2010 年のキーワードを事例と共に紹介するミニシリーズ。今回は「Talk Now」です。コミュニケーションデザインという言葉はよく耳にしますが、語られる内容は主に情報発信者側が伝えたい情報(思い)を伝える方法にフォーカスされがちです。今回ピックアップしたキーワード「Talk Now」は一方通行の伝達ではなく、双方向・多方向による対話を指しています。人と人、サービスと顧客、そしてコミュニティとコミュニティによる相互関係が対話を生み出します。デザインをする立場から言えば、対話がしやすい環境作りと仕組みを作ることが必要とされるでしょう。

瞬時のフィードバックを期待する人々

昨年の6月には6500万もの Tweets が1日に流れていました。もちろん、今現在であればこの数字はさらに大きなものになっているでしょうし、情報の流れはさらに早く複雑なものになっているでしょう。人々は今この瞬間を楽しむようになっていると同時に今この瞬間に何かレスポンスを得ることを期待しているからこそ、Twitter のようなサービスが受け入れられているのでしょう。Beagle Research Group が 2009 年に行った300人のアメリカ消費者に対して行ったカスタマーサービスに関する調査結果をみると、「今すぐ」への期待感が高いだけでなく、自分のスケジュールに合わせてはやく終わらせたいという思いが伝わってきます。

  • 30% 以上の顧客はすぐにサービスを受けることを期待している
  • 短い時間しか待ってはくれない(長くても 10 〜 20 分)
  • 80% は時間通りにきちんとサービスを受けれるなら新たなオンラインアカウントを作ることを躊躇しない
  • カスタマーサービスのための柔軟なスケジュールが組めることを期待している
  • アポ無しの来店サービスを受けても人が多いし急かされているような気分になってしまう
ShopSavvyを利用すれば、バーコードでスキャンした製品の値段を Web と近辺の店舗とで比較ができるようになります。

「今すぐ」への期待に答える企業もたくさん出て来ています。アマゾンが Thanksgiving (日本でいう正月のような賑わい方をする時期)に合わせて 公式のモバイルアプリをアップデートしました。バーコード、写真、又は声で検索できるこのアプリを利用して、出先の店にいながらもアマゾンと比較をして購入するかの判断ができます。いつでも Amazon をチェックしたり、いつでも何処でも Tweet できることが当たり前になりつつあります。私たちは「Always On (常にオンライン)」であるからこそ、それが可能になったわけですし、それゆえ「今すぐ」への期待感が高い(当たり前と感じている)のでしょう。

今を体験するサービスの出現

今すぐに何かを求める人々の傾向を上手くサービスに変換している企業も幾つかでてきています。日本でも昨年から話題になっているグルーポンをはじめとした期間限定のグループ購入サイトがその一例でしょう。1日1バーゲンをウリに 2004年から運営している Woot も有名ですね。他にも場所にチェックインしてポイントを集める Checkpoints のように、その場所にいるという「今」をサービスにしているケースも出てきました。

こうした今行動しなければいけないと思わせるサイトが昨年から次々出て来ており、いずれもそれなりの反響を得ています。人々の「今すぐ」の感覚をうまく利用してサービスに落とし込めているからこそ反響があるのでしょう。人がソーシャルネットワークに属する理由は様々ですが、その理由のひとつとしてお得情報を得たいからというのがあります。よく Twitter や Facebook のような場でお得情報がバイラルで広がっていくのは、プラットフォームがもつ瞬時性と、人々がもつ今すぐの感覚との相性が良いからでしょう。

また、音楽はますますライブが注目されているのも「今」しかない体験を欲している人が多いからかもしれません。2009年に開催された U2 のライブ生中継 を皮切りにオンラインで生の体験を提供するアーティストが増えてきています。ポップミュージックだけでなく Metropolitan Opera のような芸術の世界でもライブ提供が始まっています。Ustream にはライブミュージックを専門にしたページが設けられているのも、要望が高いからなのでしょう。

今応えられるデザイン

人々が様々な次元で同時多発的にコミュニケーションをとっているからこそ、今すぐに動き回れる環境が必要なのかもしれません:多次元化するWebと今後のWebデザイン

今すぐの対話を求める利用者が今後ますます増えてくるでしょうし、モバイル環境になれば今すぐに応えられないサイトはないに等しいと考えて良いでしょう。利用者のもつ「今すぐ」の感覚が非常にシビアだと分かる調査結果を Google がまとめています。わずか 0.2 秒、検索結果の表示が遅くなっただけでも利用者の満足度が落ちてしまいます。0.4 秒遅れてしまうと、たとえ後でパフォーマンスを上げたとしても不満が残り、人によってはサイトに戻ってこなくなるそうです。

Google がランキングの付け方にスピードを考慮すると発表したからパフォーマンスが大事だと考える方もいるかと思いますが、それ以前に人々の「今すぐ」という感覚に応えるために作り手として努力をしなければいけません。ファイルの容量やリクエスト数だけでなく、様々な方法でパフォーマンスを上げる方法があります。「様々な意味をもつWebサイトのスピード」で紹介したような、人に遅く感じさせないような演出をするだけでも違います。技術的な配慮だけでなく、コンテンツも「今すぐ」欲しい情報が手に入るような編集や精査を行う必要もでてくるでしょう。

誰もが発信者になりうる Web の世界だからこそ、お互いが思いを伝え合えるような環境作りを整えなくてはいけません。それは Web サービスを提供している企業だけでなく、1企業の Web サイトを作ったり、ブログをつくることでも同じことです。Webにおけるコミュニケーションデザインは、伝え合う接点をどう作り出すところがスタートなのかもしれません。