世界最初のWebサイトが教えてくれるデザインの原則

世界最初の Web サイト

4月30日は World Wide Web にとって重要な日。先日 CERN が、W3 の関連技術をパブリックドメインにしてから、20 年を迎えました。CERN 公式サイト では W3 の歴史を振り返ると共に、1993 年に公開された 最初の Web サイト もオリジナルの URL に再公開されました。

構造化された情報は未来に繋げるためのディープインプレッションになると話した「スマートフォン戦略から始まる新たなコミュニケーションデザイン

世界最初の Web サイト(上図)は、コンテンツとデザインに関する講演をする際に何度か取り上げています。例えば、2011年ロフトワークが主催した いまさら聞けない!? 企業のスマートフォン対応 で、20年前に作られたサイトにも関わらずスマートフォン対応されていると紹介しました。

シンプルなマークアップですし、装飾も一切ないので表示されて当然かもしれません。しかし、今まで私たちが作ったサイトの中で、作った当時には予測もしなかったデバイスでも情報をきちんと伝えることができるのがどれだけあるでしょうか。シェアが多いデバイスやソフトウェアに向けて細心の注意を払って構築されているものの、5 年又は 10 年先のことを考えて設計されているケースはあまりないと思います。むしろ作っては壊すというサイクルを繰り返している場合のほうが多いのではないでしょうか。

今後ますますマルチデバイス化が進むことで、全ユーザーが特殊な存在になります。わずか 2, 3 年という短い期間でも全く新しいデバイスが広まる可能性があるのが現在です。今までのようにパソコンをはじめとした特定のデバイスだけを考えて Web サイトを構築することで、情報にアクセスできない方が増えてきます。スマートフォンから PC サイトが表示されているのは今だけ味わえる『幸運』であって、今後このまま PC サイトを中心にしたサイト構築をしていると、まったく見れないという事例が増えてくるはずです。

特定のデバイスに向けてデザインするのではなく、スコープを広げたデザインのルールを生み出す必要があります。雰囲気が伝わるシステム作りがひとつアプローチといえます。元々 W3 は、あらゆるデバイスからでも情報を取得できることを前提としたネットワークなわけですから、特定のデバイスのためだけにデザインすることは、ナンセンスなのかもしれません。

USA Todayロゴを小さくしてでも、コンテンツを 1px でも上にするよう工夫された USA Today の情報設計。検索の見せ方も注目です。

もうひとつ、世界最初の Web サイトから学べることといえば、コンテンツを最優先かつフォーカスして見せることがどれだけ重要かということです。スマートフォンやタブレットではコンテンツを最優先に見せることがデザインの原則になりつつあります。この考えが、最近 PC をはじめとした大きめのスクリーンでの Web サイトデザインに影響を及ぼしています。例えば、昨年末リニューアルされた USA Today は典型的です。今までは 2, 3 列に並んでいたナビゲーションを排除し、少しでも上位にコンテンツが表示されるような工夫が随所見られます。

20 年前に公開された世界最初の Web サイトはシンプルで見栄えが良いとはいえません。しかし、Web とはどういった場所なのか?何をデザインしなければならないのか?といったことを静かに教えているように見えます。

Yasuhisa Hasegawa

Yasuhisa Hasegawa

Web やアプリのデザインを専門しているデザイナー。現在は組織でより良いデザインができるようプロセスや仕組の改善に力を入れています。ブログやポッドキャストなどのコンテンツ配信や講師業もしています。