リサーチに欠かせないインサイトって何?
「洞察」「深い理解」という意味が含まれたインサイト。発見した情報を集めたあとに行う3つのステップを踏んで少しずつインサイトに近づけるようにすると良いでしょう。
インサイトと発見を混同しない
ビジネスシーンはもちろん、ユーザー調査(UXリサーチ)でも耳にする「インサイト(Insight)」という言葉。たくさんインタビューをして結果をまとめたとしても、インサイトがなければ「ユーザーの声が聞けてよかった」といった感想しか残りません。リサーチの真価はインサイトが決めるといっても良いでしょう。
「洞察」「深い理解」という意味が含まれたインサイト。自分のリサーチにもより良いインサイトを含めたいと思っても、具体的に何をすればインサイトと呼べるのかよく分からない人もいるはずです。
インサイトの定義を読み解くのではなく「これはインサイトではない」と呼べるものを振り返ることで、何が必要か見えてきます。以下の 3 つはインサイトを得るための重要な材料ですが、これらを共有するだけでは意味がありません。
- 定量 / 定性データ
- ユーザーの様子
- ユーザーの声・要望
参照したり、ユーザーの声を引用するなどしてインサイトに意味付けをするのに使えますが、上記はインサイトというより発見(Finding)です。例えば「ショッピングサイト A を利用するユーザーはカテゴリーリストは使わず、検索を使うことが多い」は発見であり、インサイトではありません。リサーチに携わる人の役割は、こうした数多くの発見に基づいて「なぜ(Why)」を導くことです。
インサイトを作るステップ
発見した情報を眺めていても何も出てきませんし、いきなりポートを作り始めようとしても手が動かないと思います。そこで、以下のようなステップを踏んで少しずつインサイトに近づけるようにすると良いでしょう。
1. 重要な情報を抜き出す
インタビューのログは有益な情報が詰まっていますが、情報量が多いだけでなく様々なトピックを扱っているので中身を把握するのが困難です。どんな情報があるか把握しやすくするために、小さな単位にして抜き出します。
付箋紙の入るくらいの情報量が最適。ユーザーの言葉をそのまま引用したものから、行動・態度を記録したメモを切り取っておくのも良いでしょう。最初から最後まで読まなくてはいけなかったインタビューが小さな情報になるだけでも可読性が増しますし、整理がしやすくなります。
2. パターンを見つける
インタビューのログを並べただけでは気付き難かったパターンが、小さな情報に切り出したことで見つけやすくなります。共通している行動はあるでしょうか。同じように悩んでいる声を見つけることができるでしょうか。
見つかったパターンはひとつにまとめて名前を付けるようにします。機能、感情、利用シーンなど分類の仕方はいくつか考えられます。分類方法が多くなると作業も複雑性も増すのでオススメできせんが、まず 1 つテーマに絞って分類を始めると良いでしょう。
3. 繋がりを見つける
テーマとテーマの間に関係があるとしたら何でしょうか。すべてに共通した『メタテーマ』と呼べるものが見つかるでしょうか。パターンを見つけて整理した情報に繋がりがあるか探してみると新たな発見があります。
別のデータセットとの繋がりを探すこともできます。例えばインタビューデータとアクセス解析といった定量データと組み合わせるとどうでしょうか。新規ユーザーの獲得数は下がっていないのにインタビューでオンボーディングへの不満の声を得たのであれば、価値提供の訴求がうまくできていない、再利用しなくなる可能性があるという仮説を立てることができます。別データを繋げることで片方だけでは生まれない仮説が立てやすくなります。
仮説・検証のサイクルでインサイトが磨かれる
最初から良いインサイトを作るのは困難です。インサイトを作るための分析を始めることで「ココをもっと深掘りすればよかった」と思うことがあるかもしれませんし、フォーカス不足で情報がうまくまとまらない場合もあると思います。それは悪いコトではなく、むしろ「調査を続けてユーザーのことを知ろう」という共通認識を生むキッカケになります。半年、1 年に 1 度実施する『イベント』になるより、最初は精度が低くても少しずつ続けたほうが将来の財産になります。
インサイトをチームメンバーがアクセスしやすい場所で共有するのはもちろん、図や絵として表現して解釈しやすくするのも手段です。どういう手段が伝わりやすいかはチームの性質 / 性格によって異なりますが、ペルソナやカスタマージャーニーマップあたりからスタートしてみると良いでしょう。
インサイト作りはリサーチャーをはじめとした専門家に任せてしまいがちですが、デザイナーも含め複数人で考えたほうが良いです。知見・視点が異なることで情報の見え方や解釈が変わることがあります。偏ったインサイトにしないためにも、「自分は専門じゃないから」と遠慮せず、インサイト作りに挑戦してみてはいかがでしょうか。