ゲームという名のサービスのあり方

オンラインゲームというと、ここ10〜15年くらいに出てきたように思えますが、実は30年という長い歴史があります。MUDというテキストベースのオンラインゲームが登場したのが、1978年。パソコン上でしか体験出来なかったオンラインゲームも今はコンソールでも遊べるようになりましたし、ケータイをはじめとしたモバイルデバイスからも可能です。歴史は長いとはいえ、ゲームプレイに関していえばイノベーションの余地はあるでしょうね。

ゲームプレイや世界観など、ゲームそのものへの開拓の余地はもちろんありますが、オンラインゲームではそれ以外の部分でいろいろ模索出来る部分があります。今、オンラインゲームと言われて連想される種類のゲームだけでなく、ネットに繋げることが出来るゲームであれば、ゲームの遊び方だけでなく、ゲームという名のサービスの提供方法も変わってくるのではないでしょうか。そのヒントになるのが、もう10年くらい前に出たゲーム「Starcraft」。7年間で何回も「パッチ」がダウンロード出来たわけですが、パッチによってどのようにゲームプレイやインターフェイスが変わって行ったのかを解説しているビデオがあります。

リリースした当初と7年後を見比べると、基本的なところは変わらないものの、様々な改善がされているのが分かります。発売当初から評価の高かった作品ではありますが、7年というゲームの世界では非常に長い期間を使ってテコ入れされ続けたのも人気の秘密といえるでしょう。韓国では今でもハードコアな Starcraft プレーヤーがいますが、こうした改善が幾度もされているからこそ彼等は遊んでいるのかもしれません。

パソコンで動作するゲームでは、発売後にこうした様々なテコ入れをするケースは珍しくなく、場合によっては新しいコンテンツを無料で提供する場合もあります。DSやPSPのようなゲーム機でもネットやキオスクを使ったコンテンツ配信を初めていますが、ゲームをサービスと見立ててサポートをし続けるというのは今後のゲームにおけるひとつの形になるような気がします。今は「2」「3」と題して新しいゲームソフトを購入するというモデルが普通ですが、課金システムが充実してこれば購読モデルで月々新しいコンテンツかバグフィックスを含めた改善がなされるゲームもパソコン以外で登場すると思います。今あるリソースを有効活用しつつ、ファンベースをしっかり守る(サポートする)には効率の良い形ではないでしょうか。

パッチをダウンロード出来るようなモデルが定着すると、新しいバージョンのゲームを買う際のきっかけ作りも出来ます。わずか24時間で280万個売れて話題になったWorld of Warcraft の2つ目の拡張版。実はこの拡張版の発売前におもしろい試みがなされています。1つ目の拡張版が出たときにもお金を出して、2つ目でまたお金を支払う(その上、月額費もある!)わけですから、人によっては2つ目の拡張版をわざわざ買う意味はあるか気になる方もいたと思います。

そこで開発元の Blizzard は、拡張版2の発売前に拡張版1を使っている方に、無料のパッチとして新しい拡張版の一部を提供しました。新しい拡張版を購入する前から、改善されたUIや追加された幾つかの機能を使って遊ぶことが出来たわけです。拡張版2にあるコンテンツは遊べないものの、今後どういうふうに遊べるかを体験するのに十分な機能を提供しています。ログイン画面まで拡張版2と同じものに変更されているわけですから、良い宣伝効果にもなったと思います。長期にわたりサポートするのは、次へ繋げるための導線も作りやすいといえます。

Webサービスでも長期にわたるサポートが重要になってきますが、ネットに繋がるゲームも同様のことは言えると思います。逆に、今パソコン用のゲームで行われているゲーム開発のあり方は Webサービスにも参考になる部分は少なくありません。素晴らしいゲームが一瞬で出てきて消えて行くのはもったいないですし、新しいコンソールが出る度にリサイクルというのも残念です。最近はネットに繋げれるゲームも増えてきているわけですし、サービスのようなオンラインゲームもパソコン以外で遊べるようになるとゲームの楽しみ方もまた少し変わるような気がします。

Yasuhisa Hasegawa

Yasuhisa Hasegawa

Web やアプリのデザインを専門しているデザイナー。現在は組織でより良いデザインができるようプロセスや仕組の改善に力を入れています。ブログやポッドキャストなどのコンテンツ配信や講師業もしています。