日本的なUXの解釈とは
おもてなしをどう解釈してますか?
UX という言葉を仕事とどう関連付けさせるのかという課題は「UXの定義と私たちの仕事の関係」という記事をはじめ何度か取り上げています。とはいうものの以前から気になっているのは「良い体験」というのは果たして世界共通なのかということです。日本的に解釈するとどうなるのか、何が共通しているのかについて時々考えています。何気に使っている外来語(例えばイノベーションとか)も日本独自の解釈で使われていることがあります。Webデザインにしても日本独自のトレンドはもちろんありますし、海外では流行していることがそのまま日本で使えるとは限らない場合があります。
よく UX の言葉の和訳的存在になっている「おもてなし」という言葉。日本人の耳にはとても気持ちよく聞こえるわけですが、この言葉をどう解釈しているのかで考え方も変わります。「モノを持って成し遂げる」という語源をもつこの言葉。意味を調べると以下のような言葉がでてきます。
- とりはからい。処置。取り扱い
- 表裏のない心で客を取り扱うこと。待遇
- 食事や茶菓のごちそう。饗応
語源を考慮して「おもてなし」を解釈するのであれば『製品・場所・サービスという見たり感じたりするモノをもってとりはからう』といったところでしょうか。しかし、この解釈をそのまま Web デザインに移行できるのかといったら疑問です。その理由のひとつとして、 Web が生まれ育った場が西洋だからかもしれません。
お客様への対応の考え方の違いは西洋と日本では若干異なりますし、多少なりとも Web サイトデザインの違いにも表れているのではないかと仮説しています。日本では手厚く対応することが「おもてなし」であり「よい対応」と考えることがあると思います。もちろん、基本的な考え方は世界中変わりないですが、西洋のほうは邪魔をしないこともよい対応と解釈する傾向があると思います。『DO NOT DISTURB (邪魔をしないで)』というサインをドアノブに欠けておけばサービスが来ないホテルと、女将が自ら食事をもって朝の挨拶にやってくる旅館。どちらもそれぞれがよい対応の仕方ですし、それぞれ良い体験があります。
ただ、Web では至れり尽くせりな対応というよりかは、ホテルのような必要なときだけ必要なサービスを提供する形のほうが UX という視点で高い評価を得れる傾向にあります。Google がひとつのよい例ですが、検索という目的以外の要素は一切省くデザインは Web では受け入れられやすいですし、それはモバイルになればより一層強まります。コンテンツサイトでも利用者が必要としているコンテンツをどう演出するかと同時に、関連している情報を適切なタイミングでどう見せるかということを注視します。
もちろん「邪魔をしない」という視点を「よい取り扱い」と解釈するのであればおもてなしになります。日本人に親しみのあるこの言葉ですが、解釈の仕方が純和風なのかそうでないかで大きく違ってきますし、そこで良い体験を提供するアプローチも変わるでしょう。
ただ、もしかすると邪魔をしなさすぎるのは日本的な UX の解釈では良いとは言切れないのかもしれませんし、その違いは今後探っていきたいところです。
国によって違う「良い体験」を見分ける項目
「おもてなし」という言葉から日本独自の UX の解釈はどんなものかを少し考えてみましたが、今後もう少し掘り下げる上で以下の4項目が鍵になると考えています。
- 言語
- 私と個人的に話したことがある方はうるさいほど聞かされている話題のひとつですね。日本人的な考え方というのは私は言葉から来ているのではと仮説しています
- 文化
- 実生活で自然に受け入れている「良い体験」という解釈は実は日本独自という可能性もあります。製品やサービスの善し悪しの基準はその国の文化からという場合がおおいです
- 社会・政治
- 人と社会の関わり方は国それぞれ異なります。私たちがどう情報と人と向き合っているのかを知ることでその国での良いという指標がみえてきそうです
- 歴史
- 他の国々とどう関わりながら今に至るのかを理解することで分かる価値観もありますね
今回、大雑把に日本と西洋と分けてしまいましたが、当然アメリカとヨーロッパ、フランスとイギリスにも大きな違いがあります。今後も日本独自の UX の解釈をみていくと同時に、Web における良い体験をグローバルで共有できるものは何かをみていきたいと考えています。