利用者の意図から探るサイトデザインの最適化
以前から文脈によってコンテンツ配信が活かされるという話はしてきました。テクノロジーを活かすことで、適確な文脈を読み取ってコンテンツ配信が可能になるのではないかという提案をしてきたわけですが、デザインプロセスとしてコンテキストを考えることが重要になることもあります。今回は企業の製品ページに注目して、文脈とコンテンツ配信がどう結びついているのかを検証していきます。
このように製品ページに HTML版と Flash版と 2つ用意されていることがあります。
同じ AQUOS PHONE の紹介ページですが、ソーシャルメディアで共有されている数から予測すると、アクセス数は HTML ページのほうがはるかに高いと思います。また、購入・お問い合わせまでの導線も明確なので、コンバージョンにも違いがあると予測されます。製品についてもっと知りたいというニーズに応えるのであれば、自己アピールの要素が強いプロモーションサイトより、仕様や価格が明確に表記された製品ページのほうが適しています。
楽しむも有益
それでは派手な動きやインパクトのあるビジュアルをつかったプロモーションサイトが必要ないのかといえば、そうとは言い切れません。
多くの場合、製品ページはパソコンやスマートフォンから観覧されています。仕事中なのかもしれませんし、昼休みカフェでじっくり見ているのかもしれません。いずれにしても、ひとりで見ていると考えられます。こうした場合、いち早く情報を集めて検討したいでしょうし、別の製品と比較もしやすい HTML ベースのほうが便利です(テキストをコピーしてメモることも出来るのも利点のひとつ)。
しかし、Webサイトというのはひとりで見るものとは限りません。例えば、AQUOS PHONE について知りたいと友人に尋ねられたときに、2人で一緒に Webサイトを観覧することになるでしょう。そのときに、静的で文字情報が多い製品ページより、絵や動きがあるプロモーションサイトのほうが楽しみながら製品を知ることができるはずですし、会話も弾むかもしれません。
2人以上で一緒に見ている際も、プロモーションサイトが不適切な場合だってもちろんありますし、1人だから必要ないとも言い切れません。ここで重要なのは、利用者が必要としているコンテンツはアクセスしているときのコンテキストによって大きく変わるということです。コンテンツは利用者にとって有益であることが大前提ではあるものの、利用者にとっての有益は時にはタスクを達成させることになったり、ただ楽しむだけという場合もあります。
もちろん、様々なコンテキストを考慮して Webサイトをデザインすることは可能です。オールインワンのほうが管理も楽ですし、多彩な表現が可能になったので、フル Flash にしなければプロモーションサイトとして成り立たないわけでもありません。しかし、ターゲットにしているコンテキストに対して最大限の価値を提供する手段が別途プロモーションサイトを構築することであれば、分けて作るべきでしょう。
サイトへアクセスする意図とは
しかし、現状プロモーションサイトのあり方がコンテキストを考慮したものになっているのかというと、そうとは言切れない場合があります。利用者のことより、配信側(企業やクリエーターなど)の意向に傾いている部分が大きいと思います。それでは、コンテキストを重視してプロモーションサイトを再考するとどうなるでしょうか。
- パソコンへの対応は後回し
- 眺める状態になる場合が多いのであれば、眺める姿勢に適したデバイスを最優先してプロモーションサイトを構築しても良いと思います。タブレット、TV、電子書籍デバイスなど、パソコンよりプロモーションとして成り立つデバイスはたくさん出てきています
- 高度な操作を省く
- タップ(クリック)だけで操作ができる環境作り。どのデバイスでプロモーションサイトが見られるかどうか分からない今、ドラッグやマウスホイールなどをつかった独創性の高い操作は避けるべき。インタラクティブな要素を加える場合も、サイトの操作のためではなく、コンテンツに触れるための要素として使う
- 他プロモーションサイトとの連帯
- 簡易なリンク集だけでも良いので、他プロモーションサイトへすぐにアクセスできる導線が必要。現状、別ページに移動すると別ウィンドウ(タブ)で表示されるが、この仕様を排除するべき。別ウィンドウにすることで、モバイルデバイスや TV での操作が複雑になってしまうので、前後操作だけで様々なプロモーションが見れる仕組みのほうが適しています
利用者がどのような意図でコンテンツをどのように消費しているのかを理解することが、適したサイトを構築するための第一歩です。動きが派手でおもしろいけど、アクセス数が少ないプロモーションサイトでも、利用者がプロモーションサイトを訪れる文脈を探ることで、数は少なくても適確に響くサイトになると思います。
もちろん、こうした考え方はプロモーションサイトだけでなく、一般的な企業サイトにもいえること。自社サイトのコンテンツがどのように消費されているのかを探ることで、改善点が見えてくるでしょう。