図書館司書から学ぶ賢い情報の探し方
図書館司書が長年培ってきた専門性にヒントを得ながら、多角的に情報を捉える力を身につけると、実務に活かせる情報を効果的に整理しやすくなるはずです。
インターネットやGoogle検索が普及する以前、人々はどのようにして情報を探していたのでしょうか。特に、見つけにくい情報を探す際には、図書館のレファレンスサービスが重要な情報源となっていました。利用者が電話やファックスで問い合わせると、図書館司書が適切な情報や資料を案内してくれる仕組みです。図書館員は長年の経験と専門知識を活かし、利用者のニーズを的確に把握し、最適な情報を提供する手助けをしていました。
図書館司書は、単に情報の所在を知っているだけではなく、情報を探し出すための思考プロセスをもっています。テーマに沿ったキーワード検索だけでは見つからない情報を探し出す能力は、調査が必要な仕事においても有用なスキルです。自分がどのように情報を探しているのかも振り返りながら、情報を体系的に捉えるための4つの視点をまとめました。
情報の階層構造
情報が分野から具体的な詳細まで、階層構造で成り立っていることを把握する視点です。「サステナブルなプロダクトデザイン」について調べる場合、「デザイン」という大きな分野から、「プロダクトデザイン」「環境配慮型設計」「材料工学」「ライフサイクルアセスメント」と、段階的に関連分野を特定していきます。階層的な理解があることで、必要な情報にたどり着くまでの道筋が明確になります。
情報源選択のトポロジー
統計的な情報が必要な場合は政府刊行物や統計年鑑を、歴史的な事実であれば一次資料や研究書を、最新の動向であれば新聞や専門誌を参照するというように、情報の性質に応じて最適な情報源を選定します。例えば、「現代の若者の読書傾向」を調べる場合、統計データ、社会学的研究、書店の販売データ、図書館の貸出データなど、複数の種類の情報源を組み合わせることで、より正確な全体像が見えてきます。
情報同士のつながり
一見関係のない情報でも、新たな文脈で結びつけることで、思いがけない発見につながることがあります。「デザインシステム」を例にするなら、デザイントークンやツールだけでなく、事業戦略、PRD(プロダクト要求仕様書)、人事評価制度なども関連する重要な情報源となります。これらの情報を結びつけることで、自社のデザインシステムをより深く理解することができます。
文脈の理解
誰が、どのような目的で、どのような状況でその情報を作成したのか。その情報がどのように保存され、どのように利用されてきたのか。このような背景を理解することで、情報の信頼性や価値をより適切に判断することができます。例えば、デザインプロセスの事例を読む際、それが大企業のインハウスデザインチームによるものか、スタートアップのデザイナーによるものかを理解することが重要です。企業のブログなのか、デザインカンファレンスでの発表なのかによっても、情報の性質が変わってきます。
現在は、誰もが膨大な情報に簡単にアクセスできる時代です。そのため、それらしい情報や事例が多すぎて、何を参考にすれば良いのか迷うことも少なくありません。図書館司書が長年培ってきた専門性にヒントを得ながら、多角的に情報を捉える力を身につけると、実務に活かせる情報を効果的に整理しやすくなるはずです。