コンテンツを科学するBuzzFeed

ソーシャルメディアで拡散しやすいコンテンツを量産する BuzzFeed。リストや占いといった『釣りやすい』記事を掲載する一方、長期取材・調査をした骨太な記事も掲載しています。また、スポンサー記事のような企業と読者との間に新たな接点を作る試みもしています。

BuzzFeed が他のニュースサイトと一線を介しているのは、ソーシャルメディアを利用して多種多様なコンテンツを配信しているところだけでなく、すべてのコンテンツ配信を科学している点。ビックデータを解析し、ユーザーインターフェイスだけでなく、コンテンツもデータの裏付けを基に模索しています。どのようなヘッドラインだと良いのかといったコピーだけでなく、文章や画像をどのような順番で並べると効果が上がるのかまで見ています。BuzzFeed の Data Blog では、彼らのデータ活用の一部をみることができます。

そんな BuzzFeed が、先日 Pound という独自技術を発表しました。詳細は「Introducing Pound: Process for Optimizing and Understanding Network Diffusion」を参照してほしいですが、Pound を利用することで、公開した記事がどのようにソーシャルメディアで広がっているのかを視覚化できるようになるそうです。

BuzzFeedの記事より

今までだと「Facebook Like は 120 で、Twitter では 400 ツイートあった」といった、ソーシャルメディアごとに共有数を表すことしかできませんでした。しかし Pound を活用することで、どのソーシャルメディアを経由して記事が網の目のように広がるのかを見ることができるそうです。Twitter から始まった連鎖も、別のソーシャルメディアへと広がり、また Twitter へも広がる … といった動きが見えてきます。公式の Twitter アカウントから広がった記事のトラフィックは全体の 25% ほどしかないといったデータも、こうした視覚化を通して発見することができます。

スポンサー記事を多数抱える BuzzFeed ですが、ソーシャルメディアでの広がり方は、スポンサー記事もオリジナル記事も変わりないという結果も出ているそうです。スポンサー記事に消極的な企業にとってプラスの情報ですし、BuzzFeed の営業側にとっても良い説得材料になりそうです。

Pounce は他メディアが利用することができない独自技術ですが、データを活用したコンテツ設計や配信はますます広がるでしょう。しかし、数周回リードしている BuzzFeed は、大きな脅威ともいえます。彼らは既に「すべてスポンサーコンテンツにしても、ソーシャルメディアで広げることができるか」といった課題に取り組んでいるはずです。

BuzzFeedの記事より

質の担保と運営の課題

元々、他メディアへのリンクばかりだった BuzzFeed ですが、今はほぼすべて独自記事ですし、分野も広いだけでなく、高品質なコンテンツもたくさんあります。彼らがこれだけコンテンツ配信を拡大できたのも、単にウケの良いコンテンツを出し続けているからでなく、データを基にしたコンテンツ制作を続けているからでしょう。Web / アプリの時代に生まれたメディアらしいアプローチです。

ビックデータを用いた解析というのは、すぐできることではありません。しかし、コンテンツひとつひとつが、どのように読まれていて、どうやって広がっているのかを見ていくべきでしょう。PV は広告を売るための重要な指標であるものの、コンテンツの質の評価を PV だけで判断するべきではありません。「脱PVで見えてくるコンテンツの質」で紹介したように、まずはソーシャルメディアの数からスタートするのも良いと思います。そこからパターンや例外を見つけ出すことで、サイトにふさわしい質の判断がしやすくなるでしょう。

ユーザーインターフェイスだけでなく、コンテンツも A/B テストをする時代が来ています。友達に広がりやすいフレーズ、個々のソーシャルメディアに合った言い回しや見せ方があります。それらに合わせて細かな調整・模索を行いながら運営ができる体制が「長く良いコンテンツを出し続ける」ために必要になってくるのかもしれません。当たればラッキーみたいな釣り記事ばかりでは、自社ブランドとしてのメディア運営は難しくなります。

ソーシャルメディア以降のメディア配信は、小さく早く出回るパッケージングが不可欠です。こうした設計・管理の部分だけでなく、コンテンツそのものも小さく、早く、分かりやすくする必要があります。また、テスト・評価がなくては『打率』を上げることができなくなります。肥大化を続けるコンテンツ市場で生き残るためのひとつの考え方だと思います。