デザインの理解につながる感情のメカニズム
上記は、ドン・ノーマン著「エモーショナル・デザイン―微笑を誘うモノたちのために」からの一節。機能的な部分より、感情に響くデザインが、今後の製品・サービスを成功へ導くだろうと説いています。確かにそうだと思いますが、感情という主観的なものを、いかにデザインへ落とし込むのか悩ましいところです。「かっこいい」「美しい」という感情だけでデザインの評価をするのは好ましくないですが、その感情がどこから、どのように生まれてくるのかを探求することは重要です。
感情とは主観的であると同時に、体系化することも可能です。
Delft University of Technology で教授をされている Pieter Desmet 博士が 2002 年に「Designing Emotions」という論文を発表しています。人間は製品や感情に対する感情のメカニズムを以下のような図のようにまとめています。
感情は、何かに反応した結果に表れるものですが、反応は大きく分けて2つの要素で構成されています。「刺激(Stimulus)」は製品やサービスといった、私たちが実際触れたり体験することができるもの。もしくは製品をつかって何か行動をしたり、身につけて別な行動をする場合もあります。
「関心(Concern)」は私たちひとりひとりの内に秘めているものを指します。大きく分けて 3 つに分類することができます。
- ゴール : 目的であったり、求めている結果
- 期待値 : 物事がそうであってほしいと考える基準
- 気分 : 物事に対する好き嫌い、立ち位置
利用者の懸念と、それと向き合う製品やサービスとの関係が感情を生み出していることを、簡潔かつ明確な図で表されています。この図を見ると、いかに利用者の理解が製品開発の上で重要なのがわかります。利用者のゴールや期待を理解しないで、作り手によって良いものを作っても負の感情を生み出すだけになります。
この図は、感情のメカニズムを表しているだけなので、いかにポジティブな感情を導き出すかは別の課題になります。利用者の懸念は、調査を通して視覚化することができますが、美的感覚や使いやすさ(達成しやすさ)を考えるのは別の手法や、理解が必要になるでしょう。
利用者が感情的なリアクションをしたとき、その言葉を真に受けず、まず「何が目的だったのか?」「何を期待していたのか?」「どういった物事が好みなのか?」を聞き出すと、製品・サービスの改善点が見えてくるはずです。