Web Directions East 2008もう10日も前の話になりますが、Web Directions East (WDE) が無事終わりました。夏の初めからずっと携わっていたので、4ヶ月くらいこのイベントに関係した作業やお手伝いをしていました。主に僕は執筆関連が多かったかもしれませんね。こちらでは告知していませんでしたが、東京IT新聞のほうでもミニ連載をしていました。

『スペック』がイベントの価値ではない

運営のお手伝いをしていた僕でも、WDEの参加費用はウェブ制作関連のイベントでは挑戦的だなと思いました。スピーカーを日本へ呼んだり、同時通訳のことを考えると仕方のない費用ではありますが、金額では計れない体験にどう注目してもらうかに苦労しました。海外では名が知られている方達が来日したとはいえ、海外のニュースにアンテナをのばしていなければ、ただの『外人』といっても良いかもしれません。スピーカーがどういった方なのか、そして彼等の仕事がいかに自分の仕事に影響しているのかを紹介することが自分の中では最初の課題でした。

カンファレンスとは・・・と言うとそれぞれ違った価値があるのは当然です。ただ、1時間くらいの話を聞いただけでスキルが上がるということはまずないでしょうし、ウェブというオープンな世界で仕事をしている以上、革新的に新しい情報がカンファレンスに参加することで得れることもないでしょう。むしろそれを期待していると、(WDEだけではないですが) カンファレンスはとても不満足なものになると思います。

どういった情報を得れるかといった『スペック』を求めるのであれば、ワークショップに参加したり、学校へ行ったり、書籍を熟読したほうが効率が良いでしょうし、満足度も高いと思います。

そこにいるという体験の尊さ

僕の中ではカンファレンスは、体験の場だと思っています。これは、カンファレンスだけでなく勉強会という名の集まりにも言えますが、『同志』と呼べる人たちがひとつの場所に集まって同じ方を向いて考えたり雑談出来ることが価値なのではないかと思います。たとえ会話に参加出来なかったとしても、そこにいるという空気を体感することはブログエントリーを読んでいるだけではなかなか伝わってこないエネルギーだと思います。

そもそも、僕がスライドを無料で公開しているのも、情報を共有したいという思いからしていることではありますが、スライドを見たとしてもセミナーに来て話を聞いた方の体験とはイコールにはならないという安心感から公開しているという部分はあります。本当にすごいスピーカーというのは、国内外問わず自分が話しているトピックに対して情熱を持っている点にあります。たとえ静かに話す方でもエネルギーがある人とない人の違いは明確ですよね。そのエネルギーはその場にいないと感じないですし、そのエネルギーがあるからこそ、話が伝って来ますし、インスピレーションに繋がっていると思います。

ライブアルバムを店頭で買えるからといって、ライブと同じ体験かと言ったらそうではないし、ライブに行く価値はチケット代だけでは計れないです。

「ユーザー体験は大事だよね」と言っている我々だからこそ体験に価値を見出せるようにしたいですし、『スペック』だけで価値を計らないようにしたいです。

海外スピーカーがスゴいと思う唯一のこと

Web Directions East 2008実はスキルセットだけのことを言うと、海外スピーカーが突出してスゴいということはないと思います。CSS や JavaScript に関してスピーカーより知っている方は会場にもいたと思いますし、日本中にもたくさんいます。スキルに関していてば、海外と日本の差ってそれほどないと思いますし、日本の方のほうが勝っている点は少なくないと思います。では、海外の方の話を聞くことは、日本の方の話を聞くのと違いはないのでしょうか。

先述したようなスキルという名の『スペック』でスピーカーを比べるとしたら、日本語で聞ける日本人スピーカーの方が分かりやすいです。話の上手さは国内外で分けるというより、個人差にかかっています。それでも、海外の方と話を聞いたり、会話をしていて「スゴい」なと感じるのは、彼等の視野の広さだとです。

印象的だったのがワークショップで Eric Meyer が Browser History Timeline をどのように作ったのかを解説しただけでなく、どう考えて今のような形にしたのかを解説していたときです。デザインプロセスを解説することで、要素の表示タイプを柔軟に変化させることでレイアウトの表現は大幅に広がるという CSS の基本ではありながら、固定概念により無理だと勘違いしていた部分を、実例を通して『気付き』に繋げていたと思います。彼は CSS の使い方ではなく、CSS の考え方をレクチャーしていたという印象がしました。

明日、明後日使えるテクニックではなく、これからの変化にも対応するための応用力、視野を広げて思考出来るところがスゴいなと思います。第一線で仕事している Meyer 氏でも、ちょっと夜遅くまで起きて CSS をいじって楽しんでいるというのは素敵ではないですか。他の分野と同様、ウェブサイト制作にも様々なルールや規則はあります。それらを尊重しつつも、壊したり超えたり改造して模索しているのが、今回来たスピーカーで共通していることかもしれません。

それらを惜しみなく世界へ向けて公開したり、フィードバックを得たり、対話をしているという部分も無視出来ない部分です。

もちろん、日本の方でそういった姿勢でやっている方は少なくないですが、もっと多くても良いかなと思います。技術や仕事という名の制約にこだわらずにデザインやウェブの可能性を楽しむ時間はもっと増えて欲しいですし、それらを英語という言語の壁を越えて世界に向けて共有してほしいですよね。いずれ Web Directions South で日本人スピーカーがいるのが当たり前な日が来るかもしれません。

もっとコミュニケーションが必要かも

日本は独自路線・・・なんて言いますが、それぞれの国でそれぞれの路線というのは存在します。アメリカとイギリスという同じ英語圏でも差はあります。独自の部分を踏まえて共通のビジョンを世界へ伝えたり、独自性を分析・解説していくことも必要とされています。そして、それらの情報やノウハウを踏まえた実例も必要とされています。

一個人が世界へ視野を広げても仕方ないと考えるかもしれませんが、それが可能なのがウェブです。今回 WDE で来日したスピーカーも、元々ひとりの活動が結果的に我々が頻繁に使っている『テクニック』になっていることがあります。ひとりが業界もしくは世界へ何かしらの影響力を与えることが出来るわけです。何かを作る・・・という形でなくても、何かを伝えるだけでも違います。こっそり独り言ではなく、多数に向けて意見を発することが変化への第一歩になることもあります。

英語が一番ダイレクトに世界へ繋がりやすいですが、日本語で書いたとしても世界のコミュニティへ繋がる窓口があると良いのかもしれません。もしかするとテクノロジーが解決してくれるかもしれません。意見は発していかなければいけませんし、それが日本の存在感を高めるひとつの方法になるかもしれませんね。