デバイスに囚われないスマートなコンテンツが必要な理由

コンテンツに触れることができる場は今後ますます増えていきます。利用者が賢く情報を選んでいるからこそ、コンテンツそのものもスマートにならなければいけません。そのためにはスクリーン上に見えているものだけ作るという考えを改めなければいけません。

データと組み合わさることでストーリーがスマートに伝わる

たとえ小さな市場を狙ったとしても競争が激しく、せっかく作ったコンテンツはすぐに埋もれてしまいます。また、増え続ける膨大なコンテンツを受け取れる容量をはるかに超えてしまったため、情報の受け皿を小さくしている方もいます。コンテンツ供給は膨れ上がる一方、利用者からの需要が頭打ちしている現在。良いコンテンツを作れば読まれるというわけではないからこそ、前回紹介したような配信の仕方を工夫する必要があります。

しかし、配信を工夫することだけがすべてではありません。コンテンツの設計や作り方を改善することで、狭くなりつつある利用者の窓口へコンテンツを届けることが可能になります。

今だけを見ないコンテンツ制作

昨年のコンテンツワークショップでは、今出回っているデバイスのためだけにコンテンツを作らないための基礎を話しました。Goodpatch藤井さんとのポッドキャストでは、GUI がない UI デザイン(情報デザイン)を考えなければいけない世界は近いと話しました。スマートフォンやタブレットが急速に普及してきているため、それらに最適化されたコンテンツを作りがちですが、これから考えなければいけない課題の序章にすぎません。

Google が公表している Consumer Barometer によれば、日本人は平均 2 台以上の Web 接続可能なデバイスを持っていると言われています。彼らの中には状況に応じてデバイスを使い分けている方もいると思いますが、情報アクセスのために使い分けている方は少ないと思います。「これはパソコンでしか見れないから」という理由でデバイスを切り替えなければならないのはストレスです(残念ながらそういうサイトもありますが)。ますます接続可能なデバイスが世に出回りますし、それをどう組み合わせて、どのように使うかは利用者の自由です。デバイスに囚われない流動的な体験を提供できるかが今後の課題になります。コンテンツの設計において「スマホでどう見えるか」ではスコープが小さすぎるわけです。

コンテンツをよりスマートにする

今、スクリーン上に見えているものだけを設計・制作するだけでは、後追いでの対応になるばかりか、コンテンツの制作/管理のためのコストが膨れあがるばかりです。また、利用者へコンテンツを届けるための入り口が小さく取捨選択が行われているからこそ、コンテンツのスマート化 が必須です。

コンテンツのスマート化とは、利用者の文脈を機械が解釈し、最適な形式でコンテンツを表示することを意味します。製品を購入したいと考えている人でも、初回購入の人が必要としているコンテンツと、再購入を考えている人のコンテンツは違うべきです。スクリーンサイズが小さく移動中であれば、ダイジェストでコンテンツを消費したいかもしれませんが、時間に余裕があるときであれば、特定の情報をじっくり読みたいと感じるかもしれません。

様々な構成が生まれる可能性様々なシチュエーションに応じてコンテンツそのものを組み替えることが可能になります。

時間、場所、デバイス、そして利用者の属性を基に最適化された情報を配信するというアイデア自体、新しいことではありません。大企業のサイトでは既に行っているところがありますが、どの規模のサイトでも実践しなければならない時期にはきています。よりスマートにコンテンツをパッケージングし、利用者のもとへ届けなければ存在していないのと同じといった状態になるからです。

利用者の文脈を理解してコンテンツを配信は簡単なことではありません。また、優れた CMS を実装して、全文解析のアルゴリズムやデータマイニングを積極的に行えば実現するのかといえばそうとは言えません。Web プロフェッショナルであれば、長年実践してきたことをコンテンツ設計に当てはめるだけでスマートコンテンツの基盤をつくることができます。

Schema から始める
コンテンツのスマート化といってもどこから始めたらいいか分かり難いです。そこで、まずSchemaを基にコンテンツを設計することをお勧めします。単に Schema に書かれている通りにマークアップをするのはなく、Schema がどのようにコンテンツを細分化しているのかを見て、CMS に記入させるフィールドを決めると良いでしょう。
メタデータを充実させる
<head>内に入れる情報を充実させるだけでなく、ひとつひとつのコンテンツに付随する情報を付け加えていきます。たとえ Web サイトに表示しない情報でも、関連情報やカスタマイズされたコンテンツを表示させるためのトリガーになるのであれば、ひとつのメタデータとして書き出す価値があります。
幾つかパターンをつくる
すべての文脈に合った最適な形状のコンテンツはなかなかありません。タイトルの文字数の長い版、短い版を用意するといったパターンを設計しなければならない場合があります。Facebook 向けに … といった特定のプラットフォームに偏った制作にならないように注意が必要です。

このように、利用者の文脈を解釈して配信するには、人の手間とプロによる設計能力が不可欠です。気が遠くなるような話かもしれませんが、遅かれ早かれ始めなければいけなくなりますし、早ければ早いほど後で楽ができると思います。「スマートコンテンツは1日にあらず」です。
制作・運営の予算と相談し、まずは Schema を基にできる範囲で少しずつ始めてみてください。

利用者が理解しやすい言葉遣いやストーリーを考えて制作・編集をするからこそ、素晴らしいコンテンツになると思います。しかし、それだけでは Web では情報が利用者のもとへ届き難いです。彼らの文脈を理解し、適切なタイミングで、最適化されたコンテンツを届ける必要があります。その実現のために、スクリーン上に見えるコンテンツだけに留まらず、コンテンツをスマートにするためのデータの記述・取得を考慮しましょう。

筆者について

Photo of Yasuhisa Hasegawa

組織の一員となるスタイルで一緒にデザインに関わる課題を解決するといった仕事をするなど、チームでデザインに取り組むためのお手伝いをしています。各地でデザインに関わる様々なトピックで講師をしています。