Webアクセシビリティを当たり前にするために

まず最初の一歩を踏み出せるようなキッカケを作ること。厳密性を問い詰めず、なにかを実践したことを賞賛し讃え合うこと。そこでようやく「当たり前」という言葉が、スッと頭に入ってくるようになるかもしれません。

自分でもできると言いたい

当たり前にしては難しい

Webアクセシビリティを考慮し実践することは「当たり前」だと思いますが、その当たり前を実践することが非常に敷居が高い印象があります。仕様や規格を理解して実装しなければならないところから、クライアントのコミュニケーションやワークフローといった仕組みの見直しまで、「当たり前」を実践するために超えなければならない山がたくさんあります。

私たちが「当たり前」という言葉を使うとき、「誰でも同じように考えること・自然にできること」というニュアンスを含めています。そのニュアンスのまま当たり前と思って Web アクセシビリティに取り組もうとしても、目の前にある多くの課題に頭を抱えてしまう人もいると思います。当たり前という言葉と、現実にしなければならないことのギャップが、Webアクセシビリティを難しくしているのかもしれません。

当たり前という言葉が難しさに拍車をかけていることがある Web アクセシビリティ。それでも始めてもらうには、Web アクセシビリティの意味を少し広げて実践することだと考えています。

まずは小さな勝利から

JIS規格レベルAAを目指すだけでも簡単なことではありません。先述したように仕組みから変えていかなければ実践できないこともあります。そこで、制作側だけでも「自分たちでもできた」と思えるような『小さな勝利』をチームで感じてもらえるようにする必要があると思います。それは、レベルAにも満たさないことかもしれませんが、小さな勝利を積み上げていくことで、「もっとできるかもしれない」という自信につながるはずです。

例えば WebAIM が公開している 10 Easy Accessibility Tips Anyone Can Use は個人的に気に入っています。紹介されている Tips は以下のとおり。

  1. ロゴに代替テキストを入れる
  2. 基本的な Landmark Role を入力する
  3. :focus をスタイリングする
  4. 必須フィールド(aria-required)を明記する
  5. ページタイトルには <h1> を記述する
  6. テーブルヘッダー <th> を活用する
  7. テーブルキャプション <caption> を活用する
  8. 「詳しくはこちら」といった表現を避ける
  9. tabindex は排除する
  10. Wave のようなツールを使ってみる

これらを実践しても、JIS規格レベルAすら達成することはありません。しかし、必ずしておきたい大事な項目ですし、すぐに「自分でもできた」と思えることばかりです。とりあえず、この 10 項目で「わたしは Web アクセシビリティを実践しています」と自信をもって宣言してもいいのでは思っています。簡単にできたという実体験が Web アクセシビリティが抱えている「難しい」というイメージを払拭する要因になると考えています。

本当は他と同じ

「Web アクセシビリティを実践すれば儲かるのか?」 といった質問を時々耳にしますが、手法や技術だけでビジネスが大きく変わるということはないと思います。「レスポンシブ Web デザインを実装すれば儲かるのか?」 「SEO すれば儲かるのか?」といった質問にしても、ビジネスにつながる要素のひとつではありますが、それだけで劇的に変わることはありません。(厳密な)Web アクセシビリティだけで Web アクセシビリティを語ることで手法や規格が中心になり、実践の機会を狭めている可能性があります。

そこで、私は数年前から Web アクセシビリティ以外の分野から Web アクセシビリティを語るようにしています。例えば過去に以下のような記事を書いています。

アクセシビリティから変わるビジュアルデザイン
見た目とアクセシビリティの関係性
コンテンツのアクセシビリティが未来を保証する
全ユーザーが特殊になった現在
コンテンツからみるWebアクセシビリティの課題と提案
コンテンツ戦略の視点からの考察

WebAIM が公開している 10 の Tips と同様、これらを実践したからといって JIS規格レベルAを満たさないでしょうし、厳密にいえば情報アクセシビリティのことを語っているだけではないかと突っ込む人もいると思います。ただ、こうした通常語られない切り口から Web アクセシビリティについて書くことで「なんだ、自分が常に考えていることじゃないか」という共感に繋がるのではと期待しています。

Web アクセシビリティ単体では儲からないでしょうし、デザインも良くならないかもしれません。しかし、Web アクセシビリティで掲げている課題はデザインやマーケティングでも考えなければならないことです。Web アクセシビリティの意味を自分の中で少し広げてみることで、すべての分野を繋げる存在だということに気付くと思います。

まず最初の一歩を踏み出せるようなキッカケを作ること。厳密性を問い詰めず、なにかを実践したことを賞賛し讃え合うこと。そこでようやく「当たり前」という言葉が、スッと頭に入ってくるようになるかもしれません。

Web Accessibility Advent Calendar 2014

筆者について

Photo of Yasuhisa Hasegawa

組織の一員となるスタイルで一緒にデザインに関わる課題を解決するといった仕事をするなど、チームでデザインに取り組むためのお手伝いをしています。各地でデザインに関わる様々なトピックで講師をしています。