イメージ先行を超えた有意義なブランド価値
刷り込むだけがブランドか
企業ブランドを紹介する Web サイトを見る度に「ブランドってなんだろう」という疑問が頭を過ります。
どのサイトも洗練されたイメージつかってブランドを紹介しています。時には『企画モノ』を通して面白いアイデアに乗せてブランドを紹介していることもあります。PR の意味合いも含めてブランドメッセージを訴えかけているからかもしれませんが、時に「これをすることでブランドを伝えているのだろうか」と思うことがあります。
元々 brander という焼き印をつけることを語源としているブランド。イメージ(言葉・絵・音など)から、製品やサービスを連想させやすくし、それが安心感や信頼性にも繋がると言われています。焼き印としてのブランドであれば、イメージ先行の『刷り込み型』のコミュニケーションでも十分なのかもしれません。
しかし今のブランドは、他にも様々な意味が含まれています。
例えば、企業ブランドは企業が訴えるイメージだけでは完成せず、消費者の経験や価値観も加味された、複合的な存在であるといわれています。この場合、ブランドを通して約束された価値や意味を、消費者にきちんと提供しているかが重要になります。消費者の欲求に応えるものはなにか、彼等が達成したいことはなにか、どのような課題を解決したいのか・・・こうしたことに、企業が約束したとおり応えているかどうかが、ブランド価値に繋がるというわけです。
こうした視点からブランドを紹介している Web サイトをみると、刷り込みを目的としているのであれば成功しているように見えますが、ブランドを通して約束している価値を分かりやすく見せているのか疑問に感じることがあります。
ブランドは有意義であるもの
私たちは CM が面白かったというだけで、モノを買うということはありません。また、カッコいいプロモーションサイトを見ただけではサービスを利用すると決めることはありません。こうした中、ブランドの意味を広げて評価しようという動きがあります。メディアエージェンシー Havas Media が、先月 Meaningful Brand Index (有意義なブランドリスト)を発表しました。これは世界の 700 ブランドを対象に、世界 23 カ国に住む 134,000 人の消費者の声を基につくられたリストです。
詳しくは Havas Media が作った インフォグラフィック を参照していただきたいですが、面白い数値が幾つかあります。
- 73% の消費者は、明日ブランドが消えても気にしないと応えている
- 人々の生活に良い効果を与えていると思われている企業は全体の 20%
- 54% の消費者はブランドを信用していない(Edelmanの調査結果ともリンクしています)
- 正直な対話をし、約束された価値を提供していると思われている企業は全体の 34%
かっこ良く見えること、可愛く見えること・・・イメージ作りは重要ですが、人々の生活に影響を与えるものを提供できていないのであれば、ブランドの価値はますます低くなる可能性があります。
「当たり前」に戻ってみる
上図はコンテンツ講座でよく使っているスライドです。利用者のタスク(機能的な部分だけでなく欲求も含む)を補助・達成するために必要な要素はすべてコンテンツと紹介しています。従来のように「私たちは素晴らしい」という自画自賛のコンテンツでは人に響くことはありません。消費者が、その製品・サービスを通してどのように生活が良くなるのか、タスクが達成できるのかを見せてあげる必要があります。
ブランドが提示している価値は提供していて当たり前。だから付加価値を見せていなければ差別化に繋がらない、という意見があります。しかし、それは本当にそうなのでしょうか。
私たちは「できて当たり前」「あって当たり前」と思われている部分にあまり目を向けず、付加価値のほうを優先していることがあります。コンテンツ にしても、UI デザイン にしてもそうです。あって当たり前ということになっていますが、その当たり前が消費者の期待の十分に応えていない場合があります。にも関わらず付加価値を加え続けて、消費者が本当に求めているものが見つかり難くなったり、ブランドの意味そのものを薄めていることすらあります。
有意義なブランドであり続けるには、イメージ先行のコミュニケーションや付加価値の提供ではなく、「当たり前」を振り返り、見直すことだと考えています。一画面にはいる小さなコンテンツでも、ひとつのボタンにしても、消費者視点の当たり前の水準を超えていないものはきっとあるはずです。