私はよく「コンテンツがない。壊れている。」と主張していますが、人によっては「既に自分たちには素晴らしいコンテンツがある。アピールするための素材もたくさん用意されている。」と考える方もいると思います。しかし、それは利用者からの視点からすればコンテンツでも何でもないノイズということもあります。

昨年末から全国で開催しているマルチデバイスを見据えたコンテンツ設計講座で、企業は的外れなコンテンツを出していることを事例を挙げながら紹介しています。クオリティの高い写真、映像、文章が使われているものの、中身は利用者のことを優先していない自己中心なメッセージばかりということがあります。残念ながら企業 Web サイトの大半はそんなところが多かったりします。

上記は Break Up という、広告主と消費者の関係を人間関係に見立てて表現した 2007 年のビデオです。以下、簡単にやりとりを抜粋しておきますが、動きや表情を見るだけでも参考になることが多々あるので、ぜひご覧になってください。会話がない一方的な関係にウンザリする消費者と、ナルシストで思い込みの激しい広告主の関係をコミカルに描いています。

  • 消費者: 別れたい。全然話しかけてくれないじゃないの。
  • 広告主: あんな大きな広告をつかって愛を宣言したじゃないか。
  • 消費者: 愛していると言っているだけで、とてもそうは見えないわ。
  • 広告主: そんなことはない。代理店は絶賛していたよ。
  • 消費者: 私はもう変わったのに、あなたは何も変わっていない。
  • 広告主: そんなに腹を立てているのは、クーポンが欲しいからだな。
  • 消費者: 私のことなんて何も分かっていない。
  • 広告主: もちろん知っているよ。28〜34の女性で趣味は音楽と映画で・・・
  • 消費者: あきれた
Facebook Home美しい映像と音楽で素敵な内容にみえる Facebook Home のビデオですが、どんなときもオンラインの世界に没頭しているという奇妙な世界。自分たちの製品は素晴らしいという自己主張が見え隠れするものの、人の求めている価値なのかは疑問です。

2007年に公開された当時に比べると、ソーシャルメディアを活用したコミュニケーションが重視されている現在ですが、コミュニケーションの仕方は Break Up が公開されたときとあまり変わらないように見えます。これはオフラインの広告だけでなく、オンラインにも同様のことがいえます。今でも画面の大半が「自分たちは素晴らしい」という自画自賛のコンテンツによって占められています。利用者が求めている情報は数画面先に隠されていたり、そもそも Web サイトにないということもあります。

ビデオに登場する女性キャラクターと同様、日本の消費者もそんな自己主張が激しい割には中身のない企業のコンテンツにウンザリしています。今年のはじめに日本のビジネスは信用を失いつつあるという記事を公開しましたが、日本人は他の国に比べて疑い深く、企業からの情報を鵜呑みにしない傾向がでてきました。こうした中、今までどおりに「こんな素晴らしい自分たちを見てくれ」「こんなに面白くて楽しいのはイイヨネ」といった中身のないメッセージを送り続けても良いのでしょうか。

良いコンテンツは様々な要素によって構成されていますが、そのなかに人間中心であることが必須であると言われています。今は広告、マーケティング、Web で本当に顧客のことを考えているのかを証明しなければならない時期に来たのだと思います。美しい映像で、視聴者の心を揺り動かすことできるかもしれません。しかし、それでは企業がそもそも提供しなければならない価値を顧客に提供しているとは言えないと思います。

パッと見が良いイメージだけを配信していればロイアリティや印象が良くなるほど、顧客は単純ではないということ。コンテンツはあって当たり前、良いコンテンツを作っているから大丈夫という部分を一度疑い、見直してみると改善点は幾つか見つかるはずです。