成果物のUXにおいて、Jesse James Garrettが話しているようにエンゲージメントを与えるということが重要になってくると思います。それぞれのサイトの趣旨によっても変わってきますが、長谷川さんはどのようなアウトプットの仕方でエンゲージメントを与えようと考えますか?また、その際、気を付けていることや長谷川さんが持っている方法論等があれば教えてください。

from: toshi

ここ数年、デザインやマーケティングなど様々な分野で耳にするようになった「エンゲージメント」。愛着心や絆など、分野でによってニュアンスが微妙に異なるこの言葉ですが、ここで言う「エンゲージメント」とは「積極的に行動する状態」「集中・没頭出来る状態」を指します。アプリケーションやサイトを利用において、利用者が意味のある体験をしたかどうかを測る測定値としてエンゲージメントに注目する場合もあります。エンゲージメントのある体験とは楽しいだけでなく、生産的でしょうし、簡単と感じる場合もあるでしょう。

楽しい時間を過ごしているとき、自分にとって意義のあることをしているときは、集中力が増しますし、時間がアッと言う間に過ぎてしまう感覚があります。こうした心理状態を英語では「In the Zone」と呼ぶことがあります。日本語訳すると「無我の境地」といったところでしょうか。スポーツ選手が例に挙がることがありますが、無我の境地とは以下のような状態を指しています。

  • フォーカスが絞られている
  • 明確なゴールのために機敏な反応をする
  • 余計な知覚や考えが取り除かれる
  • 自意識過剰ではなくなる
  • 自分に主導権があるように思える

人が「無我の境地」に入り、ゴールと向かい合うことでエンゲージメントが生まれるわけですが、これをそのままデザインに応用することが出来ます。つまり、上記に書かれている状態に人が入りやすい状態を作り出すことでエンゲージメントを助長するわけです。スクリーンサイズが小さいモバイルアプリケーションで上記の状態になるように様々な工夫がなされています。

例えば Google の Web 検索を見てみましょう。最初は検索ボックスが表示されているだけですが、文字を入力しはじめると検索したいキーワードを予測して出してくれたり、的中率が高そうな他の検索キーワードを提示してくれます。入力後に検索結果が表示されるわけですが、目的に辿り着きやすいようにサイト名だけでなく幾つかの情報が最小限ですが丁度良い量で表示されています。最初の検索ボックスがあるページがシンプルなのはもちろんですが、そのあとの行動の邪魔にしないためのシンプルを作り出す方がエンゲージメントにおいて重要になります。

Google モバイル Web 検索のスクリーンショット

上記に書いた無我の境地の条件を Google の Web 検索に照らし合わせてみると:

  • 目的の情報を探すというゴールにフォーカスしやすい
  • 高速に検索結果がかえってくる
  • キーワード検索の邪魔になる要素はすべて隠す
  • 自分でいろいろ考えなくても幾つか提案される
  • 検索をやり直したり、ページ観覧が自由に行える
人が没頭するという意味でのエンゲージメントをより深く理解したい方は Mihaly Csikszentmihalyi の著書『Flow』がオススメです。

エンゲージメントとカタカナ文字で書かれると分かり難いですが、重要になってくるのが利用者が自分に主導権があると感じてもらうために何をしているかということです。目的のための道筋が見えていて、ゴールへ着実に進んでいるのか分かる実感を与えているか。ちょっと分かり難い部分、エラーが発生したときに軌道修正が出来るような工夫ななされているか。エンターテイメントでも、効率化ツールでも何でもいいですが、何か自分が作り出しているという感覚をもたせることが「エンゲージメント」に繋がるのでしょう。

Google の Web 検索は、溢れるほどの情報を利用者に放り投げて迷わせるようなこともしませんし、様々な機能を紹介して道筋をあやふやにすることもありません。検索する利用者に主導権があるだけでなく、目的を達成するために集中しやすい環境を整えています。

エンゲージメントの工夫はモバイルアプリケーションやゲームに注目するとヒントが幾つか出てきますね。また、エンゲージメントの与え方も明確なインターフェイスで没頭出来る環境を提供するものから、サービスに慣れてもらいながら徐々に入り込ませる手法もあり様々です。どのようなデザインをするにしても、まず無我の境地に入る条件に注目して、いろいろアイデアを広げて行くと良いでしょう。