ビジネスは信頼を失いつつある

Web コンテンツは透明であるべきと 2005 年から書いている ので、透明性をわざわざ今年のキーワードにすることはないかもしれません。しかし、今の社会背景を考えると、今また注目しておきたいと思い、キーワードに選びました。

  • マルチデバイス化による情報アクセスの多様化
  • いつでも情報がアクセスできることにより、能動的な情報収集を助長
  • ネットワークで繋がっていることで共有が加速
  • 様々な情報が行き交うことで賢い消費者が増加(逆もしかりですが)

情報に敏感な消費者は Web 以前からいましたが、Web がマルチデバイスでアクセスできるようになったことで、その数は爆発的に増えてきています。こうした背景を考慮すると、従来のようなイメージ戦略だけでは、「怪しい、信頼できない」と疑う人もでてくる可能性があります。実際、それを裏付けるデータもあります。

ビジネスの信頼度の 2011 年、2012 年の比較

Edelman によるビジネスの信頼度に関する調査結果 (2012年1月)によると、ビジネスへの信頼度が世界平均で 56%(2011)から 53%(2012)へと少し低下したと言われています。特に日本は大きな変化を示しており、2011 年では 51% あったものが 2012 年は 34% へと大幅に低下しました。これは欧米の信頼度より下回る数値です。

人と人との関係において、信頼を築くにはどうしたら良いでしょう。 もちろん、身だしなみをきちんとすることも重要です。しかしそれだけでなく、相手に耳を傾けて対話をしたり、自分が何者なのかを丁寧に説明することによって徐々に信頼を築くことができると思います。ビジネスも同様で、情報 / コンテンツを透明化することにより、信頼を得ることができるのではないでしょうか。

ソーシャルメディア経由の情報信頼度が75%増加上記の Edelman の同調査にも出ていますが、信頼できる情報ソースとしてソーシャルメディアが大きな伸びを示しているのも、透明性のあるカジュアルな対話がされる場であるからかもしれません。

情報と繋がりの透明化

透明なコンテンツといっても、「こうなるよう努力しています」という声明だけではなく、一次情報を消費者が手に入れることができるくらい透明になっているところもあります。

Oisix では放射性物質に関する取り組みというページを設けて、販売している食品の安全をアピールしています。こうした、ページを作ることで信頼性を高めようと試みているサービスは少なくありませんが、中国のショッピングサイト 一亩田 は、さらにもう一歩進んでいます。一亩田では、トラッキングシステムを利用してどのように食物が育てたれ、配送されているのかを知ることができます。農場はコンピュータによって制御されており、そのデータも会員はアクセスすることができるそうです。

一亩田の農場日本語で一亩田ついて読みたい方は、
エクスプロア上海の記事「中国産有機野菜の夢を現実に」がオススメです。

このように生データを公開してまで透明性をアピールするところも出てきていますが、もちろんこれが唯一の方法というわけではありません。デザイナーが透明化を意識した考え方もあります。デザイナーであれば、コンテンツの透明化だけではなく、製品・サービスの関係をより透明なものすることも可能です。

  • 人のネガティブな体験をポジティブに変えるアプローチは?
  • 一方的なアピールになっていないか?人が求めている情報は優先されているか?
  • 自分たちが伝えたいストーリーの中に共感できる要素があるとしたら?
  • ブランドが約束していることを視覚化するとしたらなに?補足できるコンテンツは?
  • 情報アクセスするための敷居を設けて透明性を下げているものはあるか?

透明性が生む存在感

なんとも矛盾した表現のように見えますが、今後の世界では透明に近づかなければ利用者にとって存在していないと同じような状態になると考えられます。透明とは「消えてなくなる」という意味ではなく、利用者の生活シーンにいつでも入り込めるくらい透明な存在 でいられるかという意味を指しています。言い換えれば、いつでもどこでも存在しているかということです。

人と人との関係を例に挙げて信頼関係について書きましたが、ひとつ抜けている部分があります。それは「間違いを許せる」こと。人間性が出していくということは、人間らしくミスをすることもあるわけです。間違いをしても良いから様々な模索ができること、間違いから学んで改善案が出せること、β版でもまずは見て触ってもらうこと・・・こうした部分にコミュニケーションの透明化へのヒントがあると思います。

ビジネスと人と製品・サービスの距離感が変わり始めています。
その距離の変化に自分の仕事としてどう関わることができるのかを模索していきたいです。