地方で勉強会を企画されている方へ
Webがなければ終わっていた
私は学生から就職までの 10 年間米国で暮らしていましたが、少し車を走らせれば地平線がどこまでも続く田舎町にいました。「これぞアメリカ」みたいな地域で暮らしたことは貴重な経験でしたが、テクノロジーと寄り添う仕事に就きたいと思う人には厳しい場所だったと思います。
Web デザインと呼ばれる分野が生まれたのは私が学生だった頃ですが、当時は先生もどう教えたら良いのか分からず、代わりに私が Dreamweaver の講義とアシスタントをしていました。グラフィックデザインを目指している人ばかりで、同じように web に興味をもっている人は周りにはいませんでしたし、勉強会やミートアップといった人と会う機会もありませんでした。
それでも続けられたのも、web ブラウザを開けば自分より数百倍すごい人が新しいモノを作っている姿を見ることができたから。文字通り森の中で住んでいましたが、常に世界と繋がっていたことが今の仕事ができている理由だと思っています(高速回線を使いたい放題だったのもプラスでしたが)。当時の web は『ニッチな世界』だったこともあって、同じような考えをもった人との交流もしやすく、誰もが次を探す開拓時代のような雰囲気があったと思います。
まだ始まったばかりという新しい分野特有の雰囲気も、孤独感を多少和らげていたのかもしれません。
地域差が出るところと変わらないこと
情報収集であれば東京に居ようが地方で居ようか関係ありません。必要なものは web アクセスができるデバイスひとつだけ。昔より海外の情報も入手しやすいので、本人のやる気次第で情報収集の質を上げることができます。
どうしようもないのが、同じような視点をもった人と出会う機会が圧倒的に少ない点です。私が米国にいて辛かったのがそこですし、首都圏に住んでいる理由も人と会う機会を増やしたいだけといっても過言ではありません。オンラインサロンやチャットなど交流手段が徐々に増えてきているとはいえ、文脈を共有しながらの会話は至難の技です。
勉強会で「やはり地方は遅れていて …」という言葉を耳にしますが、私の視点からすると単純に違うだけだと思っています。Web デザイン、UI デザイン、UX デザインなど、ラベルは同じであっても働き方は様々です。それぞれの現場で最適化しているだけであって、東京が特に進んでいるようには見えません。「東京発のデザイン思考」を地方で話したところで、役に立たないどころか、「自分たちは遅れている」という勘違いを生み出してしまうと思っているくらいです。
働き方は様々ですが、全国共通しているのは『悩み』です。下記のような疑問はどこへ行っても出てきます。
- どうすればクライアントや上司に理解してもらえるのか?
- 戻しを減らすためのプロセスは?
- エンジニアとのコミュニケーションの仕方は?
- デザインの評価をどうするか?
- 何をどこまで勉強すべきなのか?
- これからのキャリアパスは?
こうした悩みは、検索をすれば出てくるほど単純ではありませんし、Twitter などのソーシャルメディアを見てもかえって自信を失うことになります。やはり、同じような境遇の人と直接話す機会をもつことが一番ですが、その数が少ないのが首都圏以外で住むことのひとつの課題だと思っています。
いつでもどうぞ
昔から積極的に東京以外で講演を続けているのも、文脈が近い人たちが集まるキッカケを増やしたいから。米国に居たときに経験した、孤独感を減らしたいからというのがあります。たとえ私の話が役に立たなかったとしても、そのあとの交流の場で出会いがあったり、今まで話せなかったことが話せたのであれば『成功』だと思っています。
同業者が集まる口実で私が使えるのであればぜひ。以下が首都圏以外の勉強会を受けるときのポリシーです。
- 基本、移動費と宿泊費を確保していただけば OK です
- 今までもオファーしていただければ時間が許すかぎり行っています
- 主催側の意向に合わせて内容を提案できるバラエティは用意してあります
- 場数は踏んでいるので、地域性を考慮した内容も作れます
- 独特な論調ですが参加者への価値提供を優先しています
- ワークショップや社内勉強会は別途相談させてください
- 企業スポンサーが入るイベントは、交渉する場合があります
追記: 面識がない、挨拶もしたことがない、名刺交換をしていないから問い合わせしづらいと思っている方、ご安心ください。突然の問い合わせは大歓迎ですし、ぼんやりと課題を出していただければ出来ることを提案しますのでお気軽に相談してください。
イベント後に描いているイラスト