がでてきます。前半の講義で話したことを実践するという前提で始めるワークショップですが、全員が講義の内容を完全に理解しているわけではありません。むしろ、ワークショップを通して講義の内容を理解してもらうわけですから、「さぁ始めましょう」と野放しにすると、迷走としてしまう参加者も少なくありません。
そこで、ワークショップを気持ちよくスタートしてもらうために、必ず以下の項目を入れるようにしています。
- 目的(可能な限り短く明確な文章で)
- 成果物(具体的かつ分かりやすく見せる)
- 時間(進め方も伝えるとなお良い)
ワークショップをしている間、いつでも内容・目的が確認できるようにペライチのアジェンダシートを配布するようにしてします。
考える道筋を示す
ワークショップなので自由に考えてもらいたいという想いはありますが、それがかえって難しくしまうことがあります。自由にしてしまうことで、自分たちが間違ったことをしていないかという不安に駆られる場合もでてきます。
講義の際に考え方を教えている場合でも、ワークショップのシナリオ上でどのように進めたら良いかという例を示すようにしています。道筋を示すことで、進め方が明確になるだけでなく、どのように工夫すれば良いのかも分かるようになります。
制約を設ける
ワークショップの参加者の多くは、クライアントと仕事をしているプロフェッショナルな方。ワークショップという『疑似体験』でも、ついつい仕事と同じように捉えてしまいます。目的を明確にしても、本当の仕事では目的以外に事前に考えなければならないことが山ほどあり、現実と照らし合わせてしまい、手を動かすことが出来ないこともあります。
ワークショップをする側が、下準備として考えるための材料を提供するのは当然ですが、「これは今は考えなくてよい」という枠組み(制約)を築くことも重要です。いろいろ考えさせてしまうことで、ワークショップの目的にフォーカスできなくこともあるので、制約が目的を明確にさせる役割を果たします。
発表であり対話
成果物の発表は、ワークショップにおいて柱のような存在です。発表者に成果物の内容を説明してもらうのはもちろんですが、批評を必ず行うようにしています。成果物のどの部分がユニークなのか、発表者の考えがどのように成果物に反映されているのか、そしてどの部分に注力することで成果物の質を上げることができるのかを話すようにしています。
また、時間があるときは、発表者に質問をすることもあります。「なぜ、そのようなアプローチをとったのか」「どうやって、その考えに行き着いたのか」といった Yes / No では回答できないような質問をして、成果物の真意を共有してもらうようにしています。発表時間に質問できないことが多いので、ワークショップの最中にグループに聞くこともあります。
まとめで繋げる
ワークショップは手を動かすので、それだけで満足できる場合が多いわけですが、ワークショップは楽しかったけど結局何のためになるのか分からないということもあります。メソッドは体感できたけど、仕事に繋がらないのであれば意味がありません。
今すぐ使えなかったとしても、自分たちの仕事に応用できるヒントを見つけてもらうのがワークショップの真の目的です。そこで、ワークショップが終わった後に「まとめ」として、ワークショップの内容を深めるための講義するようにしています。