Webのコンテンツ配信はマークアップから
異なるマークアップの意味
コンテンツを校正・編集・デザインするという意味合いが Web になると少し異なるのですが、この感覚が多くの方と共有されないまま 2012 年を迎えています。
従来の、つまり紙における校正・デザインは一種の独裁支配といえます。
紙によるコンテンツ配信は、発信する側が最適と考える見た目を、完全な形で読者に届けます。読者が扱い難いと思おうが関係ありません。紙におけるコンテンツ配信の質は、校正・編集そしてデザインにおいて作られた厳密な世界を届けれるかどうかにかかっています。
しかし Web は、配信者側による独裁支配ではありません。骨組みは設計されているものの、あとは読者が自由にコントロールできます。文字サイズが小さいと思えば、自由に大きさを調整できます。白色背景が目にキツいと思えば、色を反転させることもできます。とにかくじっくり読みたいと思えば、Instapaperのようなツールを使ってデザイン要素をすべて省いてコンテンツを消費することも出来ます。
従来の「支配する」校正・デザインの感覚をそのまま Web へ適応することは出来ません。もちろん、コントールをすることは出来ますが、発信者側がコントールすればするほど、コンテンツが届く利用者の数は減ります。Webデザインにある駆け引きとコダワリでも紹介しましたが、サイトデザイン全般だけでなく、コンテンツにもスタイリングと柔軟性の駆け引きがあります。
ひとりでも多くに、そしてひとつでも多くのデバイスにコンテンツを配信するにはマークアップは無視出来ない存在ですが、ここでも言葉の壁が存在します。
そもそもマークアップ(markup)とは、原稿用紙に印刷に関する指示の記号を書き加えることを意味しており、主に文章の各部分にどのようなスタイル、書体、サイズを適用するかの指示が書くことを指します。これは HTML というマークアップ言語で使うマークアップの意味合いとは大きく異なります。しかし、印刷デザインの感覚で HTML というマークアップ言語を捉えると、見た目を制御するために使われるものと考えても不思議ではないわけです。マークアップが印刷機になっているのは、こうした言葉のギャップがあるからかもしれません。
しかし、今後様々なデバイスを通して多くの方にむけてコンテンツを配信していくのであれば、今までのような見た目のコントールだけのマークアップは不要です。そして、より早く適確に配信するには、校正・編集している方自らマークアップをしていく必要性もあると思います。
見た目ではなく意味合い
WYSIWYGは、印刷をはじめとした従来の編集・校正感覚で見た目を調整しやすいものの、見た目に囚われてしまい、コンテンツの意味を見失いやすくなります。文字サイズを大きくしたり、太文字にするだけで、いかにもヘッダー文字のように見せることが出来ますが、実際は異なります。デバイスやソフトウェアによってヘッダーと認識できないので、操作に支障がでてきたり、読み難くなる可能性もでてきます。
Microsoft Wordを利用している方でも、見た目に囚われて、意味合いが理解しにくいコンテンツになっている場合があります。フォーマットを使わず文字サイズを変えている人、リストがあるけど「■」「●」といった記号を使う人、横線を挿入する場合も「_____」のような文字記号を代わりに使う人・・・こうした使い方をしている人は後を絶ちません。
媒体を限定し、そこでの見た目が良いのであれば、どういったマークアップでも気にすることはないでしょう。しかし、ひとつでも多くのデバイスにコンテンツを配信したい、ひとりでも多くの人に読んでもらいたい、未来に出てくるであろう未知のデバイスにも対応したい・・・という想いがあるならば、マークアップを無視するわけにはいきません。
校正・編集する人にマークアップを覚えるよう呼びかけるのは、無茶なように聞こえなくはないですが、不可能ではないと思います。
極めるのは大変ですが、HTML はプログラミングの知識がなくても書ける簡単な言語です。コンテンツに関わる部分に絞れば、すぐに習得できます。マークアップをすることで、よりコンテンツがどのように書かれているべきなのか、どう見られるのかを想像できるようになるはずです。
そもそも、校正や編集の仕事は見た目を整えることだけではありません。書かれている文章の意味を理解し、文章に命を吹き込む作業だと思います。そのひとつとして、スタイル、書体、サイズを調整するという作業があったと思いますが、Web におけるコンテンツ配信では、見た目のだけではなく、文章の意味付けをどうするかがより重要になってきます。文章に命を吹き込むという、校正・編集の仕事からマークアップはそれほどかけ離れてはないはずです。