リモートのプレゼンは進化がない

かれこれ 15 年近くKeynoteを使ったプレゼンを続けています。10名以下の小規模のものから 1,000 人を超える大規模のものまで数多くのプレゼンをしてきました。自分にとって Keynote はプレゼンに欠かせない大事なツールですが、最近は利用する機会がかなり減りました。

Keynote アニメーションの例凝ったアニメーションを作るのも楽しみのひとつ

ありがたいことに今でもイベントで登壇する機会がありますが、今年は COVID-19 の影響もあって、ほぼすべてのイベントがフルリモートに切り替わりました。イベントの形が大きく変わったと共に自分のプレゼンスタイルも少しずつ変わり、結果的に Keynote が活躍するタイミングがなくなりました。

国内外のリモートイベントに幾つか参加して感じたのが、リアル会場からリモートに変わったにも関わらず、プレゼンのスタイルが以前からまったく変わっていないという点です。

個人的に「スライドを見せて話す」というスタイルはリモートイベントに向いていないと思っています。特にスライドをただ読み上げているプレゼンは、わざわざその時間に参加する必要性を感じず、録画して YouTube などに公開したほうが良いのではと思うくらいです。

OBSmmhmm のようなツールを使えば少し表現が豊かになりますが、それでも今までの延長線のような存在です。

COVID-19 以前からスライドを読み上げているだけでのプレゼンを見かけましたが、大きなスクリーンに投影して話すというリアル空間の臨場感で誤魔化せたところがあったと思います。

無料もしくは低価格で参加できるリモートイベントが多いことから、「とりあえず見ておくか」というモチベーションで参加している方もグッと増えています。気軽に参加できるメリットはあるものの、イベントへの没入度も低くなりました。リモートの距離感もそうですが、『映像の垂れ流し』に見えるスライドショーのようなプレゼンは参加者の集中力をより下げているかもしれません。

リモートで『みんなで学ぶ』ことは可能か

COVID-19 が良いキッカケになりましたが、プレゼンは数年前から限界を感じ始めていました。単なる情報伝達にしないことは昔から心がけていましたが、それでも参加者は情報を受け止めるしかありません。プレゼンを聞いて感じたことを Twitter などで書き出すことはできますが、イベントという『場』に一緒に参加する意味が薄れるような気がします。

情報を見たり聞いたりできても、それを自分に腹落ちさせることが難しいプレゼン。スライドショーのように見えてしまうリモートイベントのプレゼンは情報伝達がさらに色濃くなった印象があります。そこに何か『学び』のエッセンスを取り込めないかと考えていたときに. Cohort Model(コホート学習モデル)という言葉に出会いました。

様々な解釈・定義があるみたいですが、私の理解では「生徒、講師関係なくお互いが助け合いながら学習できる環境」を指します。教える / 教えてもらうという関係ではなく、教え合う / 一緒に学ぶことを目的としています。得た情報について考えたり活用できる機会をその場に設けることで、お互いの気付きに繋がるはずです。

もうひとつインスピレーションになったのが Twitch などで見れるゲーム中継です。ゲーマー(プレゼンター)がビューワーと会話しつつ、彼らの反応に合わせて遊び方を変えている姿はプレゼンの勉強にもなります。リモートという離れた環境でいかに参加者を巻き込むか(没入させるか)をよく理解しているのだと思います。

リモートならではの伝え方

リモートのほうが都合が良い、リモートだからできるプレゼントはどんなものでしょうか。今、リモートイベントのプレゼンは以下の 5 つの条件を満たすように心がけています。

  • その日、その時間にいるから意味があると思えるライブ感を出す
  • 参加している人に声をかけたり、その場で受け答えをする
  • それぞれの理解や解釈を話せる機会を設ける
  • 実践的なシーンを盛り込みながら振り返り体験ができる
  • 参加者の反応や状況に合わせて話の流れを変えられる隙間を作る

こうした条件を満たそうと思うと、一方通行で短調になりやすい Keynote が都合の悪い存在になりました。自由に動き回れるだけでなく、参加者とのコミュニケーションがしやすい Miro へ切り替えました。

Miroボードの例

Miro をはじめとしたホワイトボードツールは制限なくコンテンツを広げることができます。これにより、情報と情報の繋がりが伝えやすくなるだけでなく、必要に応じて別の話題に移るのが容易になりました。また、参加者も一緒にボードに参加できるので、簡易ワークショップを盛り込んだり、それに基いて話を広げたりできます。

12月12日に開催された WCAN 2020 Winter では、有志の方にミニワークショップを受けてもらいつつ、その様子を他の参加者が『見学』するスタイルでした。イベントで話した情報を活かす機会としてワークショップが設けられ、アウトプットしてもらった情報を受けて話を進めました。たとえワークショップに参加していなくても、一緒に考えることができますし、他の人も考えている様子も見えるのでライブ感はあったと思います。

今は Miro を使ってプレゼンしている人が多くないからかもしれませんが、毎回高評価をいただいています。

もはや「プレゼン」と呼べないかもしれませんが、リアル会場でやってきたことの延長ではなく、今ある課題を振り返りながら自分なりのリモートプレゼンのあり方を考える良い機会になりました。

もちろん、私が考えたやり方の他にもいろいろな可能性があると思います。COVID-19 という大きな出来事を通じて、改めてリアル会場で人と会うことの尊さを味わいました。それを懐かしんで同じようなことをするのではなく、リモートの強みを活かした伝え方は今後も模索していきたいと思います。