青森で話したUXの大事なコト
先週7月17日、青森のほうで UX をテーマにした講演をしました。青森は CSS Nite AOMORI 2007 以来、毎年来青しているので「訪れる」というよりかは「戻ってきた」というイメージがしますね。2008年前はWebマーケティング、そして2009年はコンテンツ戦略について話をしました。来青経験はあるものの、ほとんどのセミナーが講演のみでしたが、今回はセミナーとワークショップをワンセットにしたイベントでした。
UX は概念的な説明になりがちですが、講演で解説した道筋を、続くワークショップで具体的に体感することが出来たのではないかと思います。来て頂いた方全員のモチベーションが高く、ものすごい短い時間だったのにも関わらず質の高いアウトプットが出て来たのは私にとって嬉しくもあり同時に驚きでした。これこそ青森パワーといったところでしょうか。
あまりワークショップの経験はありませんが、「セミナーで言っている意味がワークショップで分かった」という声を何人から頂いてホッとしました。また機会があれば、関東・関西でも同じ内容でやってみたいところです。
ちなみに、ワークショップの概要は「不合理な人間から導き出すデザイン提案」という記事で読むことが出来ます。
特定の作業と関連付け出来ない
「UXって何の仕事をする人なの?」と聞かれると応えるのに困る方もいるでしょう。「UXはシナリオやペルソナを作る人」と考える方もいるかもしれません。IA も似たようなかんじで「ワイヤーフレームを作る人」と捉えている方もいると思います。デザインプロセスを通して生まれるこれら『副産物』は IA や UX を考えるにおいて必須なのかといえば、そうではありません。IA を専門としている方が、デザインプロセスでたまたまワイヤーフレームを作り出したに過ぎません。UX にしても同様です。専門としている方がたまたまペルソナやプロトタイプを作っているに過ぎず、それらを必ず作らなければならないのかといえばそうではありません。
では、なぜ彼等はそれら副産物を作るのでしょうか?
その理由のひとつとして、ワイヤーフレームやペルソナを作ることが制作チームやクライアントとのコミュニケーションに適しているからと判断したからです。他の手法が適しているのであれば他を採用しているでしょうし、なくてもコミュニケーションがとれると判断すればやらなくていいわけです。IA だからワイヤーフレームを作らなければならない。UX を考えるにはシナリオを作り込まなければならない・・・といった具合に作業と関連付けて言葉を解釈してはそもそもの目的を失ってしまうでしょう。
言葉の共有とはビジョンの共有
昨年開催された CSS Nite LP7 のパネルディスカッションで、「私たちは何も共有していない」と発言しました。「デザイン」にしろ「Web」にしろ人によって捉え方が違います。それぞれ視点・姿勢をもっていると思いますが、誰かが間違っているというわけではありません。違いはあって当然なのですが、問題なのはこうした言葉が共通語/当たり前の言葉として会話が進んでしまっているという点にあります。
制作にあるミスコミュニケーションの中には、当たり前と思って使っていた言葉の解釈のズレによって発生するものがあります。上記で説明した「副産物」は言葉の解釈のズレを図や絵を通して埋めるための道具と考えることが出来るでしょう。全員がまったく同じ考えをもつ必要はありません、ただ全員が同じ方へ向けるようになり、迷ったときに立ち返るもの、そしてフォーカスできるものがあれば良いわけです。言葉の共有を通して作るサイトの進む道も共有しやすくなると思います。
講演ではサイトのゴール(ビジョン)を明確にすることが重要だと話しました。UX は様々な切り口で語ることが出来ますし、単純には表現出来ないでしょう。しかし、ひとつだけ語るのであれば「ゴールを共有するために努力を惜しまない」になると思います。UX といえば「使う人の体験」「使い心地」など作り手以外へ向けた考えが多いですが、私はそうではなく、作り手へ向けた考えのほうへ重点を置きたいです。作り手が考える『よい体験』が共有出来ていなければ使い手どころの話ではないと思いますし。
UXの何が大事なのか?そしてそれをどう仕事に活かせばいいのか?
今回のセミナーは、これらのコトを振り返って考えをまとめることが出来た良い機会でした。
さいごに
スライドはいつものように SlideShare にて公開されていますが、講演のアウトラインや質問など、セミナーに関する情報は Google Wave のほうに集約されています。セミナー前に募集した質問の幾つかは応えることが出来ましたが、時間が足りなかったので他の質問はサイトの記事として執筆しようと思います。
来場してくれた方、質問してくれた方、ありがとうございました。