自社にUX文化を広めるコツ
UX や HCD の勉強をしてみたり、ワークショップに参加しても、会社内での理解を獲得するのが難しい場合があります。装飾より広い範囲でデザインを考えことは時間 (コスト) が必要だけでなく、同僚のデザインプロセスの参加は不可欠です。しかし、成果物として見え難いプロセスですし、「自分はデザイナーではない」と最初から拒否されることもあります。外で入手した様々なデザインアプローチをひとりでいきなり始めても何も変わりませんし負担が大きくなるだけです。UX を社内の文化として取り入れるよう働きかけ、デザインがしやすい環境作りがまず必要になります。
つまり、勉強の次は啓蒙活動です。
社内勉強会をしているところであれば、そこで外で学んできた知識を共有することはできると思います。やっていない企業でも忙しいスケジュールの中から2,3時間ほど共有する時間を絞り出すことは出来るはずです。では、そこで何を話せば良いのか、何に注意しなければならないのでしょうか。
- 制作以外の方にも参加してもらう
- UXが何かの解説ではなく、なぜそういった考え方が必要なのか説明する
- UXを考慮したデザインプロセスを体感してもらう
ここでキーになるのは「体感」です。UXの意味が理解されなかったとしても「なるほど。こういうことすることに意味がありそう」と思ってもらえたら勝ちです。ワークショップ形式で実際どういったことを考えるのがデザインに必要なのか体験してもらうことが、講義よりも効果的です。例えば以下のようなエクササイズはどうでしょうか。
- 自社サイトや案件サイトなど扱うサイトを選ぶ (皆がある程度理解しているサイトが良い)
- 扱うサイトに該当するペルソナを2つ用意 (事前につくっておく)
- グループに分かれてペルソナに合うと思われるトップページのアイデアを出し合う
- グループごとに発表をし、話し合う
これは7月に行われた青森のセミナー+ワークショップで行なったものと似た流れです。こうしたワークショップを通して以下のことの理解が深まります。
- 利用者が抱えている問題
- サイト制作・運営をしている自分達も利用者であるという視点
- 完成品(成果物)の裏側にある様々な工程
もちろん他にも体感してらうための手法はあります。例えば下記のようなエクササイズであれば15分から20分で行えます。
- 自社サイトや案件サイトなど扱うサイトを選ぶ (皆がある程度理解しているサイトが良い)
- そのサイトに関するアンケートを用意。機能や情報の位置に関する評価を5段階で応えれるようにする
- それぞれの評価の違いについて話し合う
人それぞれ価値観が違うことを知る良い機会ですし、そのなかでどのような提案と決定が必要なのかが見えてきます。こうしたプロセスが素晴らしいのが、見た目とは違う視点からデザインについて話し合うことが出来るだけでなく、それぞれの専門分野を活かして皆がいつの間にか意見を出す雰囲気がつくりやすいところです。話し合いが具体的な実装について話が進むこともあるので、携わっている案件のほうが皆にとって分かりやすいですし、仕事にも活かせるというメリットもあります。成果物として出てくればより納得でしょう。
せっかく勉強しても活かす仕事場がない。上司・部下への説得が難しい。様々な課題はあると思いますが、情報提供ではなく、まず身体と頭を使って体感してもらうことでスッと理解してもらえるかもしれません。
Illustration by Tommaso Meli