リモートワーク時代だからこそ非同期コミュニケーションを見直そう
リモートワークになって場所から解放されましたが、時間は解放というより拘束が増えたかもしれません。相手の時間を奪ってまで一緒の時間を過ごす意味は考えたほうが良いでしょう。
同期コミュニケーションの危険性
Slack や Chatwork をはじめとしたチャットツール、Zoom のようなビデオ会議、Miro のようなホワイトボードなど、リモート環境で無理なくコラボレーションができるツールが充実してきました。こうしたツール抜きで今のようなリモートワークは実現できなかったと思いますが、新たな問題を生み出しています。
Vox の記事「How Slack impacts workplace productivity 」によれば、Slack ユーザーは平均 200 メッセージ送信すると言われています。送信量は少なくても数百のチャットメッセージを読んでいる人は少なくないと思います。メールで起きた情報過多問題がチャットでも起きていますが、スピードや量を考えるとメールより深刻な問題になっています。
チャットは非同期コミュニケーション(Asynchronous Communication)として使えますが、リアルタイム性(同期コミュニケーション / Synchronous Communication)を期待する方も少なくありません。
同期にも非同期にもなる便利なチャットですが、リモートワークになって同期コミュニケーションの役割が強まったように見えます。元々あった問題ですが、チャットを同期コミュニケーションの場として扱うと様々な問題が発生します。
- 通知など集中力の妨害が発生しやすくなる
- 生産性より繋がっていることを優先してしまう
- あっという間に流れ去るので文脈が追うのが困難になる
- 乗り遅れると会話に参加しにくくなる
- 解釈が難しいコミュニケーションが増えてしまう
チャットサービスの中には既読マークやオンラインかどうか分かるマークが付きますが、これらは「常にチャットを追ってキャッチアップしなければいけない」というプレッシャーを与える側面もあります。
チャットはもちろん、打ち合わせ、電話など同期コミュニケーションが増える状態を「Collaborative Overload」と呼ぶことがあります。仕事の時間の大半を同期コミュニケーションに費やしてしまって、意味のある仕事をする時間ができなくなってきています。リモートワークが本格化して打ち合わせなどによって予定が埋め尽くされている人も少なくないはずです。
非同期コミュニケーションの特性を活かす
チャットは非同期コミュニケーションに使えなくないと書きましたが、タイムラインとユーザーインプットの簡略がしやすいチャット UI の特性が非同期に向いていないと思います。
情報の流れが速いですし、追い続けていないと文脈を理解するのも極めて困難です。チャットは非同期コミュニケーションとして使えなくないですが、周りは同期コミュニケーションとして扱っている(相手に期待している)人もいます。リアルタイムでなかったとしても早い返信を求めている人は少なくありません。
文脈をきちんと伝えつつ、物事を決めて残しておきたい場合は非同期でコミュニケーションしたほうが良いと思います。例えば下記のような情報は非同期コミュニケーションが得意なツールを選んだ方が良いでしょう。
- ドキュメンテーション
- 決まったコトや次のアクション
- プロジェクト管理
- 全社アナウンスや組織で共有すべき知識
上記をチャットで済ませてしまうと、誤解や勘違いが起きる場合があります。目的に合わせて情報がまとまっていたり、各人のペースで議論ができる場があると常にキャッチアップしなければいけないというプレッシャーは軽減されますし、どれが最新で決まったことは何か探すこともなくなります。
掲示板や Wiki など非同期コミュニケーションとの相性が良いツールは昔からありますが、特化したツールも増えてきています。時間(時差)に囚われることなくコミュニケーションとれるのも柔軟性のあるリモートワークには欠かせません。
同期コミュニケーションの価値を再考する
コミュニケーションだけでなくデザインツールも同時参加できるようになった今日ですが、相手の時間を奪ってまで一緒の時間を過ごす意味は考えたほうが良いでしょう。
非同期・同期コミュニケーションを使い分けることで、同期コミュニケーションの価値が考えやすくなると思います。例えば下記のようなコトは同期コミュニケーションの価値が出やすいところです。
- 1-on-1 をはじめとした関係構築やチームビルディング
- ブレインストーミング
- キックオフミーティング
- 今すぐフィードバックが必要な場合
- 緊急事態が発生したときの連絡
同期と非同期コミュニケーションの使い分けをするべきですが、実践は簡単ではありません。チャットや打ち合わせをはじめとした同期コミュニケーションへの期待を合わせなくてはいけませんし、ある程度の文章力・構成力がないと非同期コミュニケーションの力は発揮できません。
リモートワークになって場所から解放されましたが、時間は解放というより拘束が増えたかもしれません。それぞれが意味のある仕事に時間が費やせるように、同期・非同期コミュニケーションを上手に使い分けできるようになったほうが良いでしょう。