2010 年のキーワードを事例と共に紹介するミニシリーズ。最後に紹介するキーワードは「Fun」です。楽しいという感情は様々な障害を越えてしまう可能性を秘めています。たとえ使いやすそうに見えるサイトでも楽しくなければ再度使ってもらえないかもしれません。楽しいという感情とゲームを関連付けさせて先月 WCAN で講演しましたが、大手企業も積極的に楽しいという感情を利用したマーケティングやプロモーションを行うでしょうし、Web アプリケーションにも楽しい要素がより盛り込まれることでしょう。

楽しいが体験を変える

「楽しい」という感情をうまく助長し、ブランドロイアリティを高めた例として代表的なのが Nike+

ゲームの仕組みをゲーム開発に活用するのではなく、Web サイトやマーケティングに活用する機会がより増えてきます。楽しめる要素を盛り込むことで、利用者の満足度が上がるだけでなく、全体的な使用感やエンゲージメントを向上させるきかっけを与えてくれるでしょう。

Foursquareのバッジを集めるという楽しみをロケーションサービスに盛り込んだ例として有名です。また、CauseWorld のようにゲームの仕組みとチャリティーを組み合わせた例もあります。Mintのような堅苦しいファイナンス Web アプリでもゲームの仕組みを利用して楽しくお金の管理が出来るような工夫がされています。他にも BigDoorのように Web サイトにゲーム的要素を組み込むためのサービスまで登場しています。ここまでくるとちょっとやり過ぎ感もありますが、ニーズが高いからなのでしょう。

上記の例をみると分かりますが、現状ゲームの仕組みを利用しているといっても Achievement (達成) をバッジやポイントで示しているだけに過ぎません。ゲームの視点からいえば、ポイントやバッジはゲームのほんの一部ですし、場合によって必要としない要素でもあります。ゲームの仕組みを活用するしないはさておき、人の楽しむという感情は今後より掘り下げていくべきでしょうし、そのヒントがもしかするとゲームの仕組みに隠れているかもしれません。

楽しさをデザインするという責任

商業的であることは良いことです。しかし「仕事だから」ということで、するべきことではないことを仕方なくしているのであれば改めて考えなくてはいけません: デザインにもあるマニフェスト

楽しいのメカニズムやゲームの仕組みを理解することで、長く利用してもらえる「ハマる」場所を作り出すことも出来るでしょう。人の行動や感情を左右する力をもっているデザインだからこそ、責任をもって利用しなければいけません。ゲームの仕組みを活用出来るからといって偏った活用の仕方をすると楽しませたい相手を破壊してしまう恐れがあります。

ゲームをはじめとした楽しむためのメカニズムを活用するにしても倫理はまもりたいところです。以下の項目を破って利用者 (プレーヤー) の権利と時間を侵害していないか振り返ってみてください。

  • プレイヤーのプライバシーは守られているか?
  • 無駄な労力を課せたり極端に難しいことがないようにバランスが整えられているか?
  • プレーヤーが望んでいる解答やゴールを提供できているか?
  • プレーヤーに約束した報酬をきちんと与えているか?
  • ゲームはプレーヤーの時間を尊重しているか?

まずはあなたが楽しもう

「楽しむ」をキーワードにしたのは、今後「楽しい」サービスが増えるからだけではありません。Web サイトを作る人、プロデュースする人、ディレクションする人・・・様々な人がまず楽しまなくてはいけないという意味も込められています。仕事にすぐ活用できなくても実験的に試してみたり、新しいアイデアを皆で話合うには絶好の機会です。昔からそうですが、Web には普遍的に変わらない正攻法は存在しません。「これは間違っているかも」と恐れずにまずはチャレンジしてみてはいかがでしょうか。そのプロセスはきっと楽しいものでしょうし、たとえすぐに使える知識・スキルではなくてもきっとあなたのプラスになるはずです。