文脈を理解し管理できるシステムの可能性
CMSといえば、「コンテンツ / Content」を管理するためのシステム。しかし、現状はコンテンツというよりページの管理をするという要素が強いです。ページという概念から抜け出してコンテンツを管理できるシステムが増えてきましたが、今後の利用者の傾向を考えると、コンテンツの C だけでなく、文脈 / Context としての C を管理できるシステムが必要とされています。もうひとつの CMS = Context Management System を作ることは可能なのでしょうか。
文脈によって活かされるコンテンツ配信でも紹介しましたが、今でもデバイス、言語、時間という文脈を通してコンテンツの見た目を変えることができます。また、アマゾンのように、利用者の趣味趣向や履歴を通してオススメ商品を提示したり、同じようなユーザーが選んだコンテンツをみせるというのも、ひとつの文脈表現です。
しかし、今後より複雑な文脈を求められることになるはずです。将来、以下のようなシナリオは実際にありえるはずです:
- 山田さんとの打ち合わせまで、あと10分
- しかし、山田さんが遅れることが判明
- そこで時間を潰すためにニュースリーダーを起動
- 今は、出先なので、出先に最適なトピックが選ばれる
- 既読履歴から最適な記事を優先される
- 山田さんが遅れた時間分で読める記事を表示させる
このように、自分と自分との関わりをもつ人との関係性を読み取って、情報の見せ方が微妙に変化するようになるはずです。従来は、ひとつの文脈Aが、状態Bにマッチしたときに、コンテンツCを表示させるという比較的単純な仕組みだったわけですが、これがさらに複雑に入り組んだ形になると想定されます。そして文脈を管理するとは、その複雑に入り組んだ文脈に対して『交通整理』をすることだと考えています。
いきなり高度な文脈の理解は困難ですが、段階的に分類することで、位置情報を取得するというシンプルな機能が、将来的には高度な文脈の理解に繋がることが分かります。文脈は以下のようにピラミッド型に分類することが出来ると思います。
- 数量データ
- デバイスのセンサーを通して取得できるデータ
- 質的データ
- 数量データからパターンから、利用者のライフスタイルを理解する
- インテリジェンス
- 取得したデータを基に、利用者の「今」のニーズを予測する
可能性を感じますが、文脈を理解する機能を実装するのは大変困難だと思います。まず、ひとつやふたつの文脈要素であればシンプルですが、要素が増えていくと複雑になり管理しきれなくなる可能性があります。最下層の数量データに絞ったとしても、要素が1つ増やしただけで、組み合わせが倍々で増えます。また、最初にある程度のデータがたまっていなければ、文脈への回答を示すことができないので、初期稼働をどうするかという課題もあります。
難しい課題ではありますが、文脈の理解が、コンテンツとコンテナ(テンプレート)を開発していく上で要のような存在になるのは確かです。今後、人のニーズや利用シーンが細分化していくのであればなおさらのこと。「One for All (ひとつで全員)」という配信モデルでは、人に響き難くなるのであれば、文脈を理解するための機能実装と、文脈に対してどのような見た目のコンテンツを出したほうが良いのかを考えられる管理者・設計者のような存在が必要になるのかもしれません。そのときに、コンテンツとしての CMS とは別にコンテキスト(文脈)としての CMS が活躍することになるでしょう。